続短編小説 2 (先月の続き)
三車火宅
中道 進
文雄は付き合いで競艇場に行った。平和島競艇場は観客でいっぱいだった。レースになるとみんなは真剣な目で見つめていた。ゴールになると歓喜の声や怒り虚しさあきらめの声などが響いた。文雄は見ているうち自も夢中になった。レースが終了の時には3万円近くの黒字になった。三好とともに帰りにはキャバレーにいき、その後はいつも行くスナックへ行った。
ママさん あら文さん機嫌が良いのね。
文雄 競艇は面白い。儲けた。
ママさん 儲けたの。すごいわ。ところで、長井が文さんを探して、そこに座っていますわよ。
長井 おーまっていたよ。こっへ。文さん。そろそろ貸した金を
返していただきたいのですが。
文雄 来月返すよ。
長井 頼みますよ。守ってくださいよ。
三好 文さん、今の人だれ?
文雄 友人ですよ
三好 ところで今度は競輪やりましょうよ。儲けましょう。
文雄 競輪もやるんですか。
三好 競馬もあります
文雄 競馬もやるんですか
三好 そうですよ それぞれ面白味があります。ところで三車火宅の譬えを知っていますか。
文雄 長者と子供の譬えですね。 たしか、子供が遊びに夢中になり家が火事で危機なのを気が付かない。そこで長者が、三つの車を与えおびき出した譬えですね。
三好 そうです。まさしくあなたは酒に溺れ体はよわっている、家が火事のように、文さんは危機であります。
文雄 そうか、君は、競輪、競艇、競馬の三つを三車にたとえて、俺を大百牛車に乗せたいのだね。
三好 大百牛車は譬えで真実の教えに乗せたいのであります。
文雄 たしか、大百牛車は宝がいっぱい積んであるはずだが。
三好 ありますとも車がダイヤですからね
文雄 面白そうな車だな
三好 ははははは
文雄 ははははは 終了