この時期になると、ワンコと散歩の途中に、ふと立ち止まり、吸い寄せられてしまう。
クチナシの花の香りは、そんな独特の、甘い魅力に溢れています。
例えるなら、張りたてのギターの弦で、倍音のメジャー7thコードを、ジャリーンと弾き鳴らしたときのようなうっとりとする感じ。
その昔、黒人ジャズ歌手のビリー・ホリデイはしばしば、クチナシの花を髪に飾って舞台に立ったそうです。さぞかし、黒い髪に白い花が似合ったことでしょう。
残念なことに、この花の命は短い。すぐに黄色に変色し始め、オフホワイトの純白に傷がついてしまう。匂いは、かなり間、続くのですが。
夙川沿いの公園の外側や、芦屋の茶屋の町筋の桜の根元でも、たくさんの花が見られます。
でも、よく観察すると小さな蟻が、蜜を狙ってたくさん群がっていたりします。
美しいものには、そんな宿命がつきまとう。花言葉は「幸せを運ぶ 清潔 私は幸せ 胸に秘めた愛」。
左側の花の花びらに、黒い点があるのが分かりますか。小さなアリです。
10月から11月にかけて、実をつけます。果実は山梔子(さんしし)と呼ばれて、日本薬局方にも収録された生薬の一つ。
煎じて黄疸などに用いられ、黄連解毒湯、竜胆瀉肝湯、温清飲、五淋散などの漢方方剤に使われるのでだそうです。
街で見かけられましたら、そっと近づいてみてください。ジャスミンのような香りにつつまれるはずですから。
というわけで、佐野元春「ジャスミンガール」をどうぞ。