監督 エリア・カザン
私の評価 ★★★☆☆ 3.0点
真面目でまっすぐな兄アーロンとは対照的に不安定でふらふらする弟キャルをジェームス・ディーンが演じている。二人は双子。厳格な父親と家族を捨てた母親、兄の恋人が物語を構成している。キャルは考えこんで静かかと思えば、突拍子もなく走ったり動き出したり見ていてひやひやする。猫背が憂いを帯びてかっこいいのはジェームス・ディーンだからこそ、物陰から覗く姿が変な人に見えないのもジェームス・ディーンだからこそ、圧倒的な存在感。繊細な役に魅せられた。
人はなぜ「愛されたい」と苦しむのだろうか。
キャルは父から愛されていないと思う孤独な青年。親子関係がねじくれて、父から愛されたいという気持ちがものすごく強い。体は大きいのに父の前では小さい子供のようだ。人は親に愛されたいとどうして思い続けるのだろう。小さい子供なら生死にかかわるけど、大人になっても愛されなかった過去に苦しむ。いい加減解放されたほうが幸せになれるのに。
父は聖人ではない。
人助けだと言って父がはじめた冷凍レタスの輸送はきれいごとで、本心は金儲けだと考えたから損失を取り返そうキャルは奮闘したのだと思う。
周りから善人とされる父でもあっても他人の息子を戦地に送るのは仕方ないとしている。兄弟は徴兵されないのに。つまり本物の聖人ではない。その父を兄は絶対に信じていて清らか、父からの信頼も厚い。キャルは父の本質を見抜いているかのように自由に行動する。それを父は気に入らない。兄弟二人とも愛しているのだけど、扱いが違うからおかしなことになる。母親に似ているキャルを叱りたくなる気持ちは分かるが、親に愛されてないと思わせてしまったのだろう。
キャルの思いのつまった父への誕生日プレゼントは拒絶され、追い打ちをかけるように兄から冷たい言葉を浴びせられる。恋人を取られそうな兄の焦りは当然なのだが間が悪い。キャルは兄に怒りをぶつける。兄を守るために隠してきたことをぶちまけてしまう。
ずっと「弟がかわいそう」だったけけど、キャルが兄へ反撃したとき、一変「兄が気の毒」な状況になる。
エデンの園を追放され、東(ノド)に。
「カインは立ってアベルを殺し、カインは去ってエデンの東 ノドの地に住めり」(神は弟アベルからの供物は受け取ったのに、兄のカインからのものは受け取らなかった。カインは嫉妬でアベルを殺してしまい、カインをエデンの東に追放する)
弟は兄を壊す。死んだと思っていた母に会わされ、理想と違う現実を突きつけられた兄はヤケになって志願兵になる。振り幅が広すぎて怖いったらない。自ら窓ガラスに頭を打ち付けて割り 頭から血を流しながら父を笑う。心が壊れた兄。父は正気を失った息子を見て、ショックで倒れて寝たきりとなり死の淵へ。母も無事ではないと想像できる。
ハッピーエンド?
ラストの感動シーンで、性悪の看護師がうろちょろして目障りだなと思っていたら、重要な役回りだった。父親は兄の元恋人にわかりやすく愛情を示すよううながされ、病床からキャルに頼み事をする。「あの看護師を辞めさせてくれ」父にようやく頼られ、親子和解となる。キャルが父の世話をするのだ。主人公は求めるものを手に入れたのに、見ていてハッピーな気分になれなかった。
看護師がひどかった。普通の状況では息子に頼む気になれなったのだろうか。弱い立場になってはじめて分かることがあるという戒めか。何かしらの罰のようだ。終盤はみな罰を受けているように見える。
親子の愛情、兄弟の確執、第一次世界大戦がはじまり、平和や差別問題もある。善と悪が見え隠れし、最後は人はみな罪人なんだなあと思えてきて、暗い気持ちになった。悪い親ってわけでもないし、愛情がなかったわけではない。いい父親いい母親でなかっただけなのに。母親が自由になりたかったのだってわかる。恋人の行動は理解できなかったけど、弟の方がよくなったのだからしかたない。
気になるのは兄。まともだと思っていた兄の方がカウンセリングが必要だったんだなあ。