(ネタバレあり)
モノクロで描かれた世界に赤い服の女の子が登場します。
文字はありません。女の子は道端の花を見つけては摘んでいきます。その花を誰かにあげるたびにモノクロの世界が少しずつ色づいていきます。世界が生き生きとしてきます。
女の子はそっとみんなに花を配り、ありがとうとお礼も言われず、気づかれもしません。
私も子どもの頃、野花を摘んでそっとだれかにあげたり、供えたりしていました。自分ひとりだけの世界があり、とても大切にしていました。すっかり忘れていた子どもの私に再会したような気持ちになりました。
死んだ鳥を見つけ、花を手向けます。
道で息絶えている鳥を女の子は見過ごせなかったのです。ベンチで寝ている人、散歩中の犬、一緒にいたお父さんが通り過ごすものを女の子は花で飾っていきます。お母さん、兄弟そして自分にも花を飾ります。
鳥の死からはじまり女の子自身に至る経緯に世界の繋がりを感じました。
現代社会では忙しい人が多く、さらにスマホを見ている人が増えたので道端の草花に気付く人はあまりいないでしょう。人も見ていないかもしれません。私もそうなりがちです。それでも日々の生活にに追われる中、時々空を見上げれば世界に色が付きました。私はまだ大丈夫だとほっとします。
父さんお母さんが気づいてくれますように。たとえ気づいてもらえなくても大丈夫です。
女の子には色づいた世界が見えているから。
原題は『SidewalkFlowes』花を中心に絵本を読めば、女の子目線の『おはなをあげる』とは少し違った世界も見えてきます。