あおこのぶろぐ

オペラ、テレビ、日常など、気が向いたときに書いていきます!

「代役」で思い出した1981年二期会「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

2016-03-04 22:14:11 | 日記
先日の「トロヴァトーレ」で、主役のマンリーコをカヴァーだった城宏憲さんが演じられたのを観て、思い出したのは、1981年の二期会公演「ニュルンベルクのマイスタージンガー」である。

まだ私も10代。オペラにはまって間もなく、お小遣いで観に行っていた頃の話だ。

確かNHKの朝のニュース番組の中で、「大作に挑む」という感じで紹介され、「行かなきゃ」という気になり、観に行ったのだった。

主役のハンス・ザックスは、当時ドイツから帰国したばかりの木村俊光さんと、ジャングル大帝の主題歌を歌われ、役者としても活躍された平野忠彦さんのダブルキャスト。計4公演だったが、そのうち平野さんの2公演と木村さんの1公演の計3公演を、スタンドインだった松本進さんが代役として演じたのだ。

先日の「トロヴァトーレ」では、マンリーコだけでなく、予め告知されていたもののレオノーラ役も当初のキャストから変わっていたこともあり、開演前に理事長が説明に出ていらした。
「マイスタージンガー」の時も確か当時の理事長の中山悌一さんだったと思うが、開演前に挨拶に出て来られ、松本さんのことを「朝汐のような風貌ですが……」と説明されていた記憶がある。

当時、公演評で「怪我の功名」と書かれたものもあったが、公演は大成功だった。
ザックスという大役、例えば本役の人も代役の人も、同じ70点の出来だったとする。その場合本役ならちょっと厳しい評価になるかもしれないが、代役ならブラボー、となるだろう。
長い「マイスタージンガー」の中でも出番の多い主役・ザックス役を土日、翌土と3回歌いきったのだから、松本さんはまさしくブラボーなデビューだった。

ちなみに私が観たのは2日目の日曜日(エヴァ役は鮫島有美子さんだった)。翌週の日曜日、つまり千秋楽は木村俊光さんが復帰されたらしい。

私はそれがワーグナー作品初体験。当時は字幕もなかったので、あらすじを読むくらいしか予習出来なかった。ワーグナー作品の中でも特に長い上演時間の作品で、歌詞の詳細もわからなかったものの、楽しむことが出来た。

指揮はドイツで長く活躍されていた若杉弘さんだったが、ワーグナー歌いと言えるような人は殆どいなかった。
その後ワーグナーにはまり、様々な演奏を観聴きしてきた私。今聴いたら、恐らく不満に感じる部分もあるのだろうと思う。

だが、あの公演、大作に挑む日本人歌手(ジンガー)たちのエネルギーのようなものが、確かに伝わってきた。
当時まだワーグナー作品の上演も少なかった時代で、大作上演を見届けようと集まった観客が、大役を歌う新人歌手を見守ろうという空気もあったと思う。特にラストにはとても感動したのを覚えている。
もちろんワーグナーの音楽自体が素晴らしいこともあるが、その原体験があるからか、「マイスタージンガー」の終幕には今も概ね感動するのである。