あおこのぶろぐ

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代役続きも高レベル 新国立劇場「ワルキューレ」

2021-03-20 10:13:48 | 日記
びわ湖ローエングリンから10日の3月17日、新国立劇場の「ワルキューレ」を観に行きました。

当初の予定から指揮者&主要キャストがかなり入れ替わりました。

ジークムントだけなかなか決まりませんでしたが、1幕を村上敏明さん、2幕を、もともとカヴァーだった秋谷直之さんが歌うことに。
私は、最近歌った経験のある望月哲也さん(びわ湖)、片寄純也さん(愛知)を予想しましたが外れました。
二人で一役……、小学校の学芸会で、ヒロインを前半と後半で別の子が演じたのを思い出しました。
短い劇の中、意味なく暗転させて入れ替わったんだよなあ。

第一幕、途中で村上さん苦しそうになったので、ジークムントがトネリコの後ろに隠れた時、出て来たら入れ替わってるんじゃないかと思いましたが、そんなことはありませんでした(^_^;)

村上さんと小林厚子さんという、イタリアオペラを得意とされるお二人でしたが、先月のタンホイザー2日目に感じた「イタリアオペラ?感」はなかったです。お二人とも、新境地を開いた、という感じかもしれませんね。
特に小林さん、演技姿も良く、これから活動の場を広げそうですね。
村上さんは途中かなりヒヤヒヤしましたが、最初と「冬の嵐は過ぎ去り」のところは良かったです。

第2幕のジークムント・秋谷さん。なるほど声質はワーグナーに向いている感じ。舞台姿もいいし、今後ヘルデンテノールとして経験を重ね、活躍されることを期待します!

芝居的に見て、多少難があっても一人で演じることが理想だと思うのですが、お二人の歌を聴いて、大野さんがこういう形での起用を決断したのは、わかるような気はしました。


2016年のこのプロダクションで印象的だったのは、2日目最初スプーンで食事していたフンディング(アルベルト・ペーゼンドルファー)が、楽日には、箸で食事していたことです。
箸使えるようになったよアピール?
今回のフンディング(長谷川顯さん)は普通にスプーンで食事していました。

ゲッツ・フリードリヒのこの演出は、堅いというか、おそらく不満の声があまり出ないだろうなと思うものです。
傾斜がある舞台を駆け上がる歌い手さんは大変だろうなと思いましたが。
びわ湖「ローエングリン」は、ひざまずき無し、手つなぎなし(基本的に)等々の「縛りあり」でしたが、こちらは基本的に本来通り。
抱きつきあり、舞台にひれ伏しもありでした。

ワルキューレの騎行の場面も悪くはないのですが、私はやっぱりトーキョー・リングの“ワルハラ救命病棟”が好きだったなあ。
音楽的にも、ワクワク感は今一つでした。


歌手で素晴らしかったのは、藤村実穂子さん!
フリッカは当たり役、はまり役だと思うのですが、新国立劇場では19年振りなんですね!

長谷川さんのフンディングも19年振り。懐かしかったです。

そして、ヴォータンのミヒャエル・クップファー=ラデツキーさん!
1月の「ワーグナー特別演奏会」のために、調整して入国されたそうですが。
よくぞ日本に来て下さり、居続けて下さり、そしてヴォータンを引き受けて下さいました!
“あの”フィデリオのピツァロ以来の新国立劇場。

ピツァロが主役? カタリーナ・ワーグナー演出 新国立劇場「フィデリオ」
https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/a60a535af9c8cf93121faefc3e7db9de


歌唱では、もっと圧倒感を出すヴォータンもいるでしょうが、ミヒャエル氏のアクティブで繊細な演技に釘付け。
わがままな神と若い娘を持つパパの両面を見せ、怒り、葛藤をよく表していました。
「ヴォータンの告別」で、あれほど悲しそうな人、初めて見た。
人間的で(神なんだけど)魅力的なヴォータンでした。

そしてブリュンヒルデは、イケーダ・カオリンならぬ池田香織さん。香織さんがいなかったら、それこそこの公演は成り立たなかったでしょう。この公演をしっかり締めて下さいました。
この3ヶ月で、デリラ、ヴェーヌス、ブリュンヒルデと歌うなんて。すごい!
表彰モノ、日本の至宝ですよ。


指揮は大野和士芸術監督、オーケストラは東京交響楽団。
今回は密を避けるということで、アッバス版での演奏でしたが、それほど違和感はありませんでした(特に1、2幕)。
ただ、一部のパートが音を外すところが多く、陶酔しきれなかったのが残念でした。

けれど、入国制限などで厳しい状況の中で、レベルの高いいいものを観せていただいたと思います。

これだけ短期間でローエングリンとワルキューレを観ると、二つの作品の共通点をすごく感じます。
例えば第2幕に夫婦(バリトンとメゾ)の激しいやり取りがあるとか。
(オルトルートが「ヴォータン! 」と叫ぶしところもあるし)
音楽的にも似たところがあります。
苦しむ女性をヒーローが助けに来るところとも一緒。

それで、思いました。
ローエングリンも、エルザに名前を問われたら、「あなたが名付けて下さい」って言えば良かったんだわ、なあんて。


先月から「タンホイザー」「ローエングリン」「ワルキューレ」と観られる幸せ。
春祭の「パルジファル」は中止になってしまったけど、かなりすごいワーグナー月間でした。

総合的に、満足度・充実感が高かったのは、やはりびわ湖「ローエングリン」でしたね。




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