瀬尾まいこの新作。★★★☆☆
中学の教室に紙飛行機が飛びはじめる。トイレでタバコの吸殻が発見される。窓ガラスが割られる。それは崩壊の始まりの合図だ。
不良たちが次に狙ったのは、人。みちる、だった。
みちるは、多数の生徒に好かれていた。しかし、友人・優子への嫌がらせを見過ごすことができず、クラスのみんなの前で公言したのだ。「この学校ってちょっとやばいって思うんです。うちらのクラスだけでも、ちゃんとしたらいいんじゃないかな」と。
そして翌日、みちるの机と椅子が廊下に放り出され、いじめは始まった。ゴミや消しゴムをみちるにぶつける、教科書や筆箱をそこらじゅうに放り投げる。誰もみちるに話しかけず、優子が話しかけようとすると邪魔が入った。不良がやることには加担しない生徒も、いじめには参加する。いじめは単純に楽しいし、内申にも響かない。
苦しむみちるを見ることに耐えられず、救うこともできない優子は、教室にいることができなくなる。
物語は、みちると優子、二人の視点で描かれる。
正義感が強く、許せないことは正さないと気がすまないみちる。
いじめが続いても、まじめに授業をうけ、お弁当を一人で食べ、掃除当番も一人でこなしている。
小学生のときにいじめを受け、転校した経験のある優子。
誰にも干渉されることのない相談室にいることに、不安を感じるようになる。
そんな二人が中学を卒業するのは、一月後に迫っていた~
~読んでいる間中、苦しい思いでいっぱいでした。
読み終わってからも、苦しくて、苦しくて。このまま感想を書かないでいよう。
そんなふうに思ってました。
直木賞を受賞した村山由佳の「星々の舟」にも、いじめの場面がありました。
その時も納得できず、感想を書くことができませんでした。
いじめは、あってはならないこと。
ずっと、そう思っているのです。
大勢で一人を攻撃する。
そのことが許せないのです。
たとえ、物語の中であっても。
たぶん、私はみちるに近い感じ方、考え方をしています。
嫌がらせを受けている友人がいたら、見過ごすことはできない。
本を読みながら、かつて、中学生だった自分とみちるがオーバーラップしていたから、苦しかったのだと思います。
この物語は、不思議な終わり方をします。
いじめは解決しないのに、二人が前を向いて歩いていこうとしているのです。
瀬尾まいこさんが、何を伝えたかったのか~私には、響いてこなかった。
問題提起なのかな?
瀬尾さんも、村山さんも、好きな作家さんです。
いじめを描くのなら、納得できるように描いてほしかった。
いじめてる側が描かれていないので、もやもやしたきもちが残ったままです。
2006.10.8追記:★の数をひとつ追加して、みっつにしました。
この作品の完成度は、高いと思うので。