長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

井上靖「春の海図」

2022-08-08 15:53:00 | 

再読のための覚え書き


「春の海図」

井上靖(1907-1991


不実な夫はロンドンに半年間の外遊に出かけ、妻の茜は、一人になれた解放感を感じていた。


その後、茜は新聞で「木元貿易社長失踪」の記事を目にする。木元は、茜がかつて想いを寄せた画学生だった。


木元の行方不明が世間を騒がせる中、茜は、木元が好きだった五浦海岸に見当をつけて訪れるのだが……


「夫がいないと、自分はこんなにおとなしく、こんなに素直ではないか!ーーそう思うと、夫への小さい怒りがふと胸を走った。」


・・・・・・・・・・・・


不本意な結婚生活から逃れたいヒロインの茜。そこに、姪の光子と別居中の登山家の関係が絡み合う。男女の不安定な愛情が交錯するものも、そこはやはり井上靖で、精神性が昇華され、清潔感が醸し出されてゆく。大好きな作家。



2022.8.8読了


春の海図

角川文庫

昭和33930日初版発行

昭和45330日改版初版


# #読書 #文学 #文庫 #井上靖 #春の海図






井上靖「霧の道」

2022-08-07 15:09:00 | 

再読のための覚え書き


「霧の道」

井上靖(1907-1991


《霧の道》

生まれつき目の周りに痣のある美彌子は、物心つく頃から、他人との容姿の違いに負い目を感じていた。


友人宅で知り合った画学生の小宮高介からの愛を勝ち取るも、美彌子はいつまでも自分の負い目に縛られ続ける。


作者井上靖の、人物の繊細な心の動きを丁寧に掬い取る筆の力が凄い。


4編を収録。



2022.8.7読了


霧の道

角川文庫

昭和32330日初版発行

昭和363208

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #井上靖 #霧の道






井上靖「愛」

2022-08-02 00:00:00 | 

再読のための覚え書き


「愛」

井上靖(1907-1991


《結婚記念日》

唐木春吉は、二年前に亡くした妻の加奈子との五年ばかりの結婚生活を振り返る。


妻のことを、美しいと思ったこともなく、愛していたとも思われず、お喋りで負けず嫌いな性格を鬱陶しく思っていた。


また、周囲の人たちは、加奈子のことを吝嗇と決めつけ、春吉に同情しているほどだった。


春吉はふと、結婚記念日に二人で箱根に出かけたことを思い出す。一泊二日の旅行で、精一杯の贅沢をしようと決めた旅だったが……


「結婚記念日」「石庭」「死と恋と波と」の3編を収録。



2022.8.1読了


角川文庫

昭和34430日初版発行

昭和45930日改版


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