長島 潤 Sing a mindscape

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永井荷風「濹東綺譚」

2021-06-30 10:42:00 | 
再読のための覚え書き


濹東綺譚

永井荷風(1879-1959


濹東綺譚、すなわち隅田川東岸の物語ということ。


作家の「わたくし」は、突然の雨に傘を広げると、髪結の店から出てきた一人の女が、その傘の下に、真っ白な首を突っ込んだ。それが、お雪との初めての出会いだった。


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隅田川周辺の情緒と、カフェーの女との恋愛を描いた美しい小説。荷風の文章は心地いいな。まるで、穏やかな音楽を聴いているかのようだ。



2021.6.30読了


濹東綺譚

岩波文庫

昭和221225日初版発行

昭和4741714


# #読書 #文学 #文庫 #永井荷風 #濹東綺譚






永井荷風「花火・雨瀟瀟」

2021-06-27 18:53:00 | 

再読のための覚え書き


花火・雨瀟瀟

永井荷風(1879-1959


《雨瀟瀟》

手紙や日記や漢詩などを織り込んだ、随筆のような小説。


「此れから先わたしの身にはもうさして面白いこともない代りまたさして悲しい事も起るまい。秋の日のどんよりと曇つて風もなく雨にもならず暮れて行くやうにわたしの一生は終つて行くのであらう」


《花火》

聞こえるのは、第一次世界大戦講和記念日の花火の音。社会の擬似西洋化を批判した随筆。


《二人妻》

二人の人妻、千代子と玉子。彼女たちの夫はそれぞれ、外に愛人がいる。夫の愛情を一身に受けたい女たちと、妻に欠けたものを他に求める男たちの心理劇。


《夜の車》

日比谷で車を拾うが、言いつけた行き先とは違う方向に車は進む。運転手は小声で、「お遊びになるならご紹介します。実は、若い後家さんで、美人で……」と言い、車は住宅街に入ってゆく。


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最近、外国文学というか翻訳ものばかり続けて読んだので、無性に日本文学が読みたくなった。そして手にしたのが、なぜか永井荷風。


旧仮名遣いで書かれたものは、やはり旧仮名遣いのままを読む方が、その字面のおもしろ味を味わえる。


特に《夜の車》は、江戸時代の洒落本のような書き方で、その古風な筆致がおもしろかった。



2021.6.27読了


花火・雨瀟瀟

岩波文庫

195665日初版発行

198621716

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #永井荷風 #花火・雨瀟瀟









アントン・チェーホフ「三人姉妹」

2021-06-25 09:17:00 | 

再読のための覚え書き


三人姉妹

アントン・チェーホフ(1860-1904

湯浅芳子訳


亡くなった軍人の娘の三人姉妹、オーリガ、マーシャ、イリーナは、田舎の連帯駐屯地での生活に飽き飽きし、幼少時代を過ごしたモスクワに再び戻ることを夢見る。しかし、彼女たちの仕事、家庭、複雑な人間関係は、その夢を阻んでゆく。


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戯曲は、戯曲。昨日読んだチェーホフの小説「六号病室」がおもしろかっただけに、ト書きと会話だけではなく、チェーホフの地の文を読みたくなってしまうな。



2021.6.24読了


三人姉妹

岩波文庫

1950225日初版発行

198731633


# #読書 #文学 #文庫 #チェーホフ #三人姉妹






アントン・チェーホフ「退屈な話・六号病室」

2021-06-24 09:01:00 | 

再読のための覚え書き


退屈な話・六号病室

アントン・チェーホフ(1860-1904

湯浅芳子訳



「退屈な話」

学者として成功と名声を勝ち得たニコライ・ステパノヴィチ。しかし、死を目前にして、これまでの人生が空虚なものに思われてくる……


「六号病室」

町立病院の六号病室には、精神病患者たちが収容されている。病院長のアンドレイ・エフィームイチは、病室の患者イヴァン・ドミートリチとの知的な会話にのめり込んでゆくが、周囲はそんな彼らを奇異の目で見つめ、病院長への不信が高まるのだった……


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「六号病室」で、病院長と患者の間で語られるのは、公正と自由。「強者の無関心」の上に成り立つ病院長の哲学が崩壊するのとともに、世間からも抹殺されてゆく姿が、陰惨で恐ろしい。



2021.6.23読了


退屈な話・六号病室

岩波文庫

昭和38816日初版発行

昭和4511107


# #読書 #文学 #文庫 #チェーホフ #退屈な話・六号病室






アントン・チェーホフ「可愛い女・犬を連れた奥さん」

2021-06-20 09:14:00 | 

再読のための覚え書き


可愛い女・犬を連れた奥さん

アントン・チェーホフ(1860-1904

神西清訳


「犬を連れた奥さん」

保養地ヤルタで休暇を過ごすグーロフは、アンナ(犬を連れた奥さん)と出会い、関係ができる。


やがて二人はそれぞれの家庭に帰るが、グーロフがアンナの住む土地を訪れた後、二人の愛は再燃する。


「やっと今になって、頭が白くなりはじめた今になって彼は、ちゃんとした本当の恋をしたのである。・・・なんだって彼に定まった妻があり、彼女に定まった良人があるのやら、いっこうに腑に落ちないのだった。・・・この二人の恋が彼らをともに生まれ変らせてしまったように感じるのだった」


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道ならぬ恋の苦悩。けれど、読後感は明るい。これがチェーホフのリアリズムでもあるのだと思う。



2021.6.19読了


可愛い女・犬を連れた奥さん

岩波文庫

昭和151011日初版発行

昭和4412020


# #読書 #文学 #文庫 #チェーホフ #可愛い女・犬を連れた奥さん