長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

大佛次郎「旅路」

2021-12-30 10:27:00 | 

再読のための覚え書き


旅路

大佛次郎(1897-1973 


父の「女中の子」であることに引け目を感じて生きる岡本妙子は、叔父の岡本素六が暮らす鎌倉を訪れる。


しかしその頃、岡本素六は、一人息子を戦地で亡くして悲嘆に暮れ、新潟の海で船から身を投げたのだった。


妙子と、戦後派青年の良介。助かった素六と、そこに居合わせた大学教授の瀬木。妙子に心を寄せる、瀬木の教え子の捨吉。


それぞれの人生は、旅路の如く道連れとして交差する。


「恋愛をしたら、第一に、限なく損をする覚悟が欲しいやな。これァ当世と反対だろうがね。今のは男も女も、とくをする気で、ひとに惚れやがる。スリかコソ泥の根性が、いつの間にか、天下にはびこったものだ。惚れといて、とくをしようとしてはいけないね。・・・・・・ひとを想った限りは自分は損をするのだ。甘んじて、犠牲になるつもりでいいのだ」



2021.12.29読了


旅路

新潮文庫

昭和30630日初版発行

昭和4472024



# #読書 #文学 #文庫 #大佛次郎 #旅路






大佛次郎「宗方姉妹」

2021-12-18 09:49:00 | 

再読のための覚え書き


宗方姉妹

大佛次郎(1897-1973 


臆病で古風な姉の節子。物怖じせず積極的な妹の満里子。戦後、満州を引き上げ、それぞれの生き方で前進しようとする中、姉妹の父の忠親には死期が迫っていた。


戦中戦後における強者と弱者の有り様が描かれ、随所で語られる人生哲学が心地良い。


「私も、これで今年の紅葉を見た。多分、丈夫な君などよりは心に沁みて美しいと見たろうよ。死ぬと言うことは人が想像するほど、可怖いものでも暗いものでもない。死ぬまでのいのちを粗末にする方が、ずっと可怖い。」



2021.12.17読了


宗方姉妹

新潮文庫

昭和29325日初版発行

昭和4021020

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #大佛次郎 #宗方姉妹






大佛次郎「帰郷」

2021-12-13 10:42:00 | 

再読のための覚え書き


帰郷

大佛次郎(1897-1973 


元海軍将校の守屋恭吾は、仲間との公金横領の罪を一人で被り、外国で逃走。妻子に行方も告げず、欧州各地を独りで放浪する。


十数年を経て、敗戦後の日本に帰国した恭吾が見たものは、変わり果てた日本の姿だった。


「軍の圧迫があったから戦争に協力したと今になってから言うのは、そう言えばなるほどそれに違いないが、人間として卑怯者だ。ただ、動いたのだ。気狂い染みた強い風に吹かれて動いたのだ。悲しい哉、動くように出来ていたともっと自分で気がついたら。ところで相も変わらず群動だけとはね。いつまでも根が地面に降りない。」


・・・・・・・・・・・・


恭吾以外の登場人物の一人一人を、敗戦後の日本の様々な姿の象徴として置き、恭吾の目を通して、著者の憤りを静かに表出している。



2021.12.12読了


帰郷

新潮文庫

昭和271030日初版発行

昭和4011526

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #大佛次郎 #帰郷






大佛次郎「雪崩」

2021-12-08 10:52:00 | 

再読のための覚え書き


雪崩

大佛次郎(1897-1973


戦争に突入する直前の東京。上流階級の家庭に育った日下五郎は、恋愛関係にあった蕗子と結婚するが、幼馴染の彌生に未練を残していた。


五郎の父は、大人気ない息子を叱り諭すものの、五郎は反発。自暴自棄になった五郎の計画に、従順な蕗子は巻き込まれていくのだった。



2021.12.7読了


雪崩

角川文庫

昭和281215日初版発行

昭和309205

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #大佛次郎 #雪崩






森鴎外「雁」

2021-12-03 09:51:00 | 

再読のための覚え書き


森鴎外(1862-1922


止むを得ず高利貸しの妾となって暮らしている、うら若きお玉は、時折り家の前を通りかかる医学生の岡田に、淡い思慕を寄せる。


偶然の悪戯に翻弄される人々の出会いとすれ違い。淡く切ない人生の断片。



2021.12.2読了


岩波文庫

昭和11229日初版発行

昭和46112035


# #読書 #文学 #文庫 #森鴎外 #