長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

シュトルム「みずうみ」

2023-01-31 23:41:00 | 

再読のための覚え書き


みずうみ

テオドール・シュトルム(1817-1888

関泰祐訳


表題作の「みずうみ」を学生時代に読んだときは新潮文庫だったので、今回の岩波文庫とは併録の短編作品が違う。


で、再読の「みずうみ」よりも心を捉えたのは「マルテと彼女の時計」。静けさの中の、あたたかさと切なさ。


《マルテと彼女の時計》

未婚の老女マルテは、空いた部屋の間貸しして暮らしていた。


マルテの部屋の古い時計は、孤独な彼女にとって友人でもあった。


時計が時を刻む音を聞きながら、マルテは思い出の中を生きる。


「だが、時計にも時計自身の意志があった。古くなってしまっていて、もう新時代のことなど大して気にかけなかった。だから、十二時を打つはずのところをよく六時を打ったりした。」


表題作の他、「マルテと彼女の時計」「広間にて」「林檎の熟する時」「遅咲きの薔薇」を併録。



2023.1.31読了


みずうみ

岩波文庫

1953225日初版発行

198111030


# #読書 #文学 #文庫 #シュトルム #みずうみ






近松秋江「黒髪」

2023-01-30 02:01:00 | 

再読のための覚え書き


黒髪

近松秋江(1876-1944


東京で暮らす「私」は、惚れた京都の遊女を廓から身請けするために、お金を送り続けた。


遊女との手紙のやり取りは続くものの、一向に落籍の気配がない。


堪りかねて京都へ来てはみたものの、遊女の言葉は要領を得ず、そのうちに姿を消してしまう……


「黒髪」「狂乱」「霜凍る宵」からなる黒髪三部作。遊女に対する近松秋江自身の妄執を描いた情痴文学。



2023.1.29読了


黒髪

岩波文庫

195235日初版発行

1985458

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #近松秋江 #黒髪






富田常雄「緑の風」

2023-01-28 19:26:00 | 

再読のための覚え書き


緑の風

富田常雄(1904-1967


佐々病院に勤める外科医の高木啓子は、佐々病院長の寵愛を受けて研鑽を積んでいた。


27歳になるまで医学一辺倒だった啓子にも、実業家の瀬戸健夫との出会いが訪れた。


妹や弟のトラブル、病院内の勢力争いなどが啓子を煩わせるものの、持ち前の切り替えの良さと冷静さで対峙する。


瀬戸との将来の見通しも順風満帆と思われたが……



2023.1.28読了


緑の風

春陽文庫

昭和26620日初版発行

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #富田常雄 #緑の風






吉屋信子「幻なりき」

2023-01-26 00:14:00 | 

再読のための覚え書き


幻なりき

吉屋信子(1896-1973


比奈は、両親に勧められるままに結婚をしたが、姑の厳しさに憔悴し、ある日姑を傷つけ、刑務所で服役することになる。


しかし、比奈は孕っていて、刑務所で出産。生まれた娘を泣く泣く手放さなければならなかった。


やがて比奈はフランス領インドシナに渡り、中国人実業家の楊氏と再婚。日本人であることを捨て、楊芳蘭夫人として生きることを選ぶ。


終戦後、夫を亡くした比奈は、中国人女性として再び日本の土を踏む。生き別れた娘会いたさに……



2023.1.25読了


幻なりき

春陽文庫

昭和29430日初版発行

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #吉屋信子 #幻なりき






田村泰次郎「地獄から来た女」

2023-01-20 00:48:00 | 

再読のための覚え書き


地獄から来た女

田村泰次郎(1911-1983


長見政司が勤める白椿寮は、戦後の荒廃の中で身を持ち崩した女性たちのための更生施設である。


長見は、警視庁風紀係による夜の女たちの検挙に同行。その場で、赦しを乞う小田まゆみと出会う。


長見はまゆみを白椿寮に連れて行き、更生を願うが、場に馴染めないまゆみは、無断で寮を飛び出してしまう……



「あんたのような偽善者が、いい加減なところにふらふらしていることが、たまらないの。そういう偽善者の存在が、あたしたちのような人間を救うことが出来ると思いこんで、楽観して、日をすごしている世間が、あたしは憎らしくてならないのよ」



2023.1.19読了


地獄から来た女

春陽文庫

昭和27710日初版発行

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #田村泰次郎 #地獄から来た女