~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

嘆願運動の皆様へ VEPTRベプター解説 No.1イントロとして

2008-05-05 16:47:32 | VEPTR COM JAPAN
本ブログをご覧の皆様へ:
私august03は医師(medical doctor)ではありません。医学の専門家でもありません為
当ブログでの海外文献、資料等の私の和訳が100%完璧であるとは言えませんことを
最初にご理解のほどお願いいたします。誤謬を防ぐ目的で引用した文献、資料はその
オリジナルURLや英文も併記しておりますので、もしも皆さんが医師のもとを訪れた
際に、私の和訳の誤りを先生よりご指摘いただく場面もあるかと思います。
私のブログの目的は、カテゴリー「初めてこのブログをご覧になられる皆様に」で
記載しましたように、側彎症(先天性及び特発性)に関する誤った知識と情報に満ちた
このネット社会の状況に警鐘を鳴らし、正しい知識と情報の普及こそが患者の皆さんの
利益にかなうものである、ということを広く知っていただきたく書き続けているものです。

VEPTRの早期認可を目指しての署名嘆願運動が大きく広がりを見せるなかで、本ブログ
において、あらためてVEPTRベプターの最新情報も含めて、幾つかの切り口より説明
を加えてみる必要があると感じ、何度かに分けてここに記載してみたいと思います。

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添付レントゲン写真について :
VEPTRは先天性側わん症の患者さんを治療する為のデバイス(医療機器)です。
このブログ内でとりあげている思春期特発性側わん症患者さんを治療する目的で
このベプターが用いられることはありません。対象とする患者さんの年齢が大きく
ことなるということ、対象とする病態(病気の状態)が大きくことなる、という点を
まず第一に記憶にとどめて下さい。
この写真からはよく見えませんが、ベプターで治療を必要とする患者さんは、
どちらが主でどちらが従であるかは別として、肋骨癒合(肋骨はそれぞれに隙間を
有しているわけですが、この隙間がなく何本かの肋骨が癒合...骨どうしがくっついている
状態...していたり、欠損(存在しない)という状況を有し、同時に脊柱側わん症を有
している状態です。これらの状態が継続することにより、左写真のように肺スペース
がどんどんと狭められ、肺が成長することが阻害される状態となります。こどもは
8歳~9歳頃までに肺の細胞数が出来上がると言われています。つまり、その年齢以前
に左写真で見られるような肺スペースが押しつぶされた状態を改善しなければ、
こどもの肺は大人になっても正常に機能する能力は失われている。ということに
なります。
さらに怖いことは、大人にまで成長できる生命力がこどもに備わっていれば良い
のですが、ご存知のように側彎症は進行性のものです。じわじわと進行して、脊柱
が曲がっていきます。つまり、押しつぶされた肺スペースは不可逆的にさらに
押しつぶされていきます。これに伴い、患者であるこども(乳幼児、小児)は、呼吸器系が
弱くなり、気管支炎、肺炎を発症しやすくなるなります。またカーブの進行により
無気肺とよばれる状態にまで進むことで片方の肺は完全にその機能を失うことに
なります。
このような状態にいたる病態をVEPTRを開発したキャンベル医師は「胸郭形成不全
症候群」と呼び、どうすれば、この病態を改善することができるか、治療すること
ができるかを20年近い年月をかけて研究を続けてきました。

特発側彎症の最終的な治療法が手術による脊柱固定術となるわけですが、この場合
も従来の治療法は脊柱固定をするしかありませんでした。
しかし、思春期特発性側弯症の場合でも、そのこどもの成長(身長)とのタイミング
をはかる必要があるように、先天性側弯症においても、こどもの身長(体躯)は最も
大きな問題となります。手術...つまり脊柱固定術を行う、ということは、その子どもは
その時点で、成長(身長)が止められる。ということを意味します。ときには、身長
が止められるだけではなく、手術により体躯の容量が固定されるわけですから、
その後の内臓器官の成長は、広がれない風船の内部でもうひとつの風船を膨らませる
ような結果を生むわけですから、やがて内臓器官への負担が限界を迎えるときが
来ます。

VEPTRベプターあるいはグローイングロッドを必要とする患者さん(こども)は、
*脊柱側弯の進行による肺スペース減少から、肺炎等を発症しやすくなり、それが
 原因で死亡することがある
*呼吸器系が弱くなり、自発呼吸能力が失われ、自宅での人工呼吸機管理が必要と
 なることがある
*脊柱固定術を行う事で、一時的に状態が改善するが、やがて内臓器官の負担が限界
 に達することで、呼吸器系あるいは心不全により死亡することがある。
*脊柱固定術をおこない、生命力のあるこどもの場合は、その後の人生を成長しない
 体躯のなかで一生を送ることになる。

ガンや白血病のように、発症から短期間で生命が失われる病気ではありませんが、
じわじわとその生命を蝕んでいることにかわりのない怖い病気です。

では、グローイングロッドで治療できるか? という質問もあると思います。
病気の治療とは、Aという病気にはA"(ダッシュ)という治療法が最適であった場合、
そのA"(ダッシュ)が Bという病気にも最適であるとは限りません。
一見すると、小児の側彎症なのだから、VEPTRでなくともグローイングロッドで
十分ではないか、と考えられがちです。しかし、ここでもう一度、VEPTRが適応と
されている患者さんのレントゲン写真をじっくりと見ていただきたいと思います。
先にも述べましたように、VEPTRが適用される幼児小児の患者さんは、生まれながら
にして、肋骨にも異常を有しており、それに対する治療を必要としています。
あるいは、脊柱側弯のカーブを矯正するだけでは肺スペースが拡大せず、胸郭形成
不全の状態が改善しないケースもありえます。つまり、コブ角の改善と同時に、
肺スペースの容量拡大を必要とする患者さんのケースがあるということです。

添付写真の中央は、ベプターを取り付けた直後です。ご覧のように、左写真と比較
すれば、明らかに肺スペースはもとよりのこと、コブ角も改善しているのがわかり
ます。そして、添付写真右は、ベプターをその後延長した状態を示しています。
中央写真に比較して、さらに肺スペースが拡張し、コブ角も改善しているのがわかります。

この添付写真からは術前のコブ角が何度であったかは不明ですが、これだけの酷い
角度から想像すると100度前後の側彎症だったと思います。
それが、ベプターを取り付け、何度か延長することで、コブ角がほとんど真っ直ぐ
になるほどに伸張し、そして肺スペースも開大させることができました。
もちろん、ベプターは脊柱固定術ではありませんから、患者さんの成長(身長)を
止めることはありません。

手術にはリスクが伴います。この添付写真のケースのように、そして先天性側弯症
が多くの場合、幾つかの合併症を有していることが多いために、そして患者さんが
幼児小児という小さな身体、小さな体力であるために、その手術には危険が伴います。
もしも、完全に安全でリスクゼロの治療を望むご両親がいらっしゃるとしたら、
このベプターという手術法は、ゼロではありません。また、グローイングロッド法
もゼロではありません。リスクゼロの手術法はこの世界にはまだ存在していません。
そして、お子さんは、何の治療も行うことがなければ、座して死を待つだけとなります。

病気のお子さんにどのような治療を行うのが、お子さんにとってより適している
のか、それを考え、選択し、決断するのは親であられるご両親の責任です。
リスクをとってでも生きる望みに賭けるかどうかは、ご両親が決められる事のはず
です。 PMDAの審査官が判断することではありません。強度試験をしようがするまい
が、上記に述べたリスクには何の関係もありません。インプラントの強度試験データ
によって、リスクが低減することは決してありません。低減するのは、認可の時期
が遅れることによって、手術するタイミングが失われるということです。

何度でも同じことを述べますが、手術にはリスクがあります。合併症、併発症の
リスクがあり、あるいは成否も含めたリスクが現実に存在します。しかし、その
リスクに挑戦するかどうかは、ご両親が決める問題であって、PMDAの審査官が判断
することではありません。インプラントの何たるかを判断する能力のない審査官が
審査を遅らせることこそが今の日本の医療審査システムの問題なのです。

この現状を打破し、救うことのできる命をタイミングを逃すことなく、救う努力を
すること。現実に手術するのは医師ですが、私たちは、その医師に最先端の医療機器
という「力」を与えるために、努力しましょう。皆さんのお力をお貸し下さい。
よろしくお願いいたします。


  VEPTRの会
嘆願書受付先:momotan0901@ybb.ne.jp まで、一度メールをお送り下さい。
折り返し嘆願書の書式・この運動の趣旨等を書いた用紙を送らして頂きます。
(お友達にもご説明しやすい様な書式も用意しております) 

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備考 : 用語について
本ブログ内で用いている用語は、私がネットで調べた専門領域のものを極力その
用途において過ちのないように使用しているつもりですが、念のために、下記に
それら用語とその使用している意味を整理してみました。

デバイス:医薬品に対応するものとして「医療機器」があります。病気の治療には
クスリも使用しますが、治療用医療機器によって治す範囲というものも相当広い
範囲にわたっています。手術室での手術をイメージしていただけると、医療機器が
イメージしやすいと思います。何万種類も存在する医療機器のなかで、体内に埋め込み
をして治療するものを「デバイス」と表現することがあります。

インプラント:体内に埋め込みをおこなって治療する医療機器を表現する場合に、
特に「埋め込んで使用するもの」という特徴を伝えたい場合に、「インプラント」
という表現をしています。歯科領域では人工歯根をインプラントと呼んでいますが
外科領域一般的においては、さらに広い範囲、部位でインプラントによる治療が
行われています。整形外科分野では、人工関節(股関節、膝関節等)や骨折材料が
多くの患者さんの治療に用いられています。あるいは、心臓ペースメーカーなども
体内に埋め込んで使用するものですから、「インプラント」の範疇になります。
長期間(ある意味では永遠に)埋め込みをする医療機器というイメージで、この用語
をとらえるとよいと思います。

インスツルメンテーション :脊椎領域でとくに用いられる用語で、「脊椎インスツル
メンテシーション」とも表記されています。意味合いはデバイス、インプラントと
同義になりますが、脊椎外科での手術に使用されるデバイス類をそのような手術法
が開発された当時にインスツルメンテーションと呼んだことが由来のようです。
私august03個人的には、手術器具(メス等の手術に使用する道具)もインスツルメン
テーションと呼ばれることから、このブログ内では、デバイスあるいはインプラント
という表記を多用しています。

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VEPTRに関連する記事は、カテゴリーより、「VEPTR COM JAPAN」「先天性側わん症」
をご覧下さい。
または、検索[このブログ内にて]で、VEPTRあるいはベプターにて検索下さい。 



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