No.4でアクセスしたFDAページから PDF「SAFETY AND PROBABLE BENEFIT DATA」を
ダウンロードして臨床データに関する主要部分を前回ご紹介しました。
http://www.fda.gov/cdrh/ode/H030009sum.html
実は、この資料を読んでいて思わず目を疑いたくなるようなデータが提示されている
ことに気づきました。
私は5月1日の「緊急 VEPTR嘆願運動にお力を貸して下さい !!」のなかで
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/47b0f54be173a8cd67dd13c39d7443f4
VEPTRの会を発信しておられる成松さんのブログからの言葉、
「VEPTRの強度について実験を行い・数値を提出せよ・・・」
というPMDAからの要求があまりに非科学的であることを説明しました。
そして、今回、このFDAのホームページからダウンロードした資料を見て愕然として
しまいました。なぜならば、この中で、製造会社S社がVEPTRの強度試験データを
FDAに提出しているからです。
IX. SUMMARY OF PRECLINICAL STUDIES
Biocompatibility Testing
The VEPTR has not been subjected to biocompatibility testing. The VEPTR
components are fabricated from titanium alloy (Ti-6A1-7Nb, ASTM Standard
F1295), or commercially pure titanium, TiCP4 and TiCPl, (ASTM StandardF67).
These materials have a long and well-documented history of safe use in
orthopedic implants.
前臨床試験データのサマリー
生物学的安全性試験
VEPTRでは生物学的安全性試験は実施していない。なぜなら、VEPTRはチタン合金
(Ti-6Al-7Nb ASTM標準 F1295)と純チタン(TiCP4 ASTM標準 F67)に基づいた金属材料
をその製品に使用しているからである。これらの金属材料は、長年月にわたり
整形外科インプラントとして安全な材料として使用されてきた歴史があるからである。
Mechanical Testing
The non-clinical mechanical tests were conducted to characterize the
mechanical properties of the VEPTR. The worst-case constructs of the VEPTR
device were subjected to static and fatigue mechanical testing. All system
and individual component testing results appear to indicate the VEPTR's
ability to withstand normally expected physiologic loads.
機械的試験
非臨床としての機械強度試験がVEPTRの機械特性を示すために実施された。
VEPTRデバイスにおけるワーストケースに対して、静的および動的試験が実施された。
全てのシステムと個々の部品に対する試験結果は、VEPTRが想定される身体的荷重に
対して正常に機能する能力を有することを示していた。
1. Low-Profile Lamina Hook Interconnection Strength Test
椎弓フックの接続強度試験 (本文省略)
結果 The average slippage load was 2253 N (s.d. 742 N).
平均的なフックがはずれる力は2253Nであった。
→august03より :フックというのは、VEPTRで使用されているひとつの部品の名称で
この部品を骨にひっかけて固定する役目をするものです。その引っ掛ける固定力
を測定したデータということです。1Nを計算しやすいように100gと置き換えると
2253Nとは225300gつまり、225kgの力以上がないとこのフックは外れることはない
という測定結果を示しているわけです。
2. Distraction Lock Tensile Strength Test
デバイスを拡張する際の引張り強度試験 (本文省略)
結果 The average failure load was 520.1 lb (s.d. 32.94 lb).
破損する荷重の平均は520ib
→august03より : VEPTRデバイスは、肋骨に取り付けた後、定期的に伸張させて
使用することになります。この伸張構造での引張り強度が520ポンド、つまり
1ポンドを450g (0.45kg)として換算すると、234kg の力まで部品は耐えられる
ということを示しているわけです。
3. Static Compression Test, Longest Lumbar Extension, Rib Sleeve, and
SHook Assembly 各部品における静的圧縮力 (本文省略)
結果 The mean ultimate load was 419 N, and the ultimate bending strength
was 16,758 N-mm. 平均の極限荷重は 419N。極限曲げ強度は16758N。
→august03より : 419Nとは41900g、つまり41.9kg。16758Nとは 1675800g
つまり1675kgを示しているわけです。
-----------------------------------------------------------------------
(august03より)
私は、5月1日の「緊急 VEPTR嘆願運動にお力を貸して下さい !!」のなかで
金属の強度とは、折れる瞬間までは折れることはない、とイメージ
してもらうばわかると思います。
ではこのVEPTRというデバイスが折れる最大強度はどれくらいか、現物を見て
いるわけではありませんから、写真からの想像ですが、仮に直径5mmのチタン
合金であれば、それを折る力とは、300キロ~数百キロの曲げ強度はあると
思います
と想像値ですが、説明しました。チタン合金とは軽くて、しかもとてつもない強度が
ある、というのは、一般常識です。そして、ここで実際に示されたデータはその値
が、 1675kg あると述べられているわけです。
ここに示された幾つかの強度試験データをご覧になって、皆さんはどう感じられて
いるでしょうか?
小さなこどもの身体のなかで発生するかもしれない外力や、部品の接続における強度
あるいは部品が金属疲労により破損するかもしれないことを想定した場合のインプラント
が有する「強度」として、これらの数値が不十分であると思われたでしょうか?
私は金属の専門家でもありませんが、これらの数値をもって、このVEPTRという
医療機器が安全に使用しうる機械強度を持っていない。と判断したPMDA審査官の
判断根拠が想像できません。何をどう考えれば、機械強度試験データが不足して
いるから、試験を追加実施しろ。と言うのでしょうか?
VEPTRを認可した米国FDAの審査官は、これらのデータから十分に安全に使用する
ことができると判断しました。
一方、PMDA審査官は、機械強度試験データが不足している、と判断しました。
この「差」はいったいどこから来るものでしょうか?
工学系の知識のある/ない、の問題ではありません。私とて、大学で工学を専攻した
わけではありません。しかし、これは常識の範疇の問題です。チタンという金属が
どういう分野でどういう用途で使用されているか、それは新聞/ニュースで耳目する
範囲のことです。VEPTRというデバイスがどういう病気においてどういう具合に使用
されるものであるのか、それは文献なりFDAホームページを読めば理解できる範囲の
ことです。図を見て、レントゲン写真をみれば、このデバイスにどういう負荷が
かかり、どの程度の耐力が要求されるものであるかは、およそ想像できる範囲の事
です。仮に、試験データがこのデバイスの機械強度が数キロであったとしたら、
それで十分だろうか? と不安がよぎることはあるかもしれません。しかし、現実に
示されたデータが、数十キロ、数百キロの強度があったときに、それでも不十分だ
と想像する、その想像力が私には信じられません。
つまり、これが現在の PMDAの審査官の能力ということです。適切な審査をする能力
のない審査官による人的弊害により、手術をするタイミングを失う、というこの
現実に、私は日本の未来に対して恐怖すら感じてしまいます。
(当該シリーズは No.6に続きます)
ダウンロードして臨床データに関する主要部分を前回ご紹介しました。
http://www.fda.gov/cdrh/ode/H030009sum.html
実は、この資料を読んでいて思わず目を疑いたくなるようなデータが提示されている
ことに気づきました。
私は5月1日の「緊急 VEPTR嘆願運動にお力を貸して下さい !!」のなかで
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/47b0f54be173a8cd67dd13c39d7443f4
VEPTRの会を発信しておられる成松さんのブログからの言葉、
「VEPTRの強度について実験を行い・数値を提出せよ・・・」
というPMDAからの要求があまりに非科学的であることを説明しました。
そして、今回、このFDAのホームページからダウンロードした資料を見て愕然として
しまいました。なぜならば、この中で、製造会社S社がVEPTRの強度試験データを
FDAに提出しているからです。
IX. SUMMARY OF PRECLINICAL STUDIES
Biocompatibility Testing
The VEPTR has not been subjected to biocompatibility testing. The VEPTR
components are fabricated from titanium alloy (Ti-6A1-7Nb, ASTM Standard
F1295), or commercially pure titanium, TiCP4 and TiCPl, (ASTM StandardF67).
These materials have a long and well-documented history of safe use in
orthopedic implants.
前臨床試験データのサマリー
生物学的安全性試験
VEPTRでは生物学的安全性試験は実施していない。なぜなら、VEPTRはチタン合金
(Ti-6Al-7Nb ASTM標準 F1295)と純チタン(TiCP4 ASTM標準 F67)に基づいた金属材料
をその製品に使用しているからである。これらの金属材料は、長年月にわたり
整形外科インプラントとして安全な材料として使用されてきた歴史があるからである。
Mechanical Testing
The non-clinical mechanical tests were conducted to characterize the
mechanical properties of the VEPTR. The worst-case constructs of the VEPTR
device were subjected to static and fatigue mechanical testing. All system
and individual component testing results appear to indicate the VEPTR's
ability to withstand normally expected physiologic loads.
機械的試験
非臨床としての機械強度試験がVEPTRの機械特性を示すために実施された。
VEPTRデバイスにおけるワーストケースに対して、静的および動的試験が実施された。
全てのシステムと個々の部品に対する試験結果は、VEPTRが想定される身体的荷重に
対して正常に機能する能力を有することを示していた。
1. Low-Profile Lamina Hook Interconnection Strength Test
椎弓フックの接続強度試験 (本文省略)
結果 The average slippage load was 2253 N (s.d. 742 N).
平均的なフックがはずれる力は2253Nであった。
→august03より :フックというのは、VEPTRで使用されているひとつの部品の名称で
この部品を骨にひっかけて固定する役目をするものです。その引っ掛ける固定力
を測定したデータということです。1Nを計算しやすいように100gと置き換えると
2253Nとは225300gつまり、225kgの力以上がないとこのフックは外れることはない
という測定結果を示しているわけです。
2. Distraction Lock Tensile Strength Test
デバイスを拡張する際の引張り強度試験 (本文省略)
結果 The average failure load was 520.1 lb (s.d. 32.94 lb).
破損する荷重の平均は520ib
→august03より : VEPTRデバイスは、肋骨に取り付けた後、定期的に伸張させて
使用することになります。この伸張構造での引張り強度が520ポンド、つまり
1ポンドを450g (0.45kg)として換算すると、234kg の力まで部品は耐えられる
ということを示しているわけです。
3. Static Compression Test, Longest Lumbar Extension, Rib Sleeve, and
SHook Assembly 各部品における静的圧縮力 (本文省略)
結果 The mean ultimate load was 419 N, and the ultimate bending strength
was 16,758 N-mm. 平均の極限荷重は 419N。極限曲げ強度は16758N。
→august03より : 419Nとは41900g、つまり41.9kg。16758Nとは 1675800g
つまり1675kgを示しているわけです。
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(august03より)
私は、5月1日の「緊急 VEPTR嘆願運動にお力を貸して下さい !!」のなかで
金属の強度とは、折れる瞬間までは折れることはない、とイメージ
してもらうばわかると思います。
ではこのVEPTRというデバイスが折れる最大強度はどれくらいか、現物を見て
いるわけではありませんから、写真からの想像ですが、仮に直径5mmのチタン
合金であれば、それを折る力とは、300キロ~数百キロの曲げ強度はあると
思います
と想像値ですが、説明しました。チタン合金とは軽くて、しかもとてつもない強度が
ある、というのは、一般常識です。そして、ここで実際に示されたデータはその値
が、 1675kg あると述べられているわけです。
ここに示された幾つかの強度試験データをご覧になって、皆さんはどう感じられて
いるでしょうか?
小さなこどもの身体のなかで発生するかもしれない外力や、部品の接続における強度
あるいは部品が金属疲労により破損するかもしれないことを想定した場合のインプラント
が有する「強度」として、これらの数値が不十分であると思われたでしょうか?
私は金属の専門家でもありませんが、これらの数値をもって、このVEPTRという
医療機器が安全に使用しうる機械強度を持っていない。と判断したPMDA審査官の
判断根拠が想像できません。何をどう考えれば、機械強度試験データが不足して
いるから、試験を追加実施しろ。と言うのでしょうか?
VEPTRを認可した米国FDAの審査官は、これらのデータから十分に安全に使用する
ことができると判断しました。
一方、PMDA審査官は、機械強度試験データが不足している、と判断しました。
この「差」はいったいどこから来るものでしょうか?
工学系の知識のある/ない、の問題ではありません。私とて、大学で工学を専攻した
わけではありません。しかし、これは常識の範疇の問題です。チタンという金属が
どういう分野でどういう用途で使用されているか、それは新聞/ニュースで耳目する
範囲のことです。VEPTRというデバイスがどういう病気においてどういう具合に使用
されるものであるのか、それは文献なりFDAホームページを読めば理解できる範囲の
ことです。図を見て、レントゲン写真をみれば、このデバイスにどういう負荷が
かかり、どの程度の耐力が要求されるものであるかは、およそ想像できる範囲の事
です。仮に、試験データがこのデバイスの機械強度が数キロであったとしたら、
それで十分だろうか? と不安がよぎることはあるかもしれません。しかし、現実に
示されたデータが、数十キロ、数百キロの強度があったときに、それでも不十分だ
と想像する、その想像力が私には信じられません。
つまり、これが現在の PMDAの審査官の能力ということです。適切な審査をする能力
のない審査官による人的弊害により、手術をするタイミングを失う、というこの
現実に、私は日本の未来に対して恐怖すら感じてしまいます。
(当該シリーズは No.6に続きます)
august03さんのおっしゃられていること、逐一もっともと思います。ただ、審査というのは、貴方自身もおっしゃっているように、決して容易い仕事ではなく、それに従事している方々は必死で学習し、毎晩遅くまで仕事に励んでいる、ということも忘れないで欲しいと思います。免責という点は慧眼だと思います。ただし実現は非常に難しいでしょう。VEPTRを希少疾病医療機器として、この日本でもっと早くに出せる機会があったようですが、残念ながらそれは、とある方の反対により実現しなかったようです。早期に認可されることを祈念しております。