2019年7月18日 (木)
トルコへの新アメリカ大使 - 破綻した結婚は終り?
2019年7月2日
マーティン・バーガー
New Eastern Outlook
アメリカ-トルコ関係の現状について論じながら、トランプ政権が、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタンやアゼルバイジャンに任命した大使を検討してきたので、アンカラを服従に戻るよう強いるワシントンの試みで、アンカラ新アメリカ大使が演じようとしている役割に、時間をさいて綿密な検討をする頃合いだ。
2月、トランプ政権は、アンカラでアメリカ外交団を率いるべく、近東担当国務次官補デイビッド・サターフィールドを派遣するつもりであり、上院外交委員会が彼の指名を迅速に推進したとを明らかにした。
過去二年間、アメリカ-トルコ両国関係に主要ないらだちをもたらしたトルコのタイイップ・エルドアン大統領の政策に対し、ワシントンの欲求不満が増大しつづけていた。ワシントンでNATO団結を主張説する人々は、エルドアンが、一つの目的から別の目的へと「頭がないニワトリのように」やたらかけずり回り、パニックといらだちを振りまいたと主張し、この傾向を逆転しようとしているのは明確だ。これらタカ派は、現在のトルコは、国際舞台で立場を強くする狙いで失敗したと確信している。
他のアメリカ政治家たちは、トルコとアメリカが共通の価値感や権益を共有できるふりをやめる頃合いだと主張し、この悪化する関係に疲労の兆しを見せていた。彼らの意見では、アメリカ政府との協力にトルコが熱狂的だった冷戦の日々の状態に戻すことはできない。彼らはワシントンは、権威主義的な東の国々の中に場所を占める運命にあるトルコを諦めるべきだと提案している。この概念の最も主要な提案者の一人は、トルコは依然、アメリカの同盟国であるかもしれないが、到底パートナーではないと述べた、外交問題評議会会長だ。
この文脈で、トランプが就任するや否やトルコへの前アメリカ大使ジョン・バスを、彼の地位を空席にしたまま、アフガニスタン・アメリカ外交団を率いるべく派遣したのは、かなり興味深い。ホワイトハウスがこの措置をとるには多くの公然と秘密の理由があったが、テロ宣伝のかどで、アメリカ人牧師アンドリュー・ブランソンを、トルコがほぼ二年間投獄したことは再三言及されている。
さらに、ムスリム同胞団をテロ集団と指名したジョン・ボルトンの狙いは、タイイップ・エルドアンが、ある意味、地域のムスリム同胞団の非公式指導者なので、アンカラが激しい怒りを表明する結果をもたらすことだという憶測があった。多くの情報提供者によれば、トルコでエルドアンの党は、トルコのムスリム同胞団と呼ばれている。
さらに、同盟国がロシアのS-400という最高級防空用システムを購入するのを阻止しようとするワシントンの試みと、超高価なF-35戦闘機のトルコへの販売を巡る、二つの首都の間で進行中の大崩壊がある。
去年、ホワイトハウスは、再選でエルドアンを祝うトランプの電話について新聞発表さえしなかった。アメリカ政府はエルドアン就任式典に特別代表団さえ派遣せず、代わりに在アンカラ・アメリカ大使館から代理大使を参加させただけだった。
ワシントンを悩ませているもう一つの要因は、アメリカの対イラン政策に協調するのをアンカラが拒絶していることだ。
これらすべての要因から、アメリカ政府内のあらゆる派閥が異なる方向を目指して、ホワイトハウスは、大いに必要とされる政界実力者の代わりに、もう一人の「制御された混乱状態」の支持者を派遣することができず、合計18カ月間もアンカラ新大使を任命できなかった。
それゆえ、北シリアでのクルド民兵の運命について、アンカラとワシントン間で意見の相違が限界に達したアメリカ-トルコ関係の重大な岐路で、サターフィールドを選ぶ決定は偶然ではない。ホワイトハウスの見地からは、クルド民兵は、ISIS に対する想像上の戦闘でアメリカ同盟者で、他方トルコは彼らはテロリスト勢力だと確信している。
サターフィールドの背景を調べると、彼は、2003年のアメリカによるイラク侵略の余波の中、イラクで実に長年過ごしたことが分かる。ジョージ・W・ブッシュ大統領の下で、彼はコンドリーザ・ライス国務長官の補佐官を勤め、アメリカがイラクで追求した政策を調整した。バラク・オバマの下で、サターフィールドは、シナイ半島駐留多国籍軍監視団事務局長の地位を得た。彼はリビア担当国務長官補佐の資格で雇用されていた。
ワシントン専門家の一部は、サターフィールドはほとんど完ぺきなアラビア語の能力を持つ「聡明なアラビスト」だと主張する。ある時点で、サターフィールドは多国籍治安維持軍司令部の前指揮官デイビッド・ぺトレイアスとイラクのヌーリ・アル・マリキ前首相との1対1会談の際に、通訳の役割を果たしていた。だが多くの前任者と全く違い、サターフィールドはトルコ語を話さない。
デイビッド・サターフィールドを駐トルコ・アメリカ大使に任命することで、ホワイトハウスは、複雑な問題を沈静化させられる外交官をまだ持っていることを示そうと望んでおり、彼は北東シリアでの勢力の処置に関するワシントンとアンカラ間で継続中の論争を解決するよう期待されている。タイイップ・エルドアンの見地からは、アンカラがテロリストと指名したクルド人民防衛隊に対処するため、国境近くに15マイルの緩衝地帯設置をトルコは着実に続けているのだから、論じるべきことなど皆無だ。だがサターフィールドは、以前に交渉で、ベイルートやバグダッドやトリポリにおけるアメリカの重要な権益に対する多くの深刻な脅威に対処しており、彼なら問題を片づけられると思われている。
だが安定したペースで進んでいるトルコとロシアの関係改善を頓挫させるよう彼は期待されているので、サターフィールドの最終目的は遥かに複雑だ。1952年、NATOへのトルコ加盟前でさえ、ワシントンとアンカラが享受した軍事協力は、ソ連に対する抑止力の重要な要素と見なされており、アメリカ政治支配層はトルコを「極めて重要な同盟国」だと記述していた。ソ連崩壊後、ワシントンは、地域における権益を推進するため、様々な民族集団を利用しながら、トルコは、独立国家共同体(CIS)中のチュルク系の人々の権益の代表者だと宣伝した。
アメリカ上院外交委員会に対する彼の証拠で、サターフィールドは、これらの立場を進んで支持することを再確認した。
そのため、著名な中東外交官をトルコに送るという決定は、ホワイトハウスが、アンカラを、アメリカの従順な衛星諸国の仲間に戻す必要がある中、両国関係を再開する可能性に自信を持っている兆候を示している。
だが現在のアンカラは、黙ってワシントンの命令に従うことに同意し、アメリカ傀儡のままでいるだろうか?
マーティン・バーガーはフリージャーナリストで地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/07/02/new-us-ambassador-to-turkey-bad-marriage-no-more/
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2019年7月17日 (水)
野放しの資本主義が世界を破壊していると言えるだろう
2019年7月15日
Paul Craig Roberts
今、フランスのリビエラとエリー湖とメキシコ湾に影響を与えている有毒藻類ブルームに関する報道がある。以下を参照。https://www.motherjones.com/environment/2019/07/this-years-wild-wet-spring-has-led-to-massive-blobs-of-toxic-algae/?utm_source=mj-newsletters&utm_medium=email&utm_campaign=food-for-thought-2019-07-14、https://www.theweek.co.uk/102263/holidaymakers-warned-about-toxic-algae-on-french-beaches?_mout=1&utm_campaign=theweekdaily_newsletter&utm_medium=email&utm_source=newsletter、およびhttps://www.sarasotamagazine.com/articles/2017/4/26/florida-phosphate
企業農業は有毒藻類ブルームの大きな原因だ。昔、農業は賢明に経営されていた。毎年土地の一部を休耕中にしたり、鋤込まれて土壌を回復させる植物を植えたりしていた。この慣習が土地が疲弊するのを阻止していた。現在は、土地から全ての利益を搾り取るべく農業が行われている。過剰利用が土壌を疲弊させる。化学物質が輪作にとって代わった。企業農業では化学肥料の大量散布が必要だ。散布されたリンを雨が小川に流し、小川が川や湖や海に汚染物を運ぶ。メキシコ湾には、生物が存在しない広範囲の「酸欠海域」がある。リンは帯水層に入り、上水を汚染する。野放しの資本主義によって損なわれ、破壊される環境資源に依存している環境や第三者に、事業主体がそうした負担を負わせるのが許されるているがゆえに、こうした途方もなく犠牲が大きいできごとが起きるのだ。
現在、資本主義は、環境に対する悪影響の費用と比べれば、ずっと僅かな短期利益のために、残された熱帯雨林を伐り倒している。実際の事実として、野放しの資本主義は、生命を維持する環境を破壊する犯罪組織だ。もう一つの言い方では、野放しの資本主義は、大量殺人犯だ。
それでも、大量殺人犯には多くの擁護者や弁明者がいる。本当に、ジュリアン・アサンジのような警察国家に勇敢に反対する人物を擁護する人々より遥かに多くの擁護者が。
アメリカ人にとって、1ドルをもうけることは社会における最大の価値だ。ドルを稼いでいる連中は、自分たちが世界を住めなくしていることを気にかけない。彼らにはヨットや自家用飛行機や大邸宅や、おしゃれな女性がいるだろう。だが彼らの子孫が、もしいるとすれば、その未来は先細りのはずだ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/
記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2019/07/15/a-case-could-be-made-that-unregulated-capitalism-is-destroying-the-world/
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ロバーツ氏、この話題ではいくつも書いておられる。たとえば下記をお読みいただきたい。
湾岸有志侵略連合派兵、緊急事態条項導入によるファッショ化とペアだろう。ようやく、テレビで、緊急事態条項をあつかったようだ。投票によるファシズム化という某氏の願望まもなく実現するのだろうか?
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