前回の記事。
幼稚園の執行役員の選挙の日を迎えた。
開始から、30分もたたないうちに、選挙終了。
異例の早さと言われ、役を免れたお母さんたちから歓喜と驚きの声がわきあがる。その高揚感の証として、彼女たちはまるでとんでもない奇跡が起きたといわんばかりに、あるいは革命を起こした英雄たちを褒めたたえるみたいに、会場の壁の方に向かって大きな拍手を浴びせた。
その先にいるのが、新役員達4名。
AさんとMさんと私。年少の時に同じクラスで仲の良かった私たち。
そして、会長Nさんは2歳児クラスの時のお友達。
そう、あの、みんなが鼻つまみする執行役員に、私を含め4人が立候補した。
photo by pakutaso.com
さてどうなるか、という心境だった朝早くに、LINEの電話が鳴った。Aさんから。来たか、やっぱりなあと思った。私、この人からの電話を待っていたような気がする。
「Mちゃんとバスの見送りの時に話したんだけど、彼女執行役員やってもいいって言ってる。くじとかゴチャゴチャするのいやだからって。私もそれならって。ねえ、あやせ(私)ちゃんもやらない?どうせやるなら気心の知れたメンバーでやらない?」
Aさんと私は同世代。好き嫌いがはっきりしていて、嘘のない彼女に私は信頼を置いていた。でも、彼女は上の子の小学校の役員もやっているので、Mさんと話すまで立候補には積極的ではなかった。会長職も無理という。
Mさんは30代の男の子ママ。柔らかい雰囲気の人で、誰とでも垣根なく話せる人懐こい人。今回のきっかけを作ったのは彼女だから、「芯が強い」「信念の人」というイメージが彼女に加わった。
私は、もう、即答である。
「うん、わかった。やろうか」
すでに、自分自身、意外でもなんでもなくなっていた。
選挙の少し前に集まって、3人で簡単な意思確認。やる気はあるけど、みんな「会長だけはできない」という点で揺るがなかった。私も、さすがに会長まで引き受ける勇気はなかった。でも、くじで決まる会長というのでは、モチベーションが上がらない。うん、困った。
そこを、2歳児クラスの時に同じだった色白美人でまさしく聡明な学級委員タイプのNさんが通りかかった。すかさず、姉御肌のAさんが声をかける。
「ねえ、役員一緒にやらない?」
「えっ、ああ、うん、いいけど。やるならやってもいいよ」
彼女もほぼ即答である。Aさんは畳掛けるように言う。
「ねえ、会長やって。お願い。私たち全力で支えるから」
「えっー、それは無理無理。いやー、それは」
というNさんだが、なんだか押せば引きうけてくれそうな予感。私も、一緒になって「やって~」と頼み込む。
しばらくもがいていた彼女、意を決したように、ある時現職の会長が待機していた隣の部屋を訪ねる。
「どんな仕事か聞いてくる。それで、やるかどうか決める」。
なかなか戻らない。10分、それとももっとだったかも。
ヤキモキしていた私たちの元に、やや紅潮した顔で戻ってきたNさんは告げた。
「やるっ!」
「お~」
拍手で迎えながら、胸が熱くなった。
その勢いのまま、私たちは会長以外の役割を適当に決めて、セットで立候補したのである。Aさんがあたりをつけて声をかけたメンバーがすごい確率で「OK」の即答したところを見ると、他にも立候補する人がゴロゴロいるのではとも思った。ところが、「立候補する人いますか?」の声に反応したのは、この4人だけ。
4人が手を挙げると、「えーっ!」とい
う悲鳴に似た声が一斉に沸き起こった。その声に、一番驚いたのが4人だった。
会長職を引き受けたNさんがポツリと言った。
「はじめて正夢を見た」
朝方まで眠れず、見た夢が何と、会長になる夢だったのだとか。無意識の世界で起きたことに素直に従った彼女は、まさしく勇気のある人である。私たちに背中を押され、自ら清水の舞台から飛び降りた人。
後日確認したところ、メンバーすべての考え方はほぼ一致していた。
「仕事を楽しもう」「ゆるもう」「ママたちの義務と負担を減らそう」「おかしいと思うものは変えていこう」「空気を読んで行動するのはやめよう」「自分たちが納得する仕事をしよう」
そして、
「私たちがこの幼稚園を心から好きになりたい。誇りに思いたい。そのためにできることを考えよう」。
選挙の次の日からしばらくは、「泣きそうだった」「鳥肌が立った」「このメンバーなら執行役員をやってもいいと思ったくらい」「頼もしい」「すごい、信じられない」「なんか、変えてくれそう」というメッセージをいろんなママたちから受け取った。
幼稚園の役員でこんなドラマを生むってすごくないですか?
幼稚園をよくしようとか、皆がやりたくない仕事を引き受けたとか、大変なことに自ら足を踏み込んだとか、そんなものでもないのだ。
私たちは、ただ自分たちの心の中の「やるかー」の声に素直に従っただけ。やりたくなかったことを、やりたいことに変えただけなんだ。もちろん、それぞれがありったけの勇気を出したのはウソじゃない。
私たちは私たちのために、私たちが納得した仕事をしよう。それが、他の人から見たら「失敗」かもしれないし、「ひどい執行役員」になってしまうのかもしれないけれど、それでもいい。
でもね、きっと、私たちが心から楽しむことをめいっぱいやれたらね、その先にはさ、幼稚園のママたちや子どもたちにとってもイイこと、私たち役員としての本当の「成功」が待っている気がするな。それを素直に信じられるれるのも、実は私にとって奇跡だったりする。
今は、まるで青春ドラマの登場人物になりきっている私たちです。
あー、楽しい!
(この後、すごい爆弾事件が降ってきた。)
またいつか書きます。
幼稚園の執行役員の選挙の日を迎えた。
開始から、30分もたたないうちに、選挙終了。
異例の早さと言われ、役を免れたお母さんたちから歓喜と驚きの声がわきあがる。その高揚感の証として、彼女たちはまるでとんでもない奇跡が起きたといわんばかりに、あるいは革命を起こした英雄たちを褒めたたえるみたいに、会場の壁の方に向かって大きな拍手を浴びせた。
その先にいるのが、新役員達4名。
AさんとMさんと私。年少の時に同じクラスで仲の良かった私たち。
そして、会長Nさんは2歳児クラスの時のお友達。
そう、あの、みんなが鼻つまみする執行役員に、私を含め4人が立候補した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/f6/cbea7980a615795d2733a135f9ce4cdd.jpg)
さてどうなるか、という心境だった朝早くに、LINEの電話が鳴った。Aさんから。来たか、やっぱりなあと思った。私、この人からの電話を待っていたような気がする。
「Mちゃんとバスの見送りの時に話したんだけど、彼女執行役員やってもいいって言ってる。くじとかゴチャゴチャするのいやだからって。私もそれならって。ねえ、あやせ(私)ちゃんもやらない?どうせやるなら気心の知れたメンバーでやらない?」
Aさんと私は同世代。好き嫌いがはっきりしていて、嘘のない彼女に私は信頼を置いていた。でも、彼女は上の子の小学校の役員もやっているので、Mさんと話すまで立候補には積極的ではなかった。会長職も無理という。
Mさんは30代の男の子ママ。柔らかい雰囲気の人で、誰とでも垣根なく話せる人懐こい人。今回のきっかけを作ったのは彼女だから、「芯が強い」「信念の人」というイメージが彼女に加わった。
私は、もう、即答である。
「うん、わかった。やろうか」
すでに、自分自身、意外でもなんでもなくなっていた。
選挙の少し前に集まって、3人で簡単な意思確認。やる気はあるけど、みんな「会長だけはできない」という点で揺るがなかった。私も、さすがに会長まで引き受ける勇気はなかった。でも、くじで決まる会長というのでは、モチベーションが上がらない。うん、困った。
そこを、2歳児クラスの時に同じだった色白美人でまさしく聡明な学級委員タイプのNさんが通りかかった。すかさず、姉御肌のAさんが声をかける。
「ねえ、役員一緒にやらない?」
「えっ、ああ、うん、いいけど。やるならやってもいいよ」
彼女もほぼ即答である。Aさんは畳掛けるように言う。
「ねえ、会長やって。お願い。私たち全力で支えるから」
「えっー、それは無理無理。いやー、それは」
というNさんだが、なんだか押せば引きうけてくれそうな予感。私も、一緒になって「やって~」と頼み込む。
しばらくもがいていた彼女、意を決したように、ある時現職の会長が待機していた隣の部屋を訪ねる。
「どんな仕事か聞いてくる。それで、やるかどうか決める」。
なかなか戻らない。10分、それとももっとだったかも。
ヤキモキしていた私たちの元に、やや紅潮した顔で戻ってきたNさんは告げた。
「やるっ!」
「お~」
拍手で迎えながら、胸が熱くなった。
その勢いのまま、私たちは会長以外の役割を適当に決めて、セットで立候補したのである。Aさんがあたりをつけて声をかけたメンバーがすごい確率で「OK」の即答したところを見ると、他にも立候補する人がゴロゴロいるのではとも思った。ところが、「立候補する人いますか?」の声に反応したのは、この4人だけ。
4人が手を挙げると、「えーっ!」とい
う悲鳴に似た声が一斉に沸き起こった。その声に、一番驚いたのが4人だった。
会長職を引き受けたNさんがポツリと言った。
「はじめて正夢を見た」
朝方まで眠れず、見た夢が何と、会長になる夢だったのだとか。無意識の世界で起きたことに素直に従った彼女は、まさしく勇気のある人である。私たちに背中を押され、自ら清水の舞台から飛び降りた人。
後日確認したところ、メンバーすべての考え方はほぼ一致していた。
「仕事を楽しもう」「ゆるもう」「ママたちの義務と負担を減らそう」「おかしいと思うものは変えていこう」「空気を読んで行動するのはやめよう」「自分たちが納得する仕事をしよう」
そして、
「私たちがこの幼稚園を心から好きになりたい。誇りに思いたい。そのためにできることを考えよう」。
選挙の次の日からしばらくは、「泣きそうだった」「鳥肌が立った」「このメンバーなら執行役員をやってもいいと思ったくらい」「頼もしい」「すごい、信じられない」「なんか、変えてくれそう」というメッセージをいろんなママたちから受け取った。
幼稚園の役員でこんなドラマを生むってすごくないですか?
幼稚園をよくしようとか、皆がやりたくない仕事を引き受けたとか、大変なことに自ら足を踏み込んだとか、そんなものでもないのだ。
私たちは、ただ自分たちの心の中の「やるかー」の声に素直に従っただけ。やりたくなかったことを、やりたいことに変えただけなんだ。もちろん、それぞれがありったけの勇気を出したのはウソじゃない。
私たちは私たちのために、私たちが納得した仕事をしよう。それが、他の人から見たら「失敗」かもしれないし、「ひどい執行役員」になってしまうのかもしれないけれど、それでもいい。
でもね、きっと、私たちが心から楽しむことをめいっぱいやれたらね、その先にはさ、幼稚園のママたちや子どもたちにとってもイイこと、私たち役員としての本当の「成功」が待っている気がするな。それを素直に信じられるれるのも、実は私にとって奇跡だったりする。
今は、まるで青春ドラマの登場人物になりきっている私たちです。
あー、楽しい!
(この後、すごい爆弾事件が降ってきた。)
またいつか書きます。