引越しが近づいてきたのでそろそろ荷物の整理が佳境に入ってきたところなんですが、本を荷造りしている時に実業之日本社「劇画内閣総理大臣伝」が出てきました。三年ほど前に人から貰った物なのですが、当時一読して中身が気に入らずに本棚の肥やしにしていた記憶が…という訳で読み返してみたのですが、
うん、塵芥だわこの本。
歴史ものの漫画の癖に巻末に参考文献の一覧が載っていないという点で既に怪しさが漂ってますが、漫画の内容にも間違い、事実の確認できない描写がかなり見受けられます。
バカヤロー解散の描写で吉田茂が指を指して大声で「バカヤロウー!」と叫んでいたり(実際には自席に戻る途中でボソッとつぶやいただけ)、岸信介が安保闘争の群衆に怯えて「自衛隊を呼べ! 軍はなにをしているんだ!」と叫んだり(典拠不明。但し昭和35年6月19日に予定されていたアイゼンハワー大統領の来日に備え大統領の安全を確保するための自衛隊出動を検討していたという事実はあるのでその誤描写とも考えられる)、広田弘毅が巣鴨でMPに「ホープ・トゥ・ダイ(死を望む)」と発言していたり(典拠不明。そもそも広田は死刑判決を受けたあとに元ドイツ大使の大島浩に対して「雷に打たれた様なものだ」と飄々とした表情で返答している【Wikipedia「広田弘毅」の項より】)、そして極め付けに東條英機大将が「平和なら軍人はいらん! 軍人にとっての幸福は戦争のあることだ!」と発言していたり(典拠不明。そもそも「内閣総理大臣伝」なのに総理大臣としての東條大将にほとんど触れていない。唯一触れていると言えるのは最後のページの「昭和十六年(一九四一年)総理大臣となった東条は太平洋戦争の荒波の中へと日本を突撃させる 今度は東条がより巨大な太平洋戦争をつくったのである」という文章だが、元々東條大将が首相に任ぜられたのが戦争回避のためであり最終交渉が行われたのが東條内閣においてであるというのを無視した話である)。
…こうしてみると参考文献は書かないんじゃなくて「書けない」んですかね。元から参考文献なんか存在しないんじゃないか、と思うくらいのグダグダっぷりですが、恐ろしいことにこの漫画を読んで「それにしても東条英機と岸信介は酷い奴だな。」だの「(東條は)政治家としても軍人としても五流」とか平気でブログに書いちゃう人が居るわけで…。うん、矢張り日本近代史は高校の必修科目に入れるべきだな。でないとこういう嘘に塗れた本に騙される人がどんどん出て来る。皆さんもゆめゆめこういった「漫画で分かる~」系の嘘だらけ本に丸め込まれることのないようにお気をつけください。最終的に物を言うのは自分自身の見識ですから。
うん、塵芥だわこの本。
歴史ものの漫画の癖に巻末に参考文献の一覧が載っていないという点で既に怪しさが漂ってますが、漫画の内容にも間違い、事実の確認できない描写がかなり見受けられます。
バカヤロー解散の描写で吉田茂が指を指して大声で「バカヤロウー!」と叫んでいたり(実際には自席に戻る途中でボソッとつぶやいただけ)、岸信介が安保闘争の群衆に怯えて「自衛隊を呼べ! 軍はなにをしているんだ!」と叫んだり(典拠不明。但し昭和35年6月19日に予定されていたアイゼンハワー大統領の来日に備え大統領の安全を確保するための自衛隊出動を検討していたという事実はあるのでその誤描写とも考えられる)、広田弘毅が巣鴨でMPに「ホープ・トゥ・ダイ(死を望む)」と発言していたり(典拠不明。そもそも広田は死刑判決を受けたあとに元ドイツ大使の大島浩に対して「雷に打たれた様なものだ」と飄々とした表情で返答している【Wikipedia「広田弘毅」の項より】)、そして極め付けに東條英機大将が「平和なら軍人はいらん! 軍人にとっての幸福は戦争のあることだ!」と発言していたり(典拠不明。そもそも「内閣総理大臣伝」なのに総理大臣としての東條大将にほとんど触れていない。唯一触れていると言えるのは最後のページの「昭和十六年(一九四一年)総理大臣となった東条は太平洋戦争の荒波の中へと日本を突撃させる 今度は東条がより巨大な太平洋戦争をつくったのである」という文章だが、元々東條大将が首相に任ぜられたのが戦争回避のためであり最終交渉が行われたのが東條内閣においてであるというのを無視した話である)。
…こうしてみると参考文献は書かないんじゃなくて「書けない」んですかね。元から参考文献なんか存在しないんじゃないか、と思うくらいのグダグダっぷりですが、恐ろしいことにこの漫画を読んで「それにしても東条英機と岸信介は酷い奴だな。」だの「(東條は)政治家としても軍人としても五流」とか平気でブログに書いちゃう人が居るわけで…。うん、矢張り日本近代史は高校の必修科目に入れるべきだな。でないとこういう嘘に塗れた本に騙される人がどんどん出て来る。皆さんもゆめゆめこういった「漫画で分かる~」系の嘘だらけ本に丸め込まれることのないようにお気をつけください。最終的に物を言うのは自分自身の見識ですから。