空を飛んでいたんだ
いつも縁側から見ていた鳥みたいに
羽がはえて…
はじめはヨロヨロして怖くて
下の方なんて見られなかったんだけど
そばを通りかかったトビが
「おまえ、飛ぶのへただな~」
って、飛び方を教えてくれたんだ
本当は風はちょっと苦手なんだけど
風に乗って飛ぶのって
とっても気持ちよくって
どこまでも
どこまでも飛んでみたんだよ
高い高い木の上より
もっと高いところだよ
木がたくさんある
誰かに聞いた事がある
山っていうところかな?
そこを
ひとつ、ふたつ、みっつ越えて
遠くに青い綺麗な色が見えてきたんだ
お茶屋さんの塀の上でいつも寝ている
くろぶちのおじいさんが言ってた
きっとあれは海なんだ
海の中から時々
魚がぴょんと飛び出してくるんだ
頑張ってとろうとしたんだけど
海の水がかかるから
一匹もとれなかった…
海はどこまでいっても海で
すこし飛ぶのも疲れたなぁ
って思ってたら
ちょうど下りられるところがあったんだ
つるつるして海に落ちそうになったから
少し爪を立てたら
近くにあった穴の中から
急に水が飛び出したんだ
お~おきな魚だったんだ
きっとぼく一匹じゃ食べきれないくらい!
「ごめんね」ってあやまって
少し疲れたから
ひと休みさせてもらうことにしたんだよ
海の上で
ポカポカ
ポカポカ…
ねむくなってきて
縁側が恋しくなってきて…
時々…
遠くの方をじっと見ている
猫達は
行ったことのない
遠くの世界にあこがれて
もしかしたら
ゆめの中で
旅してるのかも