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アベノミクスはいま

2015-04-12 20:23:21 | 政治・経済
 安倍政権の発足から二年あまりが経過し、株価は二万円台をうかがうところまできている。この数字に菅官房長官は「よくここまできた」と評価したが、果たして本当にアベノミクスは成功しているといえるのか。それを考えてみたい。
 まず、数値目標を達成できているかということを考えよう。政権発足当初、安倍首相は数値目標として物価上昇率2年で2%という数字を掲げた。その目標は達成できただろうか?
 答はノーである。この目標は達成できていない。これは、すでに確定した事実である。2%どころか、消費税増税による上昇を差し引けば実質ゼロともいわれる。単に達成できなかったというだけでなく、惜しいといえるような数値でさえないのだ。
 そのいっぽうで、実質賃金は22ヶ月にわたって下がり続けている。物価の上昇が抑えられているということは実質賃金という観点からはプラス要素であるはずだが、消費税増税ぶんがあるためにそれも下落しているのだ。すなわち、“異次元の緩和”にはじまる諸政策は、物価上昇という目的を達成できていないうえに、その失敗と引き換えに本来ならえられるはずの恩恵(実質賃金の好転)さえも得られていない。これ以上ないぐらいに見事な失敗に陥っているといえる。
 そしてこの状況で、株価だけが上昇しているわけだが、果たしてこれはよいことなのか。
 私はかねてから、この株価上昇はバブルにすぎないのではないかという疑いをぬぐえずにいるが、最近になってその懸念を深めるような動きも出てきている。カネがだぶついている状況が当然行き着く先として、過大なリスクをとる傾向が広まりつつあるという指摘がなされているのだ。
 そもそも、マネーを大量に市場に供給しても、それを貸し出す優良な相手はかぎられている。カネを貸したら元本利息耳をそろえて返してくれる「よい貸出先」が存在するかどうかは、カネの供給量によって保証されるというわけにはいかないからだ。そして、よい貸出先が存在しないなら、供給されたマネーの行く先は、二つに一つ――金融派生商品などのマネーゲームに投じられるか、「よくない貸出先」に貸すかのどちらかである。後者は、かつての日本のバブル崩壊やアメリカのサブプライムショックにいたる過程で起きたことだ。カネはあまっているが、よい貸出先がない。仕方がないから、融資の審査基準を甘くしてちょっと危ない相手にも貸し出す……金融機関がこういうことをやりはじめたら、それはバブルの一丁目とみていい。一度そのような事態に足を踏み入れると、次第にエスカレートしていき、審査書類の捏造などといった明白な不正行為がおきるようになる。その結果、どう考えても返済能力のない相手に金が貸され、必然的にデフォルトということになる。やがて焦げ付き不良債権化する時限爆弾をあちこちに埋め込んでいるようなものだ。
 金融機関がそのような動きをみせるのは、金融市場でのバブルが実体経済に波及し、実体経済にもバブルを引き起こす前兆のように私には見える。ということは、仮に今後景気が上向くことがあったとしても、それはただの泡――いつ弾けてもおかしくない、時限爆弾つきの好景気ということになる。
 以上のことから導き出される結論は、アベノミクスは当初の目的を達成できておらず、株価上昇も手放しでは喜べない、ということだ。
 かつて民主党政権は、具体的な数値目標を掲げたもののそれをまったく達成できずに、信頼を失って下野したが、安倍自民党政権の側も実態はさほど変わらない。やるといったことができていないのに、特定秘密保護法、集団的自衛権など、おおかたの有権者にとってはどうでもいいことに血道をあげている。その強引、傲慢、拙速、独善という点では、むしろ民主党政権よりもはるかに悪質だろう。民主党政権の失政を許せないという有権者は、同様に自民党政権も許すべきではない。