「 ひとり 」 を生き抜いているか
(前略)
そんなときふと耳を澄ますと、 天の方からかすかにきこえてくるのが、
人はひとりで生まれ、 ひとりで死んでいく
という声である。 「 ひとり 」 という言葉が、 重くずしんとひびくのである。
けれどもわれわれはそんな場合、
人は個人として生まれ、 個人として死んでいく
とは、いわない。 個人という言葉が口をついて出ることはまずないのだ。
考えてみればここでいう「ひとり」が万葉集の時代から現代まで、 えんえんと語りつづけられてきた 「 ひとり 」 だったということに気づく。 それにくらべれば、 西欧からの輸入語である個とか個人の歴史はせいぜいここ百年ぐらいのことだった。
人間の生と死にかかわっていわれつづけてきた 「 ひとり 」 が、 じつは人間の存在そのものに由来する言葉だった、 ということではないだろうか。
山折哲雄 『 「 ひとり 」 の哲学 』 (新潮選書) 978-4-10-603793-1
http://www.shincho-live.jp/ebook/nami/2016/11/201611_14.php
(前略)
そんなときふと耳を澄ますと、 天の方からかすかにきこえてくるのが、
人はひとりで生まれ、 ひとりで死んでいく
という声である。 「 ひとり 」 という言葉が、 重くずしんとひびくのである。
けれどもわれわれはそんな場合、
人は個人として生まれ、 個人として死んでいく
とは、いわない。 個人という言葉が口をついて出ることはまずないのだ。
考えてみればここでいう「ひとり」が万葉集の時代から現代まで、 えんえんと語りつづけられてきた 「 ひとり 」 だったということに気づく。 それにくらべれば、 西欧からの輸入語である個とか個人の歴史はせいぜいここ百年ぐらいのことだった。
人間の生と死にかかわっていわれつづけてきた 「 ひとり 」 が、 じつは人間の存在そのものに由来する言葉だった、 ということではないだろうか。
山折哲雄 『 「 ひとり 」 の哲学 』 (新潮選書) 978-4-10-603793-1
http://www.shincho-live.jp/ebook/nami/2016/11/201611_14.php