西アフリカぶるきなふぁそ親爺暮らし

2003年、50歳にて西アフリカのブルキナファソに渡りボランティア。歳月を経ていまではすっかりブルキナ親爺になりました。

中年派遣員奮闘記(その16)

2016-01-06 | 奮闘記

NO.16[マラリア感染]

村から戻った翌日いつも私より早く起きているはずのSさんが起きて来ません。きっと昨日の疲れが残っているのかと思いながら事務所の掃除をしていますと部屋からタオルケットを体に巻いて出てきました。「マラリアにかかったみたいです。」、「えっ!マラリアですか!」私は驚いて見ますと顔色も蒼白く、熱があるみたいで小刻みに震えています。

これは大変と思いとりあえず行きつけのクリニックに急いで行くことになりました。乗り合いタクシーに乗り30分程の所にそのクリニックがあり、玄関に入ると60代後半位と30歳位の女性が椅子に腰掛けてピ-ナッツを食べております。

患者さんの付き添いの人がいるのかなと思い、受付は何処かと辺りを見回してもそれらしき所は無く、友達のラミンが何かその人に話をしていますと、その女の人は奥の部屋に行きしばらくすると戻ってきてドクターは今外出中なので待ってくれ、という事でした。Sさんは相変わらず高い熱がある様でぐったりとして辛そうです。

2人の私服の女性はナースだったようで体温計を取り出して熱を測るようSさんに手渡しました。それから1時間位待っている間にいろいろな行商の人が来てはナースに物を見せては話をしたり買ったり食べたり、患者はSさん一人だけだったのですがナース達は多忙です。

突然ドクターが何処からともなく来て診療室に案内され、普通は血液検査をするのですが体温と問診の結果やはりマラリアであるということでドクターが慣れた手つきで処方箋を書きナースに渡し約5分で診察終了です。

このような経験は私も日本の病院でありました、胸の間に硬い物があるので腫瘍でも出来ていたら大変と思い、母のかかっている大学病院へ行くことにしました。受付をして外来の待合所にいくと大勢の人が待っています。2時間後やっと診察をしたもらい採血をするところに行きレントゲンを撮るというのでその所へ行くとそこにもまた何人も待っており、それが終わると再び診察室の所でしばらく待ち、最後にドクターの言葉は「来週結果が出るのでまた来てください。」10時に受付をして帰りは午後3時でした。

一週間後、犯罪者が最終判決を受ける時のような沈痛な気持ちで病院へ行き診察室の前で再び長時間待ってナースに呼ばれやっと中に入りドキドキしながらドクターの説明を聞くと、レントゲン写真を見ながら「これは肋骨の間にある軟骨です。これは誰にでもあるもので特に問題は無く、これからもお大事に」と言う事でした。

今までの心配は一瞬で吹き飛んでしまいましたが同時に何と無く今の病院の在りかたに不満を感じます、確かに検査は大切なことですが普通私のような症状でしたら問診、触診でも充分わかるはずです。検査ということで多くの時間とお金を払うのは単なる金儲けしか考えていないのかと疑いたくもなります。

話を戻しますが、ナースにドクターの処方箋にある薬を近くの薬局で買って来るように言われ早速買いに出かけました。急いで薬局で注射と抗マラリア剤と解熱剤を買って帰り渡しますと60代後半のナースがゆっくりと落ち着いたしぐさで注射器にそれぞれの薬を入れ準備をします。

動作が遅いのは慎重なのか高齢の為かは判断できませんが熱で震えている患者の方はあまり意識せずマイペースに事を運んでいます。玄関のところが待合権処置室で高齢のナースの口の中にはまだピーナッツが残っているらしく口を動かしながら注射を持つ手がブルブルと震えています。こんなことで大丈夫なのだろうかと息を飲んで見ているとアルコールで消毒をして注射針がSさんの血管の所に近づくとナースの震えがピタッと止まりました。「さすがベテランのナースは素晴らしい。」と別の意味で感心してしまいました。

処置が終わり、まずは一安心ということで事務所に戻りSさんはベッドで休んでおりますが熱が高いのかとても辛そうです。ところが翌朝も熱が下がらず再びクリニックに行くとベテランナースが昨日の夜に来いといったのにどうして来なかったのかといっており、どうやら解熱剤を夜に注射することになっていたのを聞き漏らしてしまったようでした。

彼女は処方箋のところに、またいくつかの薬を書き、買ってくるよう言い、聞くと点滴のようで私とラミンは急いで少し離れた所にある大きな薬局へタクシーで向かい、薬を買って戻るとベテランのナースは出かけているらしく、若いナースに渡すと彼女は早速点滴の準備をし始め、Sさんの腕に針を刺しましたが彼女はまだ経験が浅いと見え2,3回やり直しやっと血管の中に入りました、別の部屋のベッドで点滴をしていますが中は熱く蚊も沢山いて、もしこの中にマラリアを持った蚊がいたらまた感染してしまうのではなどと思いながら点滴が終わるのをひたすら待っておりました。

点滴が終わり、また翌日ということで事務所に戻りましたが、相変わらず熱があるらしく元気がありません。数ヶ月前にもマラリアにかかったそうでそのときは注射をして1日で熱がなくなったそうですが今回はちょっと強いようです。

翌日になり幾分熱が下がったようで顔色も大分よくなっておりました。今日も再び病院へ行きまた点滴です。やはり昨日と同じ若いナースが担当です彼女は早速準備しSさんの腕に針を刺しますがなかなか血管に入りません。数箇所やり直しているうち温厚で我慢強いSさんもとうとう悲鳴を上げ、若いナースに抗議をして点滴をはずしてしまいました。

この国でもナースを養成する学校はありますが日本のように高度の医療知識や経験を修得しているナースは少ないようです。また国唯一のワガドゥグ大学には医学部はあっても付属病院はあるのですがインターンはフランスで行い、ドクターも先進国で医学を学ぶようです。外国のほうが高度な専門医療が出来るうえ収入もよいので、この国に帰る人は少ないようです。

この国は医師1人に対しての人口が日本は543人に対して240.000人と遥かに不足しております。そのために治る病気も手遅れになることもあり、お金がないため病院に行くことが出来なくて亡くなる人がとても多いことも事実です。

3日目になってSさんも大分回復してきたようで笑顔が戻ってきました。今日は一人でクリニックに行けるということで出かけ、しばらくして帰るとまた再び若い看護婦に注射をされたらしく乱雑で非常に身に危険を感じたということでした。腕を見るとあざがたくさんあり、熱があるうえに何回も痛い思いをして本当にお気の毒なことです。


次回をお楽しみに・・・・



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