知花ときわ会

知花地域の活動と各地の情報を広く紹介し、情報共有することで地域活性化に繋げようと、このブログを開設しました。

知花グスク及びウガンヌシーを踏査する

2025年01月28日 | ★文化財
1月23日、本県考古学の第一人者である當眞嗣一氏と知花グスク及び隣接するウガンヌシーを急遽踏査する機会があった。奇しくもこの調査の日がチナマチ御願の日である事が後に知ったことである。
  特に知花祝女殿内の後方にあるウガンヌシーはチナマチ御願の際、拝むムイグチがある。同拝所は知花区内においても登った者は少なく、當眞氏の調査希望を祝女殿内関係者にお願いしたところ快諾し調査が実現した。
 調査には當眞嗣一氏、市博物館職員、自治会長、有志の方々数名で行った。ムイグチは昔から女性は登ることが出来ないため、一目見ようと同行した博物館女子職員は立ち入ることが出来ず残念がった。
*ムイグチについては、普段は立ち入ることができません。

 さて、調査は午前中行われ、知花グスクは出城の役割を担うウガンヌシーとムムントーヌシーが両サイドに配置され知花グスクを守っていると當眞氏は言う。
今回調査したウガンヌシーで道のない雑木林に立ち入ったところ知花グスク側に向かって曲輪(クルワ)=テラスが人工的に形成されいることが判明した。以前にムムントーヌシーを踏査した際も知花グスク側に川を挟んで曲輪が設けられていることもわかっている。

*グスクを土木的側面から観察すると世界遺産に登録されているグスクのように、りっぱな石垣を巡らせた石築の大規模グスクがある一方、岩石だらけの狭い台地に野面積みの石垣をめぐらす小規模なグスクなどもあり、石垣を多用するグスクだけでも様々なグスクが存在する。知花グスクもその後者に該当すると考えられる。石を使わず土を切り刻むことで障害物をつくり、他とを区別する。石垣のかわりに山の斜面を削平して平場(防御された削平地のことで、城の専門用語で曲輪という)とし、その下降斜面を形成することで城壁とする。こうしてできた土の法面のことを切岸(キリギシ)という。いずれにせよグスク普請にあたっては、攻撃軍からグスクをどう守るか、また敵を攻撃するためにどうすればよいか、あるいは曲輪をどのように配置してその構成をどうするか、石垣の塁線をどうするか等々築城プランである縄張についていろいろな工夫がなされている。
この曲輪は県内のグスクにも取り入れられており、當眞氏が現場で解説を行った。縄張りとは城用語で城の設計のことで平面プランのことである。
グスク研究には、グスクの縄張り調査が重要である。住宅の間取りからその家のライフスタイルがわかるように、グスクの縄張からそのグスクの性格や機能がよく理解できる。発掘調査や表面調査などいろいろな方法でグスク全体の平面構成を把握することを縄張調査と呼んでいる。その成果は「縄張図」というもので表現されることになる。(下記資料参照)
知花グスクでも平場(曲輪という)が下記図のように設けられていることがわかる。 人工の急斜面(切岸という)などが見られる。このように曲輪の配置や役割、石垣の張り巡らせ方、出入り口の向きや形などを一つ一つ読み解いて、グスクを造った人々の考え方に想いをはせ、グスクの防御性を復元・検討する醍醐味は、縄張調査ならではのものである。

<参考資料:琉球の築土構木 (一社)沖縄しまたて協会/北と南の海城(ウミグスク) その縄張構造を見る~土木側面から見た琉球列島のグスク~グスク研究所 主宰 當眞嗣一より P235・P236>

<図:當眞嗣一氏提供>
<知花グスク周辺地形図>
知花グスクでの調査風景

ウガンヌシーのチナマチ御願拝所の一つであるムイグチ

参考資料:
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