NHK芸術劇場の舞台中継『その男』を観ました。
ストーリーと感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。
【原作】
池波正太郎
【脚本】
鈴木聡
【演出】
ラサール石井
【音楽】
上妻宏光
【出演】
上川隆也(杉虎之助)、内山理名(礼子)、キムラ緑子(秀)、池田成志(中村半次郎)、波岡一喜(伊庭八郎)、六平直政(山口金五郎)、平幹二朗(池本茂兵衛)ほか
【公演】
2009年4月22日 東京芸術劇場 中ホール
【ストーリー】
主人公・杉虎之助は微禄ながら旗本の嫡男。生みの母はお産で亡くなり、継母には疎まれ、我が身を儚んでわずか十三歳の時、大川に身投げをする。この時に謎の剣士・池本茂兵衛に助けられ、父親とも剣の師ともいえる間柄になる。
その後、十九歳になった虎之助は、叔父や友人との再会を果たし、謎の女・秀や後に妻になる隠密の礼子と出会う。
幕末の風雲急をつげる頃、茂兵衛と礼子は薩摩の手の者によって切られてしまう。
【感想】
幕末、明治、大正、昭和とひたむきに生き続けた虎之助。老いた名もなき男の胸に去来するものは何だったのだろう…。
池本茂兵衛の言葉が胸に沁みた。
「人は獣。人として、足を地につけて生きてゆけ」
「生きるということは、川の流れのようなもの。飛び込むもよし、眺めるもよし」
上川隆也のきれのある美しい殺陣、笑いをとる場面でのお茶目なかわいらしさ、ストイックな純粋さが、この舞台にぴったりとはまっていたと思う。他にも、池田成志の色気と存在感、キムラ緑子の艶っぽさ、平幹二朗の比類なき重厚さと存在感など。とても見ごたえのある舞台だった。
ただ、放送時間の都合で割愛部分が多く、観ていて舞台の流れが途切れてしまうのが残念だった。
【余談】
『鬼平犯科帳』や『剣客商売』などの時代小説で名高い、池波正太郎の初舞台化作品。