ホワイエでコーヒーを飲みながら♪

観劇の感想もろもろな備忘録。
「つれづれな日々のつぶやき♪」からお引越し中。

『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』ストーリーと感想

2020-09-19 15:41:54 | テレビ
WOWOWライブで2020.9.17(木)放送の舞台 地球ゴージャス25周年祝祭公演『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』を録画したものを観ました。
感想を備忘録として書きます。

※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【番組の詳細】
岸谷五朗、寺脇康文が主宰する演劇ユニット「地球ゴージャス」。舞台初主演の新田真剣佑を迎え、結成25周年を祝し、名作が蘇る。


【ストーリー】
海の神とされるシャチに運ばれて、ひとりの青年(新田真剣佑)が小さな島の浜辺に打ち上げられた。その島には笑顔と踊りの民族であるタバラ族が暮らしており、記憶を失ったその青年は、タバラ族の女ステラ(笹本玲奈)に優しく介抱され、シャチと名づけられる。
しかし、シャチと一緒に流れ着いたもうひとりの倭人トド(岸谷五朗)を、タバラ族の勇者であるカイジ(松本利夫)とザージャ(寺脇康文)はなかなか受け入れることができない。やがて、言葉も慣習も違う倭人とタバラ族の間に、次第にかすかな信頼関係が生まれ始める。
しかし、明治新政府軍と蝦夷共和国建設を目指した旧幕府軍との争いが始まり、タバラ族は追われ、密かに大切な作物を育てていた「星の大地」は無残にも踏みにじられていく。そして、その争いの渦に飛び込んだシャチは失っていた記憶を取り戻すのだが…。
 

【感想】
今年の6月に無観客公演を収録したもので、観客の反応がゼロなので悲しいかな違和感が否めない。コロナの影響で東京公演の一部と大阪公演は全中止となってしまった舞台だ。作品には何の罪もないのだが…。

地球ゴージャス25周年祝祭公演と銘打っているミュージカルなので、歌、ダンスと盛りだくさんでエンタメ色がとても強い。観ていて華やかさを感じる。

美術は転換が多く、盆も使用され、最近観た舞台の中では、一番華やかな印象を受けた。

ミュージカルなので歌唱シーンが多いのは当たり前なのだが、主宰のふたりがどうしても他のキャスト(アンサンブルも含めて)から浮いて観えてしまうのが残念だった。特に、寺脇康文の歌唱が…。声に艶と伸びがなく、音程が外れるので、聴いていてもにょもにょしてしまう。
正直、無理に歌わなくてもよかったのではないだろうか…? 何事にも向き不向きはあると思うし。好きな俳優だけに複雑な気持ちになってしまった。

前半、ちょこちょこと笑いをとるための台詞が若干、すべり気味だったのも観ていて辛かった。
主宰のふたりがアドリブとおぼしき掛け合いは、軽快で漫才を観ているようでおもしろかった。こういうのはおもしろいのに、他のキャストとのやり取りで笑いがすべり気味なのはなんでだろう?

全体に尺が長過ぎるような気がした。もっとテンポよく、カットしていい場面もあったのではないだろうか? 中盤くらいから中弛みしてきていたし。

主役の新田真剣佑は、これが初舞台とは思えない堂々たる主役ぶりで、容姿も美しく、体も軽く動き、殺陣もキレキレ、歌も上手かった。とても華のある俳優だと思う。
長老役の森公美子の存在感たるやすごい! 他の誰も彼女の代わりはできないだろうと思われる。歌唱力はすごいし。

少数民族タバラは歴史に消えていった数多の少数民族の象徴であり、反戦の象徴でもある。“武器を持つ者”と“武器を持たない者”は“笑顔を持たない者”と“笑顔を持つ者”でもある。
“抑止”と“正義”の名の元に行われる戦争は、どう言い繕ってもそれは殺戮にほかならない。人類はいつまでこれを続けるのだろうと暗澹たる気持ちにさえなる。
ラスト、ステラが産み落とした赤ん坊を胸に抱き、「家族を作るの。。」と未来への希望を口にするのが胸にくる。ささやかな救いと希望を感じた。
エンタメ色が強いが、とても考えさせられる作品。


【余談】
主宰のふたりがアドリブとおぼしき掛け合いはおもしろかったのだが、あまりにもおもしろかったのか、他のキャストが笑いを必死に堪えているのがわかった。新田真剣佑は我慢できずに、とうとう後ろを向いてしまっていたし。


【リンク】



『Q』ストーリーと感想

2020-09-13 17:28:09 | テレビ
WOWOWライブで2020.8.15(土)放送の舞台 NODA・MAP第23回公演『Q』:A Night At The Kabuki を録画したものを観ました。
感想を備忘録として書きます。

※ネタばれがありますのでご注意ください。
※敬称は省略させていただきます。





【番組の詳細】
空前絶後の話題作。野田秀樹とクイーンの珠玉のコラボレーションと、松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳ら豪華キャストで贈る、疾走感あふれる感動の舞台。


【ストーリー】
劇作家・野田秀樹が世界的ロックバンド、クイーンの名盤『オペラ座の夜』の世界観をもとに作り出した作品。シェイクスピアの不朽の名作『ロミオとジュリエット』をベースに、『平家物語』と第二次大戦後のシベリア抑留も絡ませて、もしロミオとジュリエットが生きていたらという設定で描かれた戯曲だ。
過去と現在のエピソードが次々と入れ替わり、“2人のジュリエット(予告編:広瀬すず、本編:松たか子)”と“2人のロミオ(予告編:志尊淳、本編:上川隆也)”が登場する。時を越えてすれ違いながらも、愛を貫く2人のジュリエットとロミオの物語。


【感想】
美術はとてもシンプル。野田作品はいつもシンプルで色も少ないし、布使いが多い印象。今回も色は白、グレーが基調。源氏側は白、平家側は黒の壁、足掛かりになる突起物がいくつか付いている。
壁にはプロジェクションマッピングで、ジュリエットとロミオが出会った5日間の秒数がカウントダウンされている。
キャスター付きの白いパイプベッドが何回も登場する。そういえば『エッグ』にも登場していたような…?
真っ白な大布をふんだんに使用した演出がそこここにあり、この大布をさばくにはアンサンブルの方々は大変だったろうと思う。観ている側としては美しいシーンなのだが…。

小道具の手紙、紙飛行機も白。純粋無垢な象徴のよう。

音楽はクイーンの名曲が全編に流れている。ちょっと意外な組み合わせだが、しっくりと合う。不思議。。

今と昔をジュリエット(ジュリエ)とロミオ(ローミオ)が“予告編”、“本編”、“おもかげ”として入り乱れて行ったり来たりする。
愛と憎しみ、生と死、戦争と平和、名を持つ者と名もなき者。全ては対比しつつ表裏一体、同時に存在し物語を紡いでいく。
ローミオが飲み干す毒薬は「孤独な猛毒」。人にとって「孤独」は「猛毒」なのだ。「孤独」は自分も他者も害してしまいかねない。怖いな。。

広瀬すずと志尊淳の初々しいカップルは、本当に美しくてジュリエとローミオとして説得力があり眼福♡
役者は達者な方々ばかりでとてもよかったし、広瀬すずは初舞台とは思えないほど存在感があった。

第27回読売演劇大賞、最優秀作品賞を受賞した作品とのこと。なるほど~と納得の大作だった。理屈はともかく、疾走感がありとてもおもしろかった。


【余談】
本編終了後のアフタートークでいろいろな裏話が聞けて楽しかった。毎回稽古を始める前にゲームをやるのだそうで、上川隆也は鬼ごっこが苦手なのが今更わかったそうだ。可愛いな~♪

解散や休止、退団も含めて、夢の遊眠社、劇団☆新感線、演劇集団キャラメルボックス、大人計画、サモ・アリナンズと豪華な小劇場出身者が揃い踏み♡ 小劇場系好きとしては嬉しい~♪


【リンク】




『劇場の灯を消すな!松尾スズキプレゼンツ アクリル演劇祭』ストーリーと感想

2020-09-06 10:08:05 | テレビ
WOWOWライブで2020.7.5(日)放送の舞台『劇場の灯を消すな!松尾スズキプレゼンツ アクリル演劇祭』を録画したものを観ました。
感想を備忘録として書きます。

※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【番組の詳細】
コロナ禍の劇場の灯を消すな!WOWOWが劇場と演劇人とタッグを組んで展開するオリジナル番組。第一弾は渋谷Bunkamuraシアターコクーン!


【ストーリー】
MCの中井美穂、皆川猿時 (大人計画)が舞台に立ち進行する。大人計画の劇団員に加え、松尾スズキ作品に出演したことのある俳優たちが登壇して、歌やダンス、朗読を繰り広げる。

*ミュージカル『キレイ』 から4曲。歌唱は①生田絵梨花、麻生久美子、②小池徹平、神木隆之介、阿部サダヲ、③秋山菜津子、村杉蝉之介、④多部未華子。
*舞台裏紹介。麻生久美子、伊勢志摩。
*『THE 灯市』荒川良々ほか。
*『キャリオカ』ダンス。
*SP対談 MC中井美穂、松尾スズキと根本宗子。
*書き下ろし演劇『ゾンビVSマクベス夫人』。阿部サダヲ、池津祥子。
*音楽劇『もっと泣いてよフラッパー』から1曲。歌唱は松たか子。
*朗読『泥と雪』 井上ひさし『十二人の手紙』より。大竹しのぶ、中村勘九郎。


【感想】
2019年9月にシアターコクーンの芸術監督に就任した松尾スズキが、今できる劇場の在り方を模索した舞台。無観客でMCの中井美穂、皆川猿時 (大人計画)が進行するのだが、皆川猿時の台詞は台本なのかアドリブなのかよくわからない。中井美穂が苦笑しているし。

舞台は美術らしいものは見当たらない素舞台。コロナ禍を逆手にとった?ような「マツノボクス」が登場。高さ2m以上と思われるアクリルのボックス(内側に2個のハンドル付き)に俳優が入り演じるので、感染リスクゼロ!ということらしい。
客席のSE卓に松尾自身が座り、SEの操作をして拍手の音出しをしていた。時々、皆川に「松尾さ~ん!押して~!」と催促されていたり。

オムニバスの演劇イベントを観ているような印象。特に『キレイ』の歌唱は、ケガレやミソギ役の感情が伝わってきて、ぐっとくるものがあった。

『THE 灯市』の殺陣は大変だったと思う。狭いアクリルボックス内で敵と戦っているように観せなければならないし。荒川は頭から顔まで汗びっしょりだった。

『ゾンビVSマクベス夫人』はシェークスピアの『マクベス』の稽古を、閉鎖された劇場で演出家の夫と女優の妻が二人っきりで稽古する。演出家と女優にとって、ある意味至福の時間だ。
実は妻はゾンビウイルスに感染していてゾンビになっていた。夫は妻の変化を、役に入りきった素晴らしい演技だと納得しようとする。笑っているうちに、いつの間にか泣けてしまう。ラスト、何故か夫だけは感染を免れ、ワクチンの製造に貢献することになる。
短い芝居だがとてもいいなぁ。。と思った。

『泥と雪』は郷愁を誘う心温まる初恋物語かと思えば、とてつもなく怖い話だった。妻を離婚させたい愛人が巧妙な策略を練り、お金で若い男に嘘の手紙を書かせ、妻の心を開かせて離婚届けに記名捺印させてしまうのだ。
『アメリ』にも似たような話はあったが、あれは純粋な善意から出た行動でハッピーエンドだったし。これは悪意の塊だから…。井上ひさしの描く人間は描け過ぎていて怖くなる。
妻役の大竹しのぶは舞台に居るだけで存在感がすごく、表情と台詞の感じに観いってしまう。一人で全てをもっていってしまう。『ガラスの仮面』の初期に北島マヤのそんなシーンがあったな~。


【余談】
松尾スズキ作品といえば、『キレイ』、『マシーン日記』、『もっと泣いてよフラッパー』もWOWOWで観たのに、感想はアップしていなかった模様。画像だけはフォトチャンネルにアップしてあったけど。
『キレイ』と『マシーン日記』はよかったな。。上手く表現できないけど、心がざわついて、それでいてぐっとくるものがあったから。
そんな気持ちになりたくて、観劇を続けているのかもしれないな~。


【リンク】