ホワイエでコーヒーを飲みながら♪

観劇の感想もろもろな備忘録。
「つれづれな日々のつぶやき♪」からお引越し中。

『船上のピクニック』ストーリーと感想

2010-03-13 10:45:46 | テレビ
NHKミッドナイトステージ館『船上のピクニック』を観ました。
ストーリーと感想を備忘録として書きます。

※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【作】
岩松了


【演出】
蜷川幸雄


【出演】
公募によるアマチュアの劇団・さいたまゴールド・シアター


【公演】
2007年6月 彩の国さいたま芸術劇場 小ホール


【ストーリー】
とあるホテルで大々的にリストラが行われ、比較的年齢層の高い従業員たちがその対象になった。会長の息子の尽力により、海外のホテルで全員再雇用されることになり、そのホテルへ移動する船上で繰り広げられる従業員たちの人間模様。
やがて、言葉の通じない難民たちを救出したことから何かが壊れていく…。


【感想】
船の甲板のセットを組んで周りを囲むように客席があり、さぞかしこの場で観ていたなら、臨場感あふれる舞台を堪能できたのではないかと思った。

脚本を担当した岩松了はさりげなさを装いながら、人間をこんなふうに見ているのか…と怖くなる話に仕上げていた。なんでもなさそうなのにとても怖い。それはわかりやすい怖さではなく、誰もが持っていて隠しているもの、心の隙間。そこに焦点があたっているからではないだろうか。
「桑江」という全身黒ずくめの女性の発する言葉が、意味深でとても怖い。一見何を言いたいのかわからないし、ただの嘘つきな変わり者に見えるのだが、誰もが気づかない、気づきたくないことに、すっと隙間を縫うように入り込んでいく。この様がとても怖い。

出演の役者には、55歳以上のアマチュアの方を公募して出演させるという無謀?な試みだったわけだが、これが意外なことにとてもよかった。技術的には決して上手くはないと思う。訓練を受けた役者のようではないし、台詞を噛んだりとちったりもする。
でも、そんなことは些末に感じて全く気にならないほど、彼らは舞台で確実に役の人物としてその場に存在していた。この役者たちの有り様に理屈抜きに感動した。
技量や経験などでは醸し出せない存在感とリアルさ。これこそが、この舞台を成功させていたのだと思う。

最後のシーンで静かに音楽が流れると、涙が何故かわからないのに流れてきた。またこんな感動を与えていただきたい…。


【余談】
演出の蜷川幸雄は、70歳を超えてもなお「疾走するじじい」を自称されるだけあって、決して枯れることなく走り続ける姿に本当に脱帽する。
「彩の国さいたま芸術劇場」は以前に、『身毒丸 復活』を観に行ったことがある。与野本町の駅から直線コースとはいえ、かなり歩かないといけないことがネックだがよい劇場だと思う。

元「夢の遊眠社」の上杉祥三が、何かに書いてらした言葉をふと思い出した。うろ覚えなのだが、「観客は芝居ではなく、役者そのものを観ている。役者を通してその魂を観ているのだ」。
今回の舞台を観て、この言葉の持つ意味が少しわかったような気がした。





『ガス人間第一号』ストーリーと感想

2010-03-01 09:54:36 | テレビ
NHK 劇場への招待 『ガス人間第一号』を観ました。
ストーリーと感想を備忘録として書きます。

※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【原作映画脚本】
木村武(「ガス人間第一号」1960年東宝映画)


【脚色・演出】
後藤ひろひと


【出演】
後藤ひろひと(プロデューサー)、水野久美(久子)、中山エミリ(甲野京子)、伊原剛志(岡本賢治)、渡邊絋平(田端)、山里亮太(田宮)、中村中(藤田千代)、水野透(編集長)、悠木千帆(編集員)、高橋一生(橋本)、三谷昇(老人)

【公演】
2009年10月 日比谷シアタークリエ


【ストーリー】
とあるアパートで異臭騒ぎが起こり、そこの住人であるミュージシャンが死亡していた。岡本と田端の両刑事が捜査にあたるのだが、部屋は密室、犯人の痕跡も見つからない。鑑識の田宮の調査により、部屋からはケトンという物質が検出されたのだが、通常では考えられない量だった。
ますます、謎だらけの事件となるのだが、これはまだ連続殺人事件の幕開けにすぎなかった。
やがて捜査上に10年前に、突然音楽業界から姿を消した藤田千代という美しいシンガーが浮かぶ。そして、彼女を崇拝するある青年の姿も。
やがて悲しい結末へと話は進んでいく…。


【感想】
後藤ひろひとといえばAGAPEシリーズでお馴染みだが、今回も随所に小ネタは満載!
プロデューサー公演にありがちな、役者がそれぞればらけたまとまりが悪い感は否めず。映像畑の方が多かったので、TVドラマを観ているような錯覚に陥ってしまうときも。
全体のまとまりはいまいちだったと思うのだが、個々の役者には光るものが感じられ、これが劇団公演のような一体感が醸し出せればな~と。
とても悲しく、哀しく、そして怖いお話なのだが、う~んやっぱりなんていうのか全体に散漫な感は否めなくて。折角の脚本がもったいないように感じた。
できれば、舞台畑の役者たちの別バージョンを観てみたい!橋本役はもちろん高橋一生で♪

心に沁みた台詞は、
藤田千代「何のために歌っていいかわからない」
橋本「ぼくのために歌ってください!」
劇中歌、中村中作詞作曲の歌「焼心者」も心に沁みた。

些細なことだが、岡本刑事役の伊原剛志は二回ほど噛んでいた。意外によかったのが中山エミリ。自然体で舞台になじんでいて、違和感がなかった。ベテランの水野久美との絡みも自然だったし。
南海キャンディーズの山ちゃんこと山里亮太の鑑識役は、はまり役で笑わせてもらった。本当にこんな感じなのかも‥?と、思わせてくれる変っぷり。
そして、なんと言っても、藤田千代役の中村中の凛とした姿と美しい歌声はこの役にぴったり♪
橋本役の高橋一生の苦悩する姿には心を打つものがあった。


【余談】
個人的に高橋一生は、テレ東の深夜ドラマ『怪奇大家族』のへたれなフリーターのお兄ちゃん役もかなり好き♪