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観劇の感想もろもろな備忘録。
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『あの大鴉、さえも』ストーリーと感想

2016-10-07 10:19:08 | 劇場・多目的ホール
『あの大鴉、さえも』を東京芸術劇場シアターイーストにて、10月6日(木)19:00開演を観劇しました。

ストーリーと感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【作】竹内銃一郎
【上演台本】ノゾエ征爾
【演出】小野寺修二
【美術】二村周作
【照明】吉本有輝子
【音響】池田野歩
【衣装】駒井友美子
【振付】崎山莉奈
【ヘアメイク】増田佳代
【舞台監督】橋本加奈子
【キャスト】小林聡美、片桐はいり、藤田桃子


【ストーリー】
男が三人がかりで巨大で重いガラスを運んでいる。どうやら彼らは頼まれ仕事で、この巨大なガラスを「山田さん」宅に運ぶことになっているらしい。
親方から聞いていた「山田さん」宅がなかなか見つからず、ガラスを持ったままうろうろする三人。ようやく「ここだ!」と見つけたお宅には何故か入り口が見当たらない。
彼らはそのときどうするのか、、? そして、その巨大なガラスの行方は、、?


【感想】
客入れの楽曲はタンゴ。
劇中に使用された楽曲は、パーカッションを効かせた民族音楽風、クラシックのピアノ曲など。
美術はシンプルでスタイリッシュ。
後方に白い壁がふたつ斜めに傾いてあり、開いた本のように観える。ふたつの壁の間は隙間があり、ときにはガラスを入れたり出したりする。
白い壁にはぴかぴかに光る真鍮の蛇口が2個、ドアノブが1個付いている。1個の蛇口の下にはブリキのバケツが置いてあり、時折、「ぴちょん‥ぴちょん‥」と音をたてて雫が垂れている。
床には糸車が転がっており、それ自体はシルバーに光る自転車の車輪でできている。
上手側に椅子が1脚。
下手側には濃い色目の机と椅子、黒のスタンドライト、机上にはグラスが1個、チェス盤、スライドプロジェクターが置いてある。

暗転は最後のほうに1回。
照明がある方向からあたると、白い壁がスクリーンのようになり男たちのシルエットを浮かびあがらせる。
スライドプロジェクターも実際に使用され、白い壁に「サミュエル・ベケット ゴドーを待ちながら」、「三条」などと映し出される。

衣装は三人三様だがモノクロで統一されており、トップスが白ならボトムスが黒、トップスが黒ならボトムスが白、ソックスと靴だけは三人とも黒。

美術、衣装、小道具のチェスなど、舞台全体が白と黒のイメージ。
巨大なガラスは黒い板、白いロープ、エアー(存在しない)で表現されていた。ちなみに設定は高さ180cm、幅120cm、重さ2tとのこと。

延々と大きなガラスを持ってうろうろ‥疲れてぶつぶつ‥するだけなのに、中だるみもせず、笑いもとって見飽きなかった。片桐はいりがいじられる役割だったのか、やたらに顔ネタで突っこまれていたけど。
サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を思わせるシュールで不条理な舞台を、男優ではなく女優が演じるのが軽快でおもしろい。おそらく、本当の男性ではないので生々しさが消えるからだと思う。
もともと、男が三人がかりで汗だくになって巨大なガラスを運ぶ体(エアー)で芝居をするとても演劇的な作品。それをさらに、パントマイム?ダンス?という形で身体表現をしていて興味深く観た。
人の体ってなんて美しくおもしろいのだろう‥としみじみ感じた。
女優陣はみなさん存在感があり上手くて、芸術的で良質な舞台を観たなぁ。。という感想。
だけど、演じる女優たちは大変だったんだろうなぁ。。たったの三人しか出てこないし。

カーテンコールは2回。藤田桃子の笑顔が印象的。


【余談】
昔々、NHKでこの作品を観た覚えがありまして、全部放送されていたのかダイジェスト版だったのかも、もう定かではないのだけど。
ラストに大きなガラスがガシャーン!と割れるくだりが印象的だったなぁ。。と思い出した。
大学の頃、違う学部の演劇同好会のメンバーがこの作品を学祭公演でやることになり、演出担当の子が「芝居になんねぇ~!」って、稽古が行き詰まって飲み会で半泣きだったのも思い出した。学祭公演、成功したのかな~?


【リンク】