WOWOWライブで2020.7.14(火)放送の舞台『唐版 風の又三郎』を録画したものを観ました。
感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。
【番組の詳細】
唐十郎の傑作戯曲に窪田正孝、柚希礼音がダブル主演。唐十郎と蜷川幸雄に師事した金守珍が演出。北村有起哉、丸山智己、江口のりこ、風間杜夫ら豪華キャストが集結。
【ストーリー】
東京の下町で二人の男女が出会う。精神病院から逃げてきた青年「織部」と宇都宮から流れてきたホステスの「エリカ」。
二人はこの物語の中では恋人同士ですらなく、ただ、『風の又三郎』のイメージを介して結びつくもろい関係。
汚濁した世間で生きていくことができずに病院に収容され、それでも、自分を連れ去る風の少年に憧れる織部は、その面影をエリカの中に見い出す。エリカは自衛隊の練習機を乗り逃げした恋人を探す道連れとして、この純真な青年を利用する。探し当てた恋人はすでにこの世の人ではなく・・・・。
ガラスのような精神を抱え、傷つきながらもひたすらに、自らの「風」である女を守ろうとする青年と、いまわしい血の記憶に翻弄される女との、恋よりも切ない物語。
汚濁した世間で生きていくことができずに病院に収容され、それでも、自分を連れ去る風の少年に憧れる織部は、その面影をエリカの中に見い出す。エリカは自衛隊の練習機を乗り逃げした恋人を探す道連れとして、この純真な青年を利用する。探し当てた恋人はすでにこの世の人ではなく・・・・。
ガラスのような精神を抱え、傷つきながらもひたすらに、自らの「風」である女を守ろうとする青年と、いまわしい血の記憶に翻弄される女との、恋よりも切ない物語。
【感想】
美術はシンプル。冒頭から中盤まで煉瓦造りの洋館がバックに建つ。「大日本帝国探偵社」の看板が掲げられている。上部に菊花文様のステンドグラスがはまり、後光が差すように光が注がれる。
冒頭、バトンにたくさんの風鈴が吊り下げられて風に揺れている。押井守監督『ビューティフル・ドリーマー』のワンシーンを思い出した。
その後、盆が回転し転換、教壇と黒板、木の椅子が現れ、また転換、石造りの陸橋や幾つもの古ぼけた電話ボックスが現れる。
衣装は幻想的な少女を描く、イラストレーターの宇野亜喜良が担当しているからか、エリカのスタジャンは自身のイラストが描かれていた。素敵なスタジャン♡ 織部のポケットがたくさんついた白いAラインコートも素敵♡
音楽劇とまではいかないかもしれないが、歌も多い。エリカ役の柚希礼音の伸びやかな歌声、赤い下着姿のダンスシーンでは、すっ!と苦もなく上がる足さばきが素晴らしい。
笑いをとるための小芝居が多い。教授役の風間杜夫の顔に噛み砕いたソーセージを吹きかけたり、乱腐役の六平直政と教授役の風間杜夫がキスをしたり。
「耳」「飛行機のエンジン音」「腐る」「肉」「血」が幾度となく出てくる。唐作品の言葉はモチーフとなって繰り返され、別の言葉と意味を与えられ、また戻ってくる。
歌舞伎の『小栗判官』とシェイクスピアの『ベニスの商人』が物語に絡んで、迷宮に更に迷い込んだ気分になる。エリカが1ポンドの肉を食らうシーンは特にグロテスク。
精神病院から抜け出した織部は、触れただけで壊れそうなガラスの精神の持ち主。純粋無垢な少年のようだ。窪田正孝が全身全霊で演じていて胸を打ち、涙が出てくる。何故だかよくわからないのに…。
エリカはそんな織部を自分のために利用しようと近づくのに、次第に彼を守ろうと姉のような、母親のような、恋人のような存在になっていく。この関係性を絆というのだろうか…。
紆余曲折あり、エリカを巡って夜の男と織部は決闘し、刺されて息絶える。そして、また冒頭のシーンへ戻っていく。織部は岩波文庫の『風の又三郎』を携え、彼の「風の又三郎」を探す。エリカは女性だが、彼の「風の又三郎」として出会う。
ラスト、織部とエリカは棺桶の飛行機、スリッパの翼をかって空を駆ける。哀しいのに美しい、胸が熱くなるシーン。
迷宮を彷徨いながら、なにかを探し続けているような感覚がずっと続く、グロテスクなのに哀しくも美しい作品。
放送ではなく劇場で直に観たかったな。。
【余談】
突然、ドアを開けて夜の男が出てきて鶏の首を絞め、客席に放り投げた。あの後、受け取ってしまった観客の方は鶏をどうされたのだろう?と思っていたら、その後、登場した乱腐役の六平直政が拾った観客に更に絡み、鶏を回収していた。観客の方、お疲れさまでした。
客席いじりがある舞台は、それに運悪く?当たってしまうと大変~。経験上、最前列、通路付近は危ない…。
六平直政といえば、頭頂部の造形は女性器を模しているそうな。本人が舞台上でカミングアウトしていたし。「今日はWOWOWの録画なんだけど…。自分で「やる!」と言ったから。アップにならないから…。」みたいなよくわからない言い訳?を言っていた。
確かに、それらしい造形に観えたけど。頭頂部のアップはなかったと思う。
更に、六平直政といえば、教授役の風間杜夫にキスするシーンで本当に舌を入れてきたらしく、舞台上で風間杜夫に「てめぇ!六平!舌入れたな!」と、逆ギレされていたし。やらかしたいのね、いろいろと。
【リンク】