ノアの小窓から

日々の思いを祈りとともに語りたい

ちょっと見て下さい

2014年10月23日 | 日記





          街を歩いていると、不意に、声を掛けられました。

         「ねえ。ちょっと見てください」
          同じ年配の、ごく穏やかな雰囲気の女性です。
          人懐っこく笑って、下からすくうような視線で語りかけてくるのです。
          えーっと、どこのお知り合いだったっけ。
          と、考えるまもなく、

          「見て下さい。あたしの靴」と、足元を差しています。
          「右と左と別々の靴を履いてきてしまったの」
          私が見下ろすと、「ね、違うでしょ」
           同じようなキャメルのローヒールのパンプスです。

          よく見ると、一方は細いリボンがついて、もう片方はすっきりとなにもなし。
          「似てるから、気がつかなかったの。」
          「ありますよね。私もソックスなんかでやったことあります」
          「今、気がついたんですよ。おかしくて」
          「でも、言われないと気がつきませんよ」
          「おかしくって。あたしって、なんでしょう」
          「よくありますよね」
          「笑っちゃうでしょう」
          「ええ、でも、目立ちませんよ」



          彼女を後にして、三分後――私も相づちが下手だなあと反省。

          「おかしいですね! ハハハ。」と言ってあげればよかった?

          「買いなさいって、しるしじゃないですか。そこに靴屋さんがありますよ。ハハハ」

          せっかく、「見て下さい」と言われたのに。わざわざ、見て下さいと言われたのに。
          

          
          それとも、彼女の期待は別のところにあったのかしら。