一言で言うと、同じマイケル・ルイスが書いた「
マネー・ボール」とマルコム・グラッドウェルの「
天才! 成功する人々の法則」を合わせて2で割ったケーススタディをホームドラマに仕立てたような本だった。いや、これはけなしているわけではなく、まさにこういう内容だったということを言ったまでで、ちなみにノンフィクションです。
前掲の3冊の原題を見てみると、もっとわかりやすいかもしれない。
「The Blind Side: Evolution of a Game」
「Moneyball: The Art of Winning an Unfair Game」
「Outliers: The Story of Success」
どの本も無知や偏見、既得権益側の打算、社会システムの不備によって、いかに個人やその可能性が潰されているかを統計的、また実証的に示している。
さて、「ブラインド・サイド」はアメリカン・フットボールを題材にしているが、アメフトに詳しくなくとも、「だいたいこんなルール」ぐらいの人でも十分楽しめる。率直に言って、主人公のマイケル・オアーは“正真正銘のシンデレラ・マン”なので、感動の物語という感じではないし、「マネー・ボール」ほどスポーツの新しい見方を提供してくれるわけでもない。筆致も結構ドライで軽い感じで、これは著者のスタイルというだけではなく、ストーリーとその渦中にいる主人公のキャラクターが反映されたものだ。もっとも、マルコム・グラッドウェルが書いたら多分もっと“熱い”本になると思う。
で、この本で一番印象に残ったのは、「この世にこんな化け物がいたのか」ということ。主人公に限らず、NFLでガッツンガッツンぶつかっている連中は、サイズとスピード両方桁外れである。
ああ、やっぱりそれしか思い浮かばないな。つまり上記の3冊どれもまだ読んだことがない方は、「ブラインド・サイド」をまず読んで、それからスポーツの見方について興味が強かった方は「マネー・ボール」を先に、人間社会が抱える/抱え続けてきた問題について深く知りたい方はまず「天才! 成功する人々の法則」を読むといいでしょう。