大変ご無沙汰してしまいました。
投稿ペースが格段に落ちてしまって申し訳ないです。
今日は以前から書こうと思っていたことの一つ、
「宿曜占星術の27宿とインド占星術の27宿」を取り上げたいと思います。
宿曜占星術とは密教占星術などともいわれますが、大雑把に言えば、
今から1200年ほど前に、インドから中国を経て日本に輸入された占星術の一種です。
宿曜経という経典がその起こりだとされています。
27宿というのは、月や惑星の軌道を27の領域に分けたもののことですが、
それを旧暦の日付に落とし込んで月宿表として簡略化したものが、
日本で長く使われてきている宿曜の27宿だといってよいかと思います。
今は旧暦そのものが一般的ではないので、昨今出版されている宿曜の本は、
あらかじめ旧暦を新暦に変換したうえで表繰りするようになっています。
楽な半面、読者としては原理がわからないのが難点ですね。
ところで、中国にしてもインドにしても28の領域に分ける考え方もあり、
それはそれで意義や用途があるのですが、
領域の分け方や考え方の違いを書き出すと込み入ってしまうので、
今はひとまず27宿に限定して話を進めます。
月の27宿に関して比較を行うべく、1年分の表を作りました。
(2019年7月~2020年6月。日本時間)
※PDFで見たい方はこちらで。
※2020年1月の月相計算をミスってたのを修正しました。
「27宿」とあるのが、旧暦日に基づく宿曜の27宿で、
「27 NAK」とあるのが、月の軌道計算に基づくインド占星術の27宿です。
(インド占星術の27宿をナクシャトラ <Nakshatra> と呼びます)
前者は旧暦日の切り替わりで宿も一緒に変わりますが、
後者は時分まで考慮したうえで宿の切り替わりを判断します。
そのため、「27 NAK」には切り替わり時間を示す数字を入れてあります。
例えば2019年の7/1の「12.觜」は、「日本時間の12時台に觜宿に入る」の意味です。
(実際には何時何分まで計算していますが、
後述するアヤナムシャの問題もあるため、表示は時間単位に止めています)
また、「27 NAK」において、
一日の中に一つの宿がまるまる含まれてしまうことがあります。
正確に書けば、その日の中には前後合わせて3宿が含まれるのですが、
一日のごく初めの時間に当たる宿は省略し、
見かけ上、宿の名が連続するように2つだけ記載しています。
一方で時間表記がなく、単に宿の名だけが書かれた日もあります。
それは、その日全体が一つの宿に包含されているという意味です。
(前日の終わり間際に宿が切り替わり、当日をまたいで、翌日の初めまで続く)。
なお、各ナクシャトラと中国の星宿は以下のように対応付けています。
(Pはプールヴァ、Uはウッタラ)
アシュビニー:婁宿、バラニー:胃宿、クリッティカー:昴宿
ローヒニー:畢宿、ムリガシラー:觜宿、アールドラー:参宿
プナルヴァス:井宿、プシュヤ:鬼宿、アーシュレーシャー:柳宿
マガー:星宿、P・パルグニー:張宿、U・パルグニー:翼宿
ハスタ:軫宿、チトラー:角宿、スヴァーティ:亢宿
ヴィシャーカー:氐宿、アヌラーダ―:房宿、ジェースタ:心宿
ムーラ:尾宿、P・アーシャダー:箕宿、U・アーシャダー:斗宿
(アビジット:牛宿――28宿として使う場合にみる)
シュラヴァナ:女宿、ダニシュター:虚宿、シャタビシャー:危宿
P・バードラパダ:室宿、U・バードラパダ:壁宿、レーヴァティ:奎宿
ちなみに、ナクシャトラを求めるにはアヤナムシャ(アヤナムサ)という、
二つの天文座標(トロピカルとサイデリアル)を変換する数値を出す必要があるのですが、
この表では一応、一般的とされるラヒリ方式の近似式によっています。
実のところアヤナムシャ自体、さまざまな考え方があります。
よく使用されるラヒリ式とクリシュナムルティ式でも約1時間の差が出ます。
(クリシュナムルティ式のほうがラヒリ式よりも早く宿が変わりますが、
それぞれの方式にも種類があって数分~十数分くらいの違いがあります。)
こうした理由から、時間については大まかな目安と考えてください。
話を戻します。
旧暦での宿と天文計算での宿を見ていくと、互いに一致する期間は少なく、
4宿くらいズレてしまっている時期がかなりある状態です。
それに旧暦には閏月もあって、その間は少し宿が戻ったりもします。
例えば、この表では2020年の旧4月が閏月に当たっているので確かめてみてください。
また別の問題点もあります。
当時、宿曜経を記した人が1200年前の星空を写し取って旧暦表に落とし込んだのだとしたら、
それから現代までに地球の歳差運動によって16~17度ほどズレが出ていることになります。
月の運行は一日で約13度進むので、1宿強のズレということです。
でも、今回作成した表を見ると、3宿も4宿もズレている箇所があるわけで、
もともとの当てはめからして1~2宿のズレが出る期間があったかのかもしれません。
あるいは、今とは旧暦(太陰太陽暦)の作り方が違っていた時代でしたから、
そのことによる差異が出ている可能性も高いです(※)。
このあたりのことは、あらためて調べてみる必要がありそうです。
仮に平朔だったとしたらどうなるかの検証もしてみたほうがいいかもしれません。
少なくとも今の定朔定気法ではなかったことを考えると、
現代の旧暦を使い、アップデートしないままの月宿表を使い続けていいものか疑問です。
旧暦では新月が基準になりますが、月宿表は満月時の宿を基準に据えており、
そこから一日ずつ遡って新月の宿を決めています。
もし今の旧暦を使って月宿を出すことにこだわり続けるのなら、
改めて現代の天文計算で表を再構成したほうがいいのではないかと思います。)
ともかく、宿曜の本で出てくる宿がどうもしっくりこないとか、
本によって宿の解説が違っていたり、近隣の宿の意味が混ざっているように思えたりする、
そういうことの原因が、実はこの両者のズレにあるのかもしれません。
つじつまを合わせるために、意識的にか無意識的にか、
結果として近隣の宿の意味をミックスしてしまい、
曖昧になってしまっているのが現代の宿曜ではないか、そんなふうにも思えます。
今回は考えるキッカケとして1年分を掲載しましたが、
要望があれば100年分くらいをPDF化して、
ホームページ(CIの保管庫)に入れておくのもいいかなと思っています。
あと、おまけ要素として28の月相も入れてみました。
月相の取り方にもいろんなやり方があって悩ましいところですが、
この表では、単純に太陽と月の角度を28等分したルナー方式によっています。
本当は「27 NAK」のように相が変わる時間まで記載するのが親切かと思いますが、
おまけということで、各日の正午の時間での計算結果を載せました。
いろいろと書いてきましたが、
関心のある方たちの考えるキッカケになれば幸いです。
CI
2020年9月13日追記:
本分の中で「100年分くらいをPDF化して」と書いていました。
この度、自作した暦を使って実際に作ってみたので、
関心のある方に使っていただこうと思い、Googleドライブにて共有することにしました。
何かのお役に立てば幸いです。
アレイスター・クローリーは東洋の八卦へのアストラル体投射が非常に良い結果が得られたと述べているとのことですが
どのようにしたらいいのでしょうか?
この記事に向けたコメントではないと思いますが、ひとまずお答えします。
国書刊行会の『トートの書』(アレイスター・クロウリー 著)の巻末に、「中国人の宇宙観(易と生命の樹)」という図表が出ています。
タオ(道・徳)に始まり、陽と陰に分かれ、ダートに乾卦を配し、以下、先天八卦の順にケセドに兌、ティファレトに離、ゲブラーに震、ホドに巽、ネツァクに艮、イエソドに坎、そしてマルクトに坤を当てています。
八卦的に見れば、逆順に生命の樹を上っていく形になりますが(マルクト→イエソド→ホド→・・・)、それがアストラルの投影ということになるのかもしれません。
ダイアン・フォーチュンの『神秘のカバラー』などにある瞑想技法だろうかと想像しますが、ご質問の意図と違っていたらすみません。
ご参考になればいいのですが。