私の音楽 & オーディオ遍歴

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さすらいのバイオリン〜流浪の民・ロマの道

2019年09月07日 | ワールド
さすらいのバイオリン〜流浪の民・ロマの道
BSプレミアム 2019.9.4放送

 バイオリニストの古澤氏はクラシック畑出身です。
 しかし、米国に留学時代、「楽譜なしで自分の音楽を奏でなさい」というテーマをもらったとき、楽譜なしでは何も弾けない自分に愕然とし、しばらくバイオリンを手にすらできない状況に陥ったことがありました。
 そのときに友人から借りたカセットテープにショックを受けました。
 変幻自在に弾きまくるジプシーバイオリン。
 あ、現在はジプシーをロマと呼ぶようになりましたね。

 それをきっかけに、古澤氏はクラシックバイオリンを捨て、自分の音と音楽を探す求道者となったのでした。

 この番組は、その古澤氏の一つのルーツでもあるロマの音楽を辿る内容です。
 インド北部が起源とされる放浪の民、ロマ。
 その移動経路に、いろんな音楽を花咲かせました。
 トルコのベリーダンス、中東の軍楽、果てはスペインのフラメンコまで影響を受けていると聞いて驚きました。

 しかし、放浪民族のロマは、迫害されてきた闇の歴史も抱えています。
 古今東西、旅芸人は“神の使い”と尊敬される一方で、芸で日銭を稼ぐ最下層の民と軽蔑のまなざしでも見られてきました。

 第二次世界大戦中、ヒトラーがユダヤ人迫害をしたことは有名ですが、ロマも迫害対象とされたことはあまり知られていません。
 大戦が終わってみれば、約50万人のロマが殺害されたことが判明しました。
 しかし、ユダヤ人と異なり、組織を持たない流浪の民は、戦後補償を受けられずに現在に至っています。

 東欧のロマは、社会主義時代に不遇の生活を強いられました。
 旅をすることを禁止され、定住して地元民族と融合することを求められたのです。

 番組の中で、ロマの演奏者を追うのですが、皆、客の希望に応じてその地方の音楽を奏でるばかり。
 生き残るには“職業音楽家”にならざるを得なかったのですね。
 はて、ロマ固有の音楽は何処に行けば聴けるんだろう?

 少数ながら、今でも馬車で移動する生活を続けるロマがいます。
 その古老は、社会主義支配下の時代を「つらい時代だった」と振り返りました。
 旅をできないロマはロマではない、と言わんばかり。
 「我々は旅が好きなんだよ」
 という古老の言葉は、日本人が「旅が好きです」というのと、深さが天地ほど異なると感じました。

 その一族の女性が歌うロマ伝統の歌は、明るい曲ではなく、かといって暗い曲でもなく、淡々と日々の出来事を言葉にする内容。
 そこに古澤氏は長い歴史の中で受けた悲しみと、生き残るために培った強さを感じ取りました。

 と古澤氏は放浪します。

 ようやくたどり着いた村は、集落に住む300人のうち半分が楽士という音楽村。
 その楽士バンド「タラフ・ドゥ・ハイドゥークス」は日本で演奏旅行をしたこともあります。
 彼らは有名になって世界演奏旅行をするようになっても村を捨てず、住み続けています。
 そして彼らは、彼らの伝統音楽を奏でる楽団なのです。
 
 求める音楽に出会えた古澤氏は、彼らと共演を果たしたのでした。



<内容紹介>
ハイビジョンスペシャル はるかなる音楽の道 さすらいのバイオリン~流浪の民・ロマの道~(初回放送:2002年)
何百年もの間、旅を続ける民族・ロマの人々には独特の音楽がある。ヨーロッパ各地の音楽にも影響を与えたという彼らの音楽は、楽譜にとらわれない自由な奏法が特徴。旅する日々の中からどのように音楽が生まれたのか…バイオリニストの古澤巌がロマの人々と暮らしながら回った東欧の旅の記録。


★ 古澤巌さんは、栃木県足利市にあるココファームワイナリーの取締役でもあります。
 「障害者が働くワイナリーの取締役はバイオリニスト