私の音楽 & オーディオ遍歴

お気に入りアーティストや出会った音楽、使用しているオーディオ機器を紹介します(本棚8)。

「バイオリンの聖地クレモナへ」

2010年09月16日 | クラシック
BS Japanの番組です。副題は「~ストラディヴァリウスに見せられた日本人達~」。

~番組紹介文~
「バイオリンの聖地、イタリアのクレモナ。17世紀後半、偉大な製作家アントニオ・ストラディヴァリが後世へ続くバイオリン、ストラディヴァリウスを作った街。現在も100人を越える職人がバイオリンを製作し、世界中の演奏家達を支えている。10年以上もの間ストラディヴァリウスを使っていたバイオリニスト川久保賜紀は、忘れられない音色、さらには新しい音との出会いを求めてこの地を訪れた。」

 最初にチャイコフスキー国際コンクール・ヴァイオリン部門2位入賞歴のある川久保腸紀(28歳、女性)さんが出てきてきました。「ずっと使ってきたストラディヴァリウスの名器を数年前に手放し、新しい名器を探しに来た」という設定。
 すると「今をときめく美人ヴァイオリニストがヴァイオリンの聖地で眠っている名器を発見!これからの演奏活動の友としたい」というオチなのかな、と勝手に考えてしまいました(笑)。

 しかし、見続けると内容がどんどん広がり驚かされました。
 彼女は主役の一人に過ぎなかったのです。

 クレモナにはヴァイオリン製作を極めるべく留学(?)している日本人達も少なからず存在することが紹介されました。そして彼らも当番組の主役。
 中でも菊田浩さんはチャイコフスキー国際コンクール・ヴァイオリン製作部門(こんな部門があったんだ!?)で第一位獲得歴のある方。日々、自分の求める音との格闘を繰り広げている製作者の一人です。

 ヴァイオリンは木から作られますが、まだ削られていない木材を叩いて音を出すと、完成した楽器の音が想像できるそうです。削り出す板の厚さや、形、中に入る「魂柱」の調整で自分の求める音に近づけていく気の遠くなるような作業を目の当たりにしました。

 一方、同じく自分の求める音を出すヴァイオリンを探す川久保さん。
 この二人の求道者が出会い、お互いに響き合いながら進んでいく様は感動的でした。
 それから、ヴァイオリンは使われることで音色が成長していくことも知りました。ヴィンテージ・ワインのようですね。

 さらに驚いたのは、菊田さんの年齢です。
 もともとはNHKの音声担当者だった彼は、あるときコンサートで耳にしたヴァイオリンの音色に魅せられ、自分で製作を始めました(これだけでもすごい)。しかし思うような音は出てこない・・・一念発起して仕事を辞めイタリアのクレモナへ飛び立ったのがなんと「不惑の40歳」。体の衰えを感じ始める年齢で、新しい世界に飛び込むその精神に敬意を払いたいです。ちなみに彼の師匠は一つ年下でしたね。

 もっとすごいのが、ヴァイオリン製作の神様であるストラディヴァリ本人。製作のピークは70歳台で、亡くなる94歳まで理想を求めて作り続けたそうです。

 もう脱帽するしかありません。 

 40歳過ぎて体調を崩し「もう人生の後半なんだなあ」と黄昏れている自分が恥ずかしくなりました。
 「70歳ピーク」を目指し、日々努力あるのみ。

音楽家・河村隆一

2010年09月05日 | コンサート
ひょんなことからLUNA SEAの河村隆一さんのコンサート・チケットが手に入り、行って参りました。
場所は「葛飾シンフォニーヒルズ・モーツァルトホール」(東京です)。
テーマは「No Mic, No Speakers Concert」。

まず、「マイクを使わない」設定に驚きました。
線が細くて高音がキレイなタイプの河村さんが生の声だけで勝負するコンサートを開くなんて。
会場に着くと、席を埋めた聴衆は20~30代の女性を中心に、男性客も多く、おじいさん・おばあさんの姿も見かけました。
「アイドル追っかけギャル」が埋め尽くすと予想していた私にはちょっと意外。

さて、コンサートを聴いて感じたこと。

■ 楽器との相性
バックがクラシックの室内楽(ヴァイオリン2器、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピアノ)とギター2本という構成。
最初は「ポップスを歌う彼はギターのみでもいいんじゃないか」と思いましたが、聴いているうちに、絹のように伸びる高音は弦楽器に合っているんだな、と頷きました。

■ 声量がない
針金のように細い足と華奢な体の河村さん。
高音は美しいのですが、残念ながらシャウトしても豊かな響きは広がりません。
バックは室内楽が限度で、オーケストラは無理でしょう(かき消されてしまう)。
ゲスト出演した女性ボーカルの方が豊かな声を響かせ、逆に河村さんの声量がないことを証明する皮肉な結果となっていました。

■ 裏声を多用する歌唱法
昔からあの歌い方には違和感があり、正直好きではありません。
古くは坂本九さんも裏声を多用しましたが、彼の歌い方は母親の三味線の影響と聞いたことがあります。
元ちとせさんの分野である「奄美島唄」も裏声を多用しますね。もしかしたら、日本伝統の歌唱法のひとつなのかな。

■ 観客の反応
河村さんオリジナルの曲よりも、マイウェイ、タイム・トゥ・セイ・グッバイなどスタンダードに対しての拍手の方が大きかったことが不思議でした。
皆、アイドルの河村さんではなく、自分の音楽世界を広げようとするチャレンジャーとしての河村さんを聴きに来ていたのですね。観客層が若者だけでないことが理解できました。


総じて、音楽の求道者としての河村さんの姿が垣間見えました。
一見、番外編に見えた企画が、彼の懐の深さに感じ入るコンサートとして記憶に残りました。
そしてそれを支持するファンがたくさんいることも知りました。
今後もポピュラー音楽界に生き残る逸材だと思います。

Wikipediaでは、彼の職業は「ミュージシャン・歌手・俳優・音楽プロデューサー・小説家・レーサー」となってますね。
多彩な才能を開花させているご様子。

ただ、個人的には、役者はやめてほしい。
「ピカレスク」の演技はいただけません。
コンサートで話題になった「ドラキュラ」ならいいけど(笑)。