私の音楽 & オーディオ遍歴

お気に入りアーティストや出会った音楽、使用しているオーディオ機器を紹介します(本棚8)。

「Duet 」by Tony Bennett

2013年04月28日 |  My Favorite Artist
 WOWWOWで放映したものを視聴しました(実は2回目)。
 若い頃から「ベルベット・ヴォイス」で鳴らしたジャズシンガー、トニー・ベネット
 御年85歳で作成したアルバムの録音風景をドキュメンタリー化した番組です。
 いろいろなシンガーとの共演が次々出てくるので、ワクワクドキドキしながら見聞きしていたらあっという間に1時間半が過ぎてしまいました。

 トニーは若い頃と比べて声のなめらかさは落ちたものの、ほどよく枯れた喉は渋さを増して魅力的です。
 語るように歌い、しかもなめらか、ときにパーカッシブ、しかしサビの部分はキチンと高音が伸びるのが驚異的です。

 何よりもそのステージ・マナーが紳士的で、共演者に気遣いリラックスさせる能力はピカイチとプロデューサーのフィル・ラモーンがコメントしていました。
 トニーの優しさに包まれる心地よさを感じながら、ベスト・パフォーマンスを引き出してもらい共演を感謝しているシンガーの多いこと多いこと。

 特に記憶に残ったシンガーは・・・

ノラ・ジョーンズ:トニーの枯れた声とノラのとろけるような声がブレンドされ、得も言われぬ甘い時間がそこに。

レディー・ガガ:たった一曲でも「ショー」にしてしまう彼女の天性のエンターテインメント振りが発揮されました。

アレサ・フランクリン:ソウルの大御所アレサの溢れ出るような声と、喉を鳴らすようなトニーの声の対比が絶妙で、しかし最後のサビの部分で魅せた素晴らしいハーモニーは圧巻です。アレサも「これは歴史的な歌唱」とコメント。

 こんな極上の音楽空間を造り出せるアーティストはなかなかいません。
 「Duet 」でトニーは85歳にしてBillboard 200で自身初の初登場1位を獲得したそうです。
 歳とともに衰えるシンガーの多い中、よほど体調管理に気を使っているのでしょうね。

★ 前作「Duet」はこちら。

46の「All The Things You Are」

2013年04月27日 | ジャズ
 たまったCDを昨年の春からパソコンに取り込む作業を続け、3500枚終わったところで息切れしました。
 まだ500枚くらいありそうですが、まあこちらばボチボチこなすとして、今は取り込んだ楽曲を入れ替えたばかりのスピーカー(Mitsubishi 2S-305)で聴きまくっています。

 iTunes でクラシック系とジャズ系のフォルダを作り、演奏家別にプレイリストも作りました(大変だった~)。
 同じ楽曲でも演奏家による聞き比べができるのがネット・オーディオのメリット。
 もう、ジュークボックス状態です。

 さて、表題の「all the things you are」はジャズのスタンダードですが、なんと46バージョン(!)ありました。
 リストを提示します(クリックすると拡大します)。





 表中の「レート」とは私の独断と偏見による評価です。

 ★  ・・・ もう聞きたくない。
 ★★ ・・・ 魅力なし。あるいは録音が古すぎて聞くに堪えない。
 ★★★ ・・・ まあ、ふつうです。可もなく不可もなし。
 ★★★★ ・・・ うん、いいですねえ。繰り返し聞きたくなります。
 ★★★★★ ・・・ ブラボー! 時代を超えそうな名演奏。

 白状しておきますが、この46バージョンを全部最後まで聴いたわけではありません。
 まず、出だし部分の数秒間でとりあえずの評価をしました。その演奏が醸し出す雰囲気・空気感で決まりです。
 それから1~2分聴いて、印象によりその評価を少しアレンジします。
 まあ、だいたい数秒間の評価のままこのことが多いですね。
 良い評価の曲は、一瞬で部屋の空気が変わったような錯覚に陥らせてくれます。とくに「怪しいジャズ・バー」へ誘ってくれる曲がいいですね。
 というわけでミュージシャンの皆さん、出だしの数音は大切です!

 五つ星の演奏は3つだけ。
 数ある中でマイベストワンに輝いたのは「Art Tatam & Ben Webster」の演奏でした。
 Art Tatam のいぶし銀とも呼ぶべきピアノをバックにバラードの名手 Ben Webster がサックスでジェントルに歌う名人芸。聴いていると心が落ち着いてくるんですよねえ。

 Ben Webster は昔からのお気に入りアーティストです。
 若い頃からスピード感溢れるプレイではなくスローテンポの曲を得意としてきたので、歳を取っても魅力が衰えなかった希有なテナーサックス奏者。
 その外見から「flog」というニックネームが付いていたとか(レスターヤングのプレスとはえらい違い)。

 「Ben Webster」をYouTube で検索したら動画が見つかりました:
■ 「Jazz 625 - Ben Webster (Part 1 of 3)
■ 「Jazz 625 - Ben Webster (Part 2 of 3)
■ 「Jazz 625 - Ben Webster (Part 3 of 3)
■ 「Ben Webster (Tenor Sax) - Over The Rainbow
■ 「Ben Webster Sextet - C jam blues (1959)
■ 「Ben Webster & Ronnie Scott - Night In Tunisia (1964)
■ 「Ben Webster - Chelsea Bridge (1964)
■ 「Ben Webster and Charlie Shavers at Cafe Montmartre
■ 「Ben Webster meets Oscar Peterson (Hannover, 1972)
でも、一番好きなナンバーはやっぱりこれかなあ:
■ 「My One And Only Love Art Tatum & Ben Webster

 No.2は Joe Pass のソロ・ギター。こちらも派手さとは無縁の滋味溢れる名人芸です。
 No.3は Vi Redd のサックス。1950~60年代に活動した女流サックス奏者でバード系らしい。よく歌うそのサックスの秘密は・・・実は彼女はヴォーカリストでもあり、その土に根を下ろしたような歌声も一流なのです。

 YouTube で「Vi Redd」を検索したら・・・ウワッ、動画が残っていた!
 無名とばかり思い込んでいましたが・・・奇跡ですね。

■ 「Stormy Monday Blues Vi Redd Count Basie 1968
■ 「Vi Redd - I'd rather have a memory than a dream
■ 「Vi Redd - "Now's The Time"
■ 「Vi Redd - Yours
■ 「Vi Redd 2009 Interview

 かっこいいなあ。

 ・・・四つ星はたくさんあるので、コメントは省略します。

Burmester & Sonus Faber 試聴会

2013年04月21日 | オーディオ
 地元の電気屋さんで行われた「Burmester & Sonus Faber 試聴会」へ行ってきました。

 Burmester(ブルメスター)というオーディオ・メーカーは初耳です。
 ドイツのハイエンド・ブランドらしい。
 ドイツというと「質実剛健」というイメージに陥りがちですが、その奏でる音は「柔らかく豊か」との説明。
 逸品館の試聴記事を覗くと「自他共に認めるヨーロッパ最高ブランド」「音質はクリーミーでリッチ」と記載がありました。
 
 Sonus Faber は私自身が「ELECTA AMATOR」というブックシェルフ型スピーカーを使用しているので馴染みのイタリアン・ブランド。
 今回は創業者のフランコ・セルブリン氏が会社を去る前に残した最後の機種「Elipsa」(’楕円’という意味)と、その後現代的な音造りに方向転換した最新の機種「GUARNERI evolution」の2つを聞き比べるという企画です。
フランコ・セルブリン氏は先日亡くなったそうです。すてきなスピーカーをありがとう。合掌。

 午前中の仕事が終わって一休みしてから出かけ、会場に着いたのは試聴会開始から既に1時間と大遅刻。GUARNERI evolution から Elipsa へスピーカーを交換している最中でした。
 「昔の Sonus」の ELECTA AMATOR と「新しい Sonus」の GUARNERI evolution の音の違いを確認したかったので、ちょっと残念。

 さて、Burmester CDP 061 - pre/power amp 035/036 - Elipsa という構成のシステムで一通りの種類の音源がプレゼンテーションされました。
 Sonus 得意のヴァイオリンはお約束のヒラリー・ハーン、それにメゾソプラノ(歌手の名前は聞き取れず)が続き、アルゲリッチのピアノ、ジャズ・ピアノ、オーケストラはオットー・クレンペラーのモーツァルトK550、最期にアンネ・ゾフィー・ムターによるチャイコフスキー・ヴァイオリンコンチェルト。

 やはり弦楽器の音色が絶品です。
 メゾソプラノの声もすばらしい。

 ただ、気になったのが低音の締まりが甘いこと。
 ジャズ・ベースの輪郭がややぼける印象あり。
 その点を指摘すると「確かにその傾向はありますが、まあ Sonus の特徴のうちです。」との答え。
 バスレフ式スピーカーなので「後面と壁の間を広く取ると改善しますか?」と聞くと「あまり変わりません」と残念なコメントでした。
 まあ、クラシック用の高級スピーカーでジャズを聴くな、ということでしょうか(苦笑)。

 2時間の試聴会終了後、4人ほどいた参加者が一部帰途につくタイミングで、持参したCDを聴かせてもらえました。
 私が持参したのは前日作成した試聴用CD-R



カルミニョーラのヴァイオリンをヴィヴァルディのコンチェルトで。艶やかに膨らんで魅力全快。高音も摩擦音を維持して決して金属的にはなりません。
アンドルー・マンゼのバロック・ヴァイオリンは①同様、弦を擦る音に艶やかさと豊かさを加えた魅力的な音です。
朝崎郁恵さんの「阿母」:あまりのリアルさに目の前で朝崎さんが私に向かって歌ってくれているような錯覚に陥りました。
※ 彼女は奄美の島唄の第一人者で、民謡以前の古来伝わる日本のうたを感じさせる時間を超越した’語り’を感じさせる希有なアーティスト。・・・この歌を聴くと涙が出てくるんですよねえ。
④ジャズ・シンガーの中で一番のお気に入りのステイシー・ケント。最新アルバムからセレクトした曲はフランス語で囁くように歌う大人の雰囲気に満ちています。ヴォーカルはこの上なく艶やかで素晴らしいのだけど、伴奏のベースの音が膨らんで音像がぼけてしまうことにここで気がつきました。
⑤シャンソンの新鋭で「エディット・ピアフの再来」と称されるZAZの曲。これは自宅のシステム(Mitsubishi 2S-305)とあまり違いを感じませんでした。


 独り占めすると待っている方に悪いので、ここで一旦終了。
 別の参加者が持参したCDをしばらく聴く間、展示してあるスピーカーケーブルを物色していました。
 10種類くらい並べてあり、「ナノテック・システムズ」というメーカーの「79」シリーズが複数置いてあるのが目に付きました。
 そのキャッチコピー「柔らかい音が好きな方へ」に俄然興味が沸きました。
 現在の自分のシステムではスピーカー Mitsubishi 2s-305 の高音が硬くて時に金属音に近くなることに悩んでいたのです。

 「音が柔らかくなると、音の腰がなよなよして魅力が減りませんか?」
 と少々意地悪な質問を店員さんにすると、
 「そんなことはありません。このケーブルでは情報量も多くなり音が柔らかく豊かになります。」
 との回答。
 ふ~ん、そうなんだあ。いいなあ。買おうかなあ・・・。

 というタイミングで他のお客さんの試聴が途切れたので、CD-Rの続きを聴かせてもらいました。

⑦澤野工房からジョバンニ・ミラバッシのソロピアノ。うん、美しい。
⑧同じく澤野工房からトニー・ナイソーのピアノ・トリオ演奏。う~ん、ここでもベースの音が・・・。
⑨ウィンダム・ヒルからウィリアム・アッカーマンのギターをセレクト。古い演奏・録音のせいか音の伸びと広がり感が今ひとつでした。自宅で聴いた方かいいかなあ、などと不謹慎な考えが頭をかすめました。
⑩言わずと知れたイーグルスの名曲「ホテル・カリフォルニア」。再結成時のライブ音源です。うん、この演奏も自宅のシステムとあまり変わらないかな。
スティングの「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」。このアルバムでは当時新進気鋭のジャズ・ミュージシャンを迎えての音造りで話題になりました。サックスのブランフォード・マルサリスの哀愁を帯びた音色とメロディーがたまりません。でも、この音源も自宅システム以上の魅力は得られず。
⑭シンセサイザー奏者、富田勲の名曲「惑星」からトリッキーな音造りの「水星」をセレクト。ステレオ感の確認に使ってます。え、Sonus でこんな曲をかけるなって? まあまあ。音は自宅システム以上とは感じず。


 ざっと聴いた感じでは、従来の Sonus のイメージ通り「弦とヴォーカルは最高」、でも「低音の締まりが甘く、オーケストラでは気にならないけどジャズのベースではちょっと違和感が」ということになりました。ポップスやフュージョンなどでも器楽・電気楽器中心では魅力は半減しそうです。

 以上、超高級オーディオシステム(総額500万円以上!)を満喫後、スピーカー・ケーブルを購入して帰途につきました。
 ナノテック・システムズの「G.S. #79 nano3」という品番です。感想は後ほど。

 コバデンさん、試聴会を企画していただきありがとうございました。

Mitsubishi「2S-305」導入期 ~その3~

2013年04月14日 | オーディオ
 さて今日はメインの座を巡ってのスピーカー対決、ELECAT AMATOR vs 2S-305
 どちらかだけ聴き続けると細かい違いに気づきづらいので、ニアで切り替えながら同じ曲を聞き比べてみました。
 
 私がこれまでに感じていた音色の特徴:
ELECTA AMATOR:中音域の押し出しが強く濃い、低音はボアつく傾向がある、高音でもキチンと楽器の音を出す
2S-305:中音域は特徴なし、低音はしっかり出て音像がぼやけることはない、高音はギラついて金属音に近くなる印象

 では音源/楽曲別の印象を記してみます;

ジャズ系
 ベースが前面に出る音源では①ではやはり低音がボワつき気味で、音量を上げていくと「このおどろおどろしい響きは地震か?」と勘違いしたほど。②ではそんなことはなく、ベースという楽器の音として音像がぼやけることはありません。
 ピアノは①の方が楽器の音に近い印象、②では高音が金属音に近くなります。
 ドラムスはドラム(太鼓)の音は①ではぼやけて連打すると団子状態になってしまい、②ではタイトに分離して響きます。まあ、これをよしとするか、物足りないと感じるかはその人次第。一方、シンバルの音は①では「楽器の音」として聞こえるけど、②では「金属を叩く音」と化してしまう傾向あり。
 トランペットは、中音域のプレイでは差は感じません。奏者の息づかいまで感じる①、やや艶が乗った音が好みなら②(トム・ハレルのフリューゲルホーンは②の方がよかった)。マイルスのミュートプレイ予想通りはシンバルと同様の結果で、②では楽器音<金属音に聞こえてしまうのが玉に瑕。

クラシック系
 ヴァイオリンの音に「摩擦音」を求める人は①、「艶やかさ」を求める人は②がお勧め。私はアンドルー・マンゼのバロック・ヴァイオリンが好きなので、やはり①かなあ。イツァーク・パールマンが好きな人は②がより魅力的に聞こえそう。
 ピアノはジャズ系と同じだが、低音まで広がる楽曲では音像が崩れない②がよいでしょう。
 ギターは②の方がタイトでカチッと音像が決まるので好ましく聞こえました。①では低音をかき鳴らすときに音がダマダマの塊になってしまう傾向があります。

フュージョン系
 ベースの低音が効いている音源は①ではボワつき気味、②の方がタイトに聴かせてくれるくれるのでこちらの方が向いているけど、総じて高音はやはり硬いですね。
 パット・メセニーのアコギでは、②の方がカチッと決まり、伴奏のベースの音が滲まないですね。Tommy Emmanuel のアコギも心地よい響き。
 一方エレキの音は甲乙つけがたく好みのレベルと思われますが、ベースの伴奏があると①は音がぼやけて強調され全体のバランスが崩れてしまうのが難。
 

ヴォーカル系
 なんと、ダイアナ・クラールの声がスピーカーを替えると変わってしまい驚きました。
 ①ではハスキー・ボイスですが、②ではそれに適度の「艶」が乗るのです。
 私はハスキー気味の声質が好きなので①に軍配を上げます。実際の声に近いのはどちらかと聞かれると、①でしょうね。
 オペラなど艶やかなテノールやソプラノが好きな方には②がよいでしょう。

 総じて、中高音域は ELECTA AMATOR、低中音域は 2S-305 が私の好みという結果になりました。
 まあ、どちらかを聴き続ける限りはあまり気にならないんですけどね。

 振り返ってみると、高音が硬いのは日本のスピーカーの特徴なのかもしれないな、と感じます。
 今までに使用してきたScepter1001TAD TSM 2201-LR も評価の高いスピーカーですが同様の傾向がありました。
 「ふくよか/まろやか」よりも「タイト/硬質」の方が日本人好み?
 日本古来の楽器である、琵琶、三味線、琴、篳篥、笙、尺八など、どちらかというと音は鋭いですもんね。

 2S-305 の硬い高音が今後エージングやスピーカーケーブルの変更で柔らかくなるのかどうか、期待しましょう。

Mitsubishi「2S-305」導入記 ~その2~

2013年04月14日 | オーディオ
(前回のセッティングの話に引き続き、今回はファースト・インプレッションです)

 セッティングを済ませ、早速音を出してみました。
 ちなみに現在のシステムは、MacProにWAV形式で取り込んだ約3500枚のCD音源をUSBケーブルで Esoteric SA-50 へ伝送してアップサンプリング処理し、Accuphase E-460 経由で 2S-305 に繋ぐという構成。

 今までのメインスピーカーである Sonus faber ELECTA AMATOR の濃い音に慣れた耳には、全体の第1印象は「淡白な音」でした。
 メリハリは少なく、かといって味気ないという感じでもなく・・・え~と、しっかり構築された余裕のある音と云えそう。

 ちなみに、2S-305 の音の評価を抜き出しますと・・・

■ (ハイファイ堂の製品説明)
 「シルクのような滑らかさとフィルムコンデンサーよりも厚みに長けており、能率自体が高いので小出力のアンプでもドッシリとした音像表現」

■ (デヴィッド・ベイカー:アメリカの録音制作家)
 「日本には2S305という素晴らしい製品がある。あんなに綺麗な音のスピーカーを聴いたことはない!」

■ (瀬川冬樹氏のコメント)
 「2S305は、さすがに開発年代の古い製品であるだけに、こんにちの耳で聴くと、高域の伸びは必ずしも十分とはいえないし、中音域に、たとえばピアノの打鍵音など、ことさらにコンコンという感じの強調される印象もあって、最近のモニタースピーカーのような、鮮鋭かつ繊細、そしてダイナミックな音は期待しにくい。けれど、総合的なまとまりのよさ、そして、音のスケール感、いろいろの点で、その後のダイヤトーンのスピーカーの中に、部分的にはこれを凌駕しても総合的なまとまりや魅力という点で、2S305を明らかに超えた製品が、私には拾い出しにくい。」
 「一年に一度は、郡山の三菱電機の研究所で新製品を試聴させてもらうが、比較のために鳴らす2S305が、いつでも、どんな新製品よりも申し訳ないが良く聴こえて、そのたびに305の優秀であることを再認識させられる。」

■ (菅野沖彦氏)
 「この2S305も、開発当初から比べて徐々に改良が加えられ、現在のプログラムソースに適合できるスピーカーシステムになってきている。しかし、音質の傾向が全く異なった方向にそれたわけではなく、あくまでも初期の製品からもっていた明快なバランスのよい音という伝統を受け継ぎながら、より緻密さと洗練された味わいが加わったのである。以前のスピーカーがもっていた高域の鋭さが抑えられ、よりスムーズな滑らかな音になり、低域もより豊かさを増してきたように感じられるのだ。」
 「良くも悪しくも日本的な優等生だ。低音の厚みと豊かさ、弾力性に筆者としては不満があるが、さわやかなタッチの美音だと思う。」

■ (岩崎千明氏のコメント)
 「世界のスピーカーがすべて「ローディストーション、ワイドレンジ、フラットレスポンス」を目指す今日、その先見の銘をもっていたのがダイヤトーンの305だ、といったら誰かになじられようか。」

■ (某ブログより)
 「この2S305、ある時ある店でとてもすてきな音で鳴りました。高音はまるで秋晴れの空に吸い込まれるような天井を知らないように突き抜けて行きました。全く威圧的や暴力的でなく、それはそれは耳に優しく聞こえてきました。優しくはあっても曖昧さはなく、しっかりと全く迷いなく輝く音でした。ダイヤモンドが音を発するときはこんな感じだろうと思いました。ダイヤトーンという名前は、偶然でしょうが、このスピーカーにふさわしいと思ったのです。」


 フムフム・・・なるほど。
 そう言われればそうかもしれん・・・。

 いろいろ曲を替えて聴いていくと、低音の出方が ELECTA AMATOR と明らかに違うことに気づきました。
 ELECTA AMATOR はブックシェルフという大きさ故、低音が十分には出ないという弱点があります。ヴァイオリンの大きさでコントラバスの深い響きは出せないという単純な理由ですね。
 そこで「バスレフ・ダクト/ポート」を設置して「低音を膨らまして量感を稼ぐ」という工夫がなされています。
 ただ、バスレフ法は低音が伸びる(低い周波数まで再生できる)こととは似て非なるものであり、膨らますことによるボリューム感は出ますがやり過ぎるとボワついてしまいます。
 「ボリューム感とボワつきのトレードオフ」的なジレンマから逃れられないのがブックシェルフ型の宿命です。
 しかし 2S-305 の低音はそんな小細工をまったく感じさせず(一応バスレフ式ですが)、あくまでも自然にゆったり&しっかりと広がっていきます。

 車に例えれば、ELECTA AMATOR は高級コンパクトカー、2S-305 はフルサイズの高級セダン。
 手足を思いっきり伸ばした爽快感があり、窮屈感は皆無。

 中音域も押し出しが強くはありませんが、高品位で安定感のある音。
 ヴォーカルをボリューム感豊かに再現してくれます。
 子音が耳障りにかすれて聞こえることはなく、しっかり音が乗ってくるのです。

 ただ、気になったのが少々ギラつく傾向のある高音。
 もっとも、音圧が96dBと能率が高いので、ELECTA AMATOR と比較して聴くとつい大音量になってしまう影響もありますが。

 以上のファースト・インプレッションを店員さんに伝えると、
「コンデンサーを新品に交換しているのでまだ音が硬くて本領発揮とはいきません。3ヶ月くらい鳴らしてエージングすれば実力が出るようになりますよ」
 とのコメント。さらに、
 「でも CDP が Esoteric、アンプが Accuphase、スピーカーが Diatone というラインナップでは、音は硬そうですねえ」
 確かに、おっしゃる通り。
 「スピーカーケーブルをいろいろ試してみるのもよいかもしれません。」
 ま、将来の楽しみにとっておきましょう。

 その後もいろいろ聴いていくと・・・驚かされたのがシンセサイザー。
 意外でした。
 35年前の中学生時代に出会った冨田勲さんの「惑星」(ホルスト作曲)はこんなにすごい音楽だったんだ、と改めて気づかされました。
 縦横無尽に音が移動し、低音から高音まで入り乱れ、絢爛豪華な音世界。
 その音場を破綻なくフルサイズで提示する能力がこのスピーカーにはあります。
 「楽曲がスピーカーを選ぶと云うこともあるんだなあ」
 と感心しきり。
 今まで使用してきたスピーカー群と比較すると、スケール感が1ランクも2ランクも上ですね。

 しばらく聴いていると、大音量でなくても聴き心地がよいことに気づきました。
 BGMに流す程度の中音量でも見通しがよいというか、広大な音場に音楽が佇んでいるような印象です。

 その昔、ヴィスコンティの「家族の肖像」という映画を観た時のことを思い出しました。
 主人公の老教授はごく低音量でモーツァルトのオペラを聴いています。
 「うん、やはりモーツァルトはいい・・・」
 とつぶやくのですが、当時の若い私は「あんな小音量で音楽のよさがわかるんだろうか?」と疑問に思ったものでした。
 その頃はシンフォニーを大音量で聴くことに生きがいを感じていましたので。

 自分もその枯れた年齢に近づきつつあるようです。

 というわけでこの1年間、手探りしながら自分の聴きたい音を求めてきたオーディオ道は、一応の完成を迎えた感があります。
 スピーカーに関しては、トールボーイ型(JBL S3800)の低音のボアつきに悩まされ、大型ブックシェルフ型(Onkyo Sceptor1001)に一度は満足したものの、小型高級ブックシェルフ型(Sonus Faber ELECTA AMATOR)の魅力に引き込まれ、でも低音に物足りなさを感じてフロア型(Mitsubishi 2S-305)に落ち着く、という道のりでした。

 今後10年間は、このシステムで好きな音楽を楽しめるかな。
 それともまた浮気心がフツフツと頭をもたげてくるのかな。

 乞うご期待!(苦笑)