(前回のセッティングの話に引き続き、今回はファースト・インプレッションです)
セッティングを済ませ、早速音を出してみました。
ちなみに現在のシステムは、MacProにWAV形式で取り込んだ約3500枚のCD音源をUSBケーブルで Esoteric SA-50 へ伝送してアップサンプリング処理し、Accuphase E-460 経由で 2S-305 に繋ぐという構成。
今までのメインスピーカーである Sonus faber ELECTA AMATOR の濃い音に慣れた耳には、全体の第1印象は「淡白な音」でした。
メリハリは少なく、かといって味気ないという感じでもなく・・・え~と、しっかり構築された余裕のある音と云えそう。
ちなみに、2S-305 の音の評価を抜き出しますと・・・
■ (ハイファイ堂の製品説明)
「シルクのような滑らかさとフィルムコンデンサーよりも厚みに長けており、能率自体が高いので小出力のアンプでもドッシリとした音像表現」
■ (デヴィッド・ベイカー:アメリカの録音制作家)
「日本には2S305という素晴らしい製品がある。あんなに綺麗な音のスピーカーを聴いたことはない!」
■ (瀬川冬樹氏のコメント)
「2S305は、さすがに開発年代の古い製品であるだけに、こんにちの耳で聴くと、高域の伸びは必ずしも十分とはいえないし、中音域に、たとえばピアノの打鍵音など、ことさらにコンコンという感じの強調される印象もあって、最近のモニタースピーカーのような、鮮鋭かつ繊細、そしてダイナミックな音は期待しにくい。けれど、総合的なまとまりのよさ、そして、音のスケール感、いろいろの点で、その後のダイヤトーンのスピーカーの中に、部分的にはこれを凌駕しても総合的なまとまりや魅力という点で、2S305を明らかに超えた製品が、私には拾い出しにくい。」
「一年に一度は、郡山の三菱電機の研究所で新製品を試聴させてもらうが、比較のために鳴らす2S305が、いつでも、どんな新製品よりも申し訳ないが良く聴こえて、そのたびに305の優秀であることを再認識させられる。」
■ (菅野沖彦氏)
「この2S305も、開発当初から比べて徐々に改良が加えられ、現在のプログラムソースに適合できるスピーカーシステムになってきている。しかし、音質の傾向が全く異なった方向にそれたわけではなく、あくまでも初期の製品からもっていた明快なバランスのよい音という伝統を受け継ぎながら、より緻密さと洗練された味わいが加わったのである。以前のスピーカーがもっていた高域の鋭さが抑えられ、よりスムーズな滑らかな音になり、低域もより豊かさを増してきたように感じられるのだ。」
「良くも悪しくも日本的な優等生だ。低音の厚みと豊かさ、弾力性に筆者としては不満があるが、さわやかなタッチの美音だと思う。」
■ (岩崎千明氏のコメント)
「世界のスピーカーがすべて「ローディストーション、ワイドレンジ、フラットレスポンス」を目指す今日、その先見の銘をもっていたのがダイヤトーンの305だ、といったら誰かになじられようか。」
■ (某ブログより)
「この2S305、ある時ある店でとてもすてきな音で鳴りました。高音はまるで秋晴れの空に吸い込まれるような天井を知らないように突き抜けて行きました。全く威圧的や暴力的でなく、それはそれは耳に優しく聞こえてきました。優しくはあっても曖昧さはなく、しっかりと全く迷いなく輝く音でした。ダイヤモンドが音を発するときはこんな感じだろうと思いました。ダイヤトーンという名前は、偶然でしょうが、このスピーカーにふさわしいと思ったのです。」
フムフム・・・なるほど。
そう言われればそうかもしれん・・・。
いろいろ曲を替えて聴いていくと、低音の出方が ELECTA AMATOR と明らかに違うことに気づきました。
ELECTA AMATOR はブックシェルフという大きさ故、低音が十分には出ないという弱点があります。ヴァイオリンの大きさでコントラバスの深い響きは出せないという単純な理由ですね。
そこで「バスレフ・ダクト/ポート」を設置して「低音を膨らまして量感を稼ぐ」という工夫がなされています。
ただ、バスレフ法は低音が伸びる(低い周波数まで再生できる)こととは似て非なるものであり、膨らますことによるボリューム感は出ますがやり過ぎるとボワついてしまいます。
「ボリューム感とボワつきのトレードオフ」的なジレンマから逃れられないのがブックシェルフ型の宿命です。
しかし 2S-305 の低音はそんな小細工をまったく感じさせず(一応バスレフ式ですが)、あくまでも自然にゆったり&しっかりと広がっていきます。
車に例えれば、ELECTA AMATOR は高級コンパクトカー、2S-305 はフルサイズの高級セダン。
手足を思いっきり伸ばした爽快感があり、窮屈感は皆無。
中音域も押し出しが強くはありませんが、高品位で安定感のある音。
ヴォーカルをボリューム感豊かに再現してくれます。
子音が耳障りにかすれて聞こえることはなく、しっかり音が乗ってくるのです。
ただ、気になったのが少々ギラつく傾向のある高音。
もっとも、音圧が96dBと能率が高いので、ELECTA AMATOR と比較して聴くとつい大音量になってしまう影響もありますが。
以上のファースト・インプレッションを店員さんに伝えると、
「コンデンサーを新品に交換しているのでまだ音が硬くて本領発揮とはいきません。3ヶ月くらい鳴らしてエージングすれば実力が出るようになりますよ」
とのコメント。さらに、
「でも CDP が Esoteric、アンプが Accuphase、スピーカーが Diatone というラインナップでは、音は硬そうですねえ」
確かに、おっしゃる通り。
「スピーカーケーブルをいろいろ試してみるのもよいかもしれません。」
ま、将来の楽しみにとっておきましょう。
その後もいろいろ聴いていくと・・・驚かされたのがシンセサイザー。
意外でした。
35年前の中学生時代に出会った
冨田勲さんの「惑星」(ホルスト作曲)はこんなにすごい音楽だったんだ、と改めて気づかされました。
縦横無尽に音が移動し、低音から高音まで入り乱れ、絢爛豪華な音世界。
その音場を破綻なくフルサイズで提示する能力がこのスピーカーにはあります。
「楽曲がスピーカーを選ぶと云うこともあるんだなあ」
と感心しきり。
今まで使用してきたスピーカー群と比較すると、スケール感が1ランクも2ランクも上ですね。
しばらく聴いていると、大音量でなくても聴き心地がよいことに気づきました。
BGMに流す程度の中音量でも見通しがよいというか、広大な音場に音楽が佇んでいるような印象です。
その昔、ヴィスコンティの「
家族の肖像」という映画を観た時のことを思い出しました。
主人公の老教授はごく低音量でモーツァルトのオペラを聴いています。
「うん、やはりモーツァルトはいい・・・」
とつぶやくのですが、当時の若い私は「あんな小音量で音楽のよさがわかるんだろうか?」と疑問に思ったものでした。
その頃はシンフォニーを大音量で聴くことに生きがいを感じていましたので。
自分もその枯れた年齢に近づきつつあるようです。
というわけでこの1年間、手探りしながら自分の聴きたい音を求めてきたオーディオ道は、一応の完成を迎えた感があります。
スピーカーに関しては、トールボーイ型(JBL S3800)の低音のボアつきに悩まされ、大型ブックシェルフ型(Onkyo Sceptor1001)に一度は満足したものの、小型高級ブックシェルフ型(Sonus Faber ELECTA AMATOR)の魅力に引き込まれ、でも低音に物足りなさを感じてフロア型(Mitsubishi 2S-305)に落ち着く、という道のりでした。
今後10年間は、このシステムで好きな音楽を楽しめるかな。
それともまた浮気心がフツフツと頭をもたげてくるのかな。
乞うご期待!(苦笑)