私の音楽 & オーディオ遍歴

お気に入りアーティストや出会った音楽、使用しているオーディオ機器を紹介します(本棚8)。

ウィリアム・アッカーマン(William Ackerman)

2009年11月29日 |  My Favorite Artist
もう、このアーティストのギターを25年間も聴き続けているんだなあ・・・それほど私の生活の一部となっている音楽です。

彼は1970年代半ばに「ウィンダム・ヒル(Windam Hill)」というレコード会社を立ち上げた人物。
1980年代は環境音楽~ニューエイジと呼ばれる、読書やティータームのBGMに心地よい音楽が人気を博した時期です。
シンセサイザーを駆使した電子音楽がもてはやされた1970年代の反動だったような気がします。
大自然に包み込まれるようなアコースティックな響き、しかし感情に流されるイージーリスニングではなく、タイトでストイックな音造りが特徴のレーベルとしてニューエイジの中でも別格扱いされ、一世を風靡しました。

TV-CMで有名になったジョージ・ウィンストンのソロピアノ「Autumn」を記憶している方もいらっしゃると思います。
思い起こせば、私が最初に購入したCDはウィンストンの「December」だったなあ。
ウィンストンの北米の清冽な大自然を想起させるピアノ、大好きです。

実は私、ジョージ・ウィンストンのコンサートへ行ったことがあります。
ラフな格好の出で立ちで登場したのっぽのおじさんが繊細なピアノを奏でる・・・至福の時間でした。

でも私の一番のお気に入りはなんと言ってもアッカーマン(知名度は今ひとつのようですが)。
彼のCDは全て持っています。
初期の作品はまだ洗練されておらず、どちらかというとカントリー寄りの曲調です。
しかし、そこに漂う幼少時を回想するような郷愁感がたまりません。
その後発表された作品は、一筋の光が射したように徐々に明るい空気をまとっていきます。
洗練され、ソロから室内楽調のアレンジに変化を遂げて。

アッカーマンはドイツ人です。
孤児として生まれ育ち、アメリカの里親に引き取られたという過去があります。
つらく孤独な幼少時の記憶が初期の作品には色濃く反映されているのでしょう。
特に「Childhood and Memory(1979年)」と「Passage(1981年)」というアルバムを愛聴しています。
後者に収められている「アンの歌(Anne's Song)」を聴くたびに私は涙が流れそうになります。
何というか・・・冷たい雨が降りしきる中、部屋でひとり、無心にブロックを積み立てている幼児期の私自身の姿が思い浮かぶのです。

アッカーマンの演奏する姿をDVDで観ることができます。
ただ、発売は10年以上前なので入手困難。ネット上の通販で探しに探して手に入れました。
納屋の前に積まれたわらの上でギターをつま弾いている彼の姿が目に焼き付いています。
その際に知ったのですが、彼は特殊なチューニングをギターに施しているそうです。ふつうにギターを弾いてもアッカーマンのマネはできないらしい(ギターを弾けない私にはよくわかりません)。
同じレーベルのマイケル・ヘッジスはもっと特殊なスペシャル・チューニングをしていたとか。

元々寡作のアッカーマンですが、近年はさらにゆっくりとなり3~4年にひとつ作品を発表するペースへスローダウン。
音楽も孤独感が希薄となり、暖かく包み込んでくれる雰囲気に変わりました。
なんと云うか・・・日だまりの中でうたた寝しているような安らかな心地よさ。
幸せな人生を送っているのかなあ。

アッカーマン、素敵な音楽をありがとう。

<ディスコグラフィー>
■ In Search of the Turtle's Navel, 1976
■ It Takes a Year, 1977
■ Childhood and Memory, 1979
■ Passage, 1981
■ Past Light, 1983
■ Conferring with the Moon: Pieces for Guitar, 1986
■ Imaginary Roads, 1990
■ The Opening of Doors, 1992
■ A Windham Hill Retrospective,1993
■ Sound of Wind Driven Rain, 1998(Grammy Nomination)
■ Hearing Voices, 2001(Grammy Nomination)
■ Returning, 2004(Grammy Winner)
■ Meditations, 2008

プッチーニ「ラ・ボエーム」

2009年11月08日 | コンサート
本格的なオペラを生まれて初めて鑑賞しました。
東京芸術大学系のプロがソリストとオーケストラ演奏を担当し、エキストラは市民参加という公演です。
実は今回、長男がエキストラで出演するので券を購入せざるを得なかったのです(苦笑)。

プッチーニは19世紀後半から20世紀にかけて活躍した作曲家。
その舞台には「クラシック」という堅苦しい雰囲気はなく、演出も音楽も上質な古いアメリカ映画のような印象を受けます。
それもそのはず、プッチーニ以降オペラは衰退して映画の時代を迎えるのですね。

「ラ・ボエーム」はパリの下町に咲いた悲しい恋の物語です。
貧乏な詩人とお針子の幸せな恋は彼女の病と死により悲しい結末を迎える・・・当時は受けたのでしょうが、今に生きる私には起承転結が単純すぎて感情移入しにくい展開でした。

実は私、今までオペラにはあまり興味がありませんでした。
なぜって、セリフが歌になっているなんて変じゃありませんか!
まあ、食わず嫌いの面もあり、一度観てみようかと重い腰を上げました。

鑑賞後の感想は・・・

プロの「声」に脱帽!
声楽とは、人間の声を鍛えて楽器にしてしまう技なのですね。
特にヒロインの「ミミ」役:大隅智佳子さんの伸びがあってふくよかに広がる高音はいつまでも聴いていたいと思わせる絶品の声でした。
芸大声楽科を首席で卒業した才人だそうです。
ヒーローのテノールも輝く高音の持ち主でしたが、厚みがないので負けていましたね。
オーケストラの演奏もよかった~。
管楽器の暖かみのある響きはCDでは再生できません。

一方、オペラの弱点に気づきました。
一流の声楽家が一流の俳優とは限らない。
一流の声楽家が一流の容姿を持ち合わせているとは限らない。

失礼な意見かもしれませんが、現実ですね。
今日の公演の中で、魔性の女である「ムゼッタ」は美貌の持ち主という設定ですが、ちょっと・・・。

子役のエキストラで出演した息子は終始ニコニコして歌っていました。
とっても楽しそうで、よい経験になったようです。

NEW BIG4 featuring ドミニク・ファリナッチ

2009年11月04日 | コンサート
久しぶりにジャズ・コンサートに行ってきました。
ジョージ・川口Jr.(川口雷二)率いるNEW BIG4にニューヨークから今をときめく新進気鋭のトランペッター、ドミニク・ファリナッチがゲスト参加。

ファリナッチさんを知らなかった私はコンサート前にCDを購入して聴いてみました。
ソフトな音色にあふれる歌心・・・確かに高く評価される魅力・実力の持ち主だと感じました。
レビューではチェット・ベイカーやマイルス・デイビスになぞらえる方もいます。
ただ、発売されているCDはソフトな音色が強調されてややイージーリスニング調のアルバムが多い(日本人プロデューサーによる売れ線狙い)ので、ちょっと辟易。

さて、川口雷二さんはお父さんのジョージ川口張りの「見せるドラマー」です。
太鼓を叩き、リズムを刻む快感を体現し、エネルギーを凝縮したような音の洪水で魅了するタイプ。
聴くたびに、体の奥底に眠っているリズムを求める本能を呼び覚ましてくれるようです。

NEW BIG4はジョージ川口が長年率いてきたバンドであり、没後に後継者の雷二さんが引き継いだ格好です。
そのメンバーは・・・
・野太い音で音楽の広がりを造るサックスの中村誠一さん、
・音の吹き出しや切れが抜群でジャズトランペットのお手本のような岡野等さん、
・ドラムのほとばしるエネルギーに負けない強靱なベースを刻む水橋孝さん、
・全体をまとめてエレガントさを添えるピアノの市川秀男さん、
と百戦錬磨の強者揃い。

この中でソフト路線のファリナッチさんがどんなプレイをするのか、不安半分、期待半分でコンサート会場へ向かいました。

1曲目からゲスト参加のフルパワーの演奏が始まりました。
長身のファリナッチさんも顔を真っ赤にして体を揺らしてバリバリ吹きまくっています。
かっこいい、というよりかわいい感じでした(笑)。
しかし音が荒くなることはなく、やはりソフトで歌心に溢れていて素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
日本発売のCDは彼の一面しか表現していないと感じました。
第二部のバラードは彼の真骨頂で、その魅力に会場にため息が漏れました。

もう一つ気づいたこと。
川口雷二さんのドラムソロが始まると、バンドのメンバーがじっと彼を見つめるのです。
厳しく、そして温かい眼差し。
「カモン、ライジ・・・親父はもっとホッとだったぜ!」と言っているような雰囲気。
そして最後にはニヤッと笑顔を見せ、ピアノの市橋さんは拍手までしていました。
親父さんの域に達したことをメンバー全員が認めている証拠だと感じました。

コンサートが終わり、日頃の仕事で心身ともにつかれ気味の私は元気をもらって帰ってきました。
還暦を迎えた御仁達のパワフルな演奏を見せつけられ、まだ40代の私が疲れて老け込んでいる場合じゃないぞ、と自分に言い聞かせたのでした。

あ、もちろんファリナッチさんの新譜を購入してサインをもらい、握手をしてきましたよ。