私の音楽 & オーディオ遍歴

お気に入りアーティストや出会った音楽、使用しているオーディオ機器を紹介します(本棚8)。

偉大な作曲家たち Vol.2「モーツァルト」

2009年08月27日 | クラシック
~Amazonの解説より~
NHK-BS系で放映、歴史に名を残す偉大な作曲家たちの生涯をわかりやすく紹介する「偉大な作曲家たち」シリーズ第2弾。本作はハイドン、ベートーヴェンと並ぶウィーン古典派3巨匠のひとりであるモーツァルトの生涯を演奏と解説を交えて辿る。

Vol.1のバッハの次はモーツァルトです.
私のモーツァルトのイメージは映画の「アマデウス」の影響を受けて、あまり良いものではありません.
ふざけてばかり、スカトロ趣味・・・.

このDVDで彼の生きた時代を知りました.
ドイツの地方都市ザルツブルグで生まれた彼は、早熟の天才ともてはやされ(5歳でピアノ曲を、8歳で交響曲を作曲!)て一時は演奏旅行に引っ張りだこでしたが、ブームが去ると田舎の作曲家に成り下がります.パリへ職探しの度に出かけた時に作った曲が「パリ」交響曲.フランス市民に受けるように作曲したと父親への手紙に書いてあるそうです.

そこに、ウィーンを支配するハプスブルグ家のヨーゼフ2世の改革が始まりました.
貴族の権力を制限し、中産階級の地位向上に努めたヒトです.
すると、それまで貴族が独占していた音楽を一般市民も楽しむようになります.
そして、モーツァルトは初めてのフリーの音楽家となり人気を博しました.
つまり、宮廷や教会所属の音楽家ではなく、自分で作曲した曲を売り、演奏会のチケットを売り、収入を得るという現代に通じる売れっ子芸能人です.
音楽の質も、一般市民が楽しめるものへ変わっていきました.
また、イタリアではオペラが盛んで、彼はその影響も受けています.
と言うわけで、モーツァルトの作る曲は時代の要請により宮廷音楽の雰囲気を残しながら、庶民にも受けるわかりやすさを取り入れ、かつオペラの影響も受けるというごちゃ混ぜの音楽なのです.
確かに、彼のヴァイオリン協奏曲などは独奏ヴァイオリンの始まり方がオペラの中のそれと雰囲気が似ています.
父への手紙の中で、彼の曲を街を歩く子どもが口ずさんでいるのを聞いてうれしくなった、という記載もあるそうです.

軽やかな楽曲が多い中で、ごついピアノ曲があったりします.
実は、母親が亡くなった直後に作った曲だとわかり、納得しました.
私はオペラだけは好きになれないのですが、時代を映し出す怪しげな「ドン・ジョバンニ」は観てみたいと思いました.

40年足らずの人生を常人の数倍の速度で駆け抜けたのでした.
その時代が欲した音楽を提供しただけなのに、その作品は後世に伝えられ、様々な評価を受けながら現在にも生き続けています.
軽やかで美しい旋律、純粋な音楽.
人間が欲する音楽の根っこを抑えていたからかな、などど思ってしまいます.

偉大な作曲たち Vol.1「バッハ」

2009年08月27日 | クラシック
~Amazonの解説より~
NHK-BS系で放映、歴史に名を残す偉大な作曲家たちの生涯をわかりやすく紹介する「偉大な作曲家たち」シリーズ第1弾。本作はドイツが生んだバロック音楽の巨匠、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの歩んだ生涯を演奏と解説を交えながら辿る。

ふつうクラシック系の作曲家の名前は学校の音楽の授業で知ることになります.
テレビから流れてくる歌謡曲とは明らかに異なる堅苦しい音楽.
それが何故良い音楽なのか、どこがすごいのかを授業では教えてくれません.
結局、縁遠い音楽のまま終わってしまう事が多いのでしょう.

でも、私は比較的クラシック音楽を好んで聴いています.
特にバロック系~バッハはBGMとして流しても邪魔にならないのでいつの間にかCDが増えました.

でもでも、何故好きかと聞かれても・・・うまく答えられません.
バッハがどんなヒトだったのか知りませんし、彼が生きて作曲活動した時代の事もわかりません.
このDVDの事を知り、一度はバッハの人生を覗いてみても良いのでは?と購入して見てみました.

すると、意外な人物像に驚き、バッハの音楽が何故今でも聴き続けられているのか、少しわかったような気がしました.

バッハの時代の音楽家は、宮廷とか教会に所属する雇われ音楽家です.庶民の楽しむ音楽ではありませんでした.
彼はオルガン奏者であり、その合間に作曲活動をして作品を残しました.
最後の職となった聖トーマス教会所属のオルガン奏者に落ち着くまでは職を転々とし、結構トラブルメーカーだったようです.
作品も彼の死後は一部の愛好家の間でのみ伝えられ、今のように盛んに演奏されるようになったのは死後100年を経過してからでした.
真面目で堅実というイメージをもっていた私には意外な事実.

彼の音楽のすごいところは、それまで単純だった和音構成を複雑化し、それに旋律を乗せて音にいろいろな表情をつけることに成功し、結果ふくらみのある味わい深い音楽を作り上げたところにあるそうです.
それまでのヴィヴァルディなどの一本調子のバロック音楽とは一線を画し、一つの楽曲の起承転結構成もしっかりしている.
このような点が優れ、それ以降の作曲家達に大きな影響を残したんだそうな.

なるほど.
そういわれると、確かにヴィヴァルディは一本調子、ヘンデルの方がシンプルに思えてきます・・・.

チェリビダッケ指揮「幻想交響曲」

2009年08月27日 | クラシック
セルジュ・チェリビダッケ指揮、トリノRAI交響楽団演奏、ベルリオーズ「幻想交響曲」
1969年、トリノにおけるライブ収録。

チェリビダッケ(1912-1996)は録音を嫌うことで有名だった伝説の指揮者です.
その遺産は限られた音源で味わうしかありませんでした.
当然この映像は貴重なもので、まさか伝説の指揮者を映像で見ることができるとは思いもよらなかったことです.

彼はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者としてフルトヴェングラーの跡を継ぐ者と考えられていた大物です.カラヤンとその席を巡って争いましたが敗れ去り、後年ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に落ち着くまでは放浪の指揮者としてヨーロッパのあちこちの放送楽団を指揮して回る時代がありました.
このDVDはその時代の映像です.

わくわくしながら観はじめました.
彼の実際の指揮振りは、右手で強烈にリズムを刻む、至ってシンプルな指揮.
ここでもカラヤンと比較して恐縮ですが、カラヤンの流れるような指揮棒さばきと比べると無骨な感じです.
造り出す音楽も、カラヤンの「芳醇な響き」とは異なる「1音1音の正確さ」を基礎とした楽曲の構築.
彼のリハーサルは「厳しすぎる」ことでも有名でしたが、なんとなく想像できます.
しかし演奏中の苦虫をつぶしたような表情が演奏終了後さわやかな笑顔となり、個々の演奏者に自ら拍手を送る姿が印象に残りました.

良い演奏だとは思いますが、この楽曲は私自身「麻薬中毒の幻覚」のようなイメージを持っており、もっと狂おしくかつ美しく弦を響かせるクリュイタンスの演奏の方がやはり好みですね.

「思い出のルービンシュタイン」

2009年08月27日 | クラシック
20世紀の名ピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタインは1887年に生まれ、1982年に95歳でその生涯を閉じました.
演奏活動が80年にも及ぶ超人です.
このDVDは息子で指揮者でもあるジョン・ルービンシュタインが進行係を務め、父の生涯を映像とインタビューを交えて辿ります.

ルービンシュタインはコンサートでの演奏を好み、聴衆と音楽に浸る喜びを共有できる希有なエンターテイナーでした.
他のピアニストと何かが違う・・・それは彼の明るさです.
社交的で一時遊び呆けて堕落したこともあるくらい.
ピアニストのイメージにありがちな「孤独」「神経質」といった要素を微塵も感じさせません.

しかし、彼はポーランド生まれのユダヤ人という生来の重い荷物をしょっていました.
世界大戦の時代に生き抜くのはつらい思いもたくさんした事でしょう.
晩年ポーランド公演に招かれた際も、故郷に行く事を拒んだそうです.
故郷が戦争で破壊され、知り合い達も殺された・・・荒れた両親の墓を見るのが忍びないという理由から.
それでも周囲に説得され、故郷での公演が実現できました.
その映像は感動的です.

そして今、彼はイスラエルの土の中で眠っています.

「リヒテルー謎ー甦るロシアの巨人」

2009年08月27日 | クラシック
ロシアのピアニスト、スヴャトラフ・リヒテル(1915年 - 1997年)の映像集です.
インタビューを中心に、演奏する映像とエピソードやほかのピアニスト達のコメントで構成されています.
彼は燃え尽きて晩年の境地というような佇まい.自分の日記をひも解きながら回想していきます.

意外なことに彼は音楽学校を卒業していません.
我流でピアノを始め、街のオペラの伴奏者としてキャリアが始まり、戦争に参加したくなくて当時有名なピアノ教師であったネイガウスの元へ飛び込むのでした.エミール・ギレリスもネイガウスの弟子です.
戦争前後のエピソードではソ連がいかに閉鎖的な国だったかを想像させるものでした.

若かりし頃のリヒテルは気性が激しく、大きな体を揺すってエネルギッシュにピアノを弾いていました.
その姿は周囲を圧倒し、一つ一つの音が粒立って生き生きしています.

しかし、年齢を重ねるとともに「フォルテ」より「ピアニシモ」を大切にするように変わっていきました.
暗闇の中で慈しむように弾くシューベルトのピアノ・ソナタは絶品です.
グレン・グールドが「それまで嫌いだったシューベルトをリヒテルの演奏を聴いて開眼した.くどい程の繰り返しや装飾音がすべて命を与えられて聴こえてきた.」とコメントしています.
異端児の彼が他のピアニストを褒めるなんて驚きです!

それから、カラヤン、ロストポーヴィチ、オイストラフと超豪華メンバーで共演した時のエピソードが面白い.
カラヤンとテンポに関する意見が合わなくて苦労した、ロストポーヴィチはカラヤンになびいてしまい、オイストラフ&リヒテル vs カラヤン&ロストポーヴィチの2対2対決だったと回想しています.

名テノール歌手、ディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウとの練習風景も貴重な映像です.
大物との共演にはお互いのポリシーがぶつかり合い、苦労がつきものだったようです.

「アート・オブ・ピアノ」ではエネルギッシュな演奏が印象的でしたが、この映像集ではむしろ静謐な曲が印象に残りました.
前述のシューベルト、カガンと共演したチャイコフスキーのピアノ三重奏曲などなど.

人に歴史あり.