私の音楽 & オーディオ遍歴

お気に入りアーティストや出会った音楽、使用しているオーディオ機器を紹介します(本棚8)。

「アート・オブ・ピアノ」

2009年08月27日 | クラシック
~Amazonの解説より抜粋~
『アート・オブ・ピアノ』は、20世紀のピアノ演奏者の横顔を、爽やかにストレートに表現した。映像に収められたことのある偉大なピアニストたち(グールド、ホロウィッツ、パデレフスキ、ラフマニノフ、リヒテル、ルービンシュタインなど)を、実質上すべて短いセグメントに並べ、ときにはピアニスト自身、あるいは後年の指揮者や世界レベルの音楽家とのインタビューからの抜粋で膨らませた。インタビューは短いが洞察は鋭く、これだけの数の尊敬されるピアニストたちが一堂に会する映像は文字通り、目をみはらせる。(Gary S. Dalkin, Amazon.co.uk)

「アート・オブ・ヴァイオリン」と同じシリーズとして発売されているDVDです.内容は上記の通りとても充実しており、こらからクラシック音楽を楽しもうという人には格好の入門書(いやDVD)となる事でしょう.
私自身もLPレコート時代からクラシック音楽鑑賞を楽しんでいますが、演奏家に対する知識はレコード会社の宣伝文句(キャッチコピー)が主な情報源でしたので、この生きたピアニスト達が登場する映像集には目から鱗がポロポロ落ちました.さらに、現役ピアニスト達が解説しているの内容が興味深く、名演奏家がどのように位置づけられていたのかもわかりました.

以下に印象に残ったピアニストを挙げてみます。

■ パデレフスキ
 聴衆を喜ばせるショーマンシップに富んだ伝説のピアニスト.彼の演奏会は熱気と聴衆の期待感に満ちあふれています.
■ ホフマン
 ピアノという楽器を慈しむように愛し、一体化したと表されています.何でも簡単に弾けてしまう才能ゆえ、完璧過ぎて自滅せざるを得なかった不幸な天才.
■ ホロヴィッツ
 いかにも神経質そうな顔立ち.彼は指を伸ばして演奏するスタイルをとり、その指さばきは美しく、スローモーションの映像はサラブレッドの柔らかい筋肉が鍵盤状を疾走しているようです.人間業には思えません.
■ ルービンシュタイン
 伝統に根ざした堅実な演奏を聴かせ、安心感があります.演奏活動は80年間に及び、コンサートで聴衆と音楽の喜びを分かち合うことができた希有なエンターテイナーでした.
■ コルトー
 夢見る演奏家であり詩人でもありました.生徒の指導に「ピアノを弾くのではなく歌いなさい」とアドバイスしていました.
■ シフラ
 クラシックを演奏する前はハンガリーのバーでジャズを弾いていた、何でもござれの才人.
■ バックハウス
 派手なパフォーマンスとは無縁で、ひたすら正確な音楽を内省的に深めていった賢人(頑固親父?).
■ フィッシャー
 ベートーヴェン~リストから連なる伝統的なピアニズムの精神を録音で残そうとしました.
■ ミケランジェリ
 完璧なテクニックと謎めいたエピソードを残した変人(?).録音も映像もあまり残しませんでした.
■ ギレリス
 戦後登場したロシアのピアニスト.キーシンはギレリスの特徴を「黄金の音色」と評しています。
芸術と政治は無縁の方が良いのでしょうが、時代がそれを許しません.
ギレリスが戦場で慰問・士気高揚目的でグランドピアノを弾き、戦闘機上の兵士がそれを聴いている映像は異様な光景でした.
■ リヒテル
 このDVDの中で一番印象に残ったのはスヴャトラフ・リヒテルです.
リヒテルのパワーは同業のピアニストをおののかせ、指揮者さえも圧倒しました.
胸のすくような快演というイメージのある指揮者ロジェストヴェンスキーでさえ彼との共演を「リヒテルのパワーに押され、あれは共演とは言えなかった」と振り返っています.確かにオーケストラという贅沢な伴奏を伴ったリヒテルの独演会に見えました.
ショパンのエチュード「革命」を演奏する姿は、人間がここまで精神集中できるものなのかと思わせるほど鬼気迫るものです.狂おしい胸の内をピアノに託して吐露しているように見え、胸の底から熱いものがこみ上げてきました.
■ グールド
 現代ピアニストの異端児.
彼の演奏は、従来の「作曲家と聴衆の橋渡しをする表現者」という型からはみ出ています.
むしろ、19世紀以前の作曲家と演奏家と聴衆の垣根が低かった時代・・・作曲家=演奏家であり、聴衆も作曲をして皆音楽を楽しんだ時代のイメージですね.
彼のバッハ演奏は、「友人のバッハ君がこんな素敵な曲を作ったんだよ」と言わんばかり.バッハが乗り移ったような気さえしてきます.実際、彼の録音からはよく鼻歌が聞こえてきます(キース・ジャレットのようなうなり声ではありません)。
■ アラウ
 グールドと対極に位置する存在が、クラウディオ・アラウです.彼は「作曲家と聴衆の橋渡しをする表現者」として一生を捧げた音楽への忠実な奉仕者でした.聴衆の感動するツボを押さえた演奏ですね。

このDVDを観て、聴きたくなった演奏家は・・・ずばり、リヒテルです.
彼の演奏のエネルギーの根源、バックグラウンドを知りたくなりました.
コルトーのアブノーマルな世界にも浸ってみたい.
ミケランジェリは映像が残っていたらもっと観てみたい.
安心してBGMにできるのはルービンシュタイン、バックハウス、アラウでしょうか.

演奏だけ聞いてきた私のイメージがよい意味で崩された素晴らしいDVDです。

「アート・オブ・ヴァイオリン」

2009年08月27日 | クラシック
出演:二十世紀に活躍したヴァイオリンの名手多数、製作:ブリューノ・モンサンジョン.

~Amazonの解説より~
20世紀の偉大なヴァイオリニストたちを集めたブリュノ・モンサンジョンによる『アート・オブ・ヴァイオリン』は完全無欠のドキュメンタリーだ。丹念に収集した(20名以上もの傑出したソリストたちを取りあげている)映像素材には、かけがえのない価値がある。素材はその大半がまさか存在するとは誰も夢にも思わなかった演奏の記録と、インタビューやコメンタリーを交えたものだ。しかし、モンサンジョンはこのプロジェクトを過去の遺物の記録に終わらせず、イツァーク・パールマン、ヒラリー・ハーンといった現代のヴァイオリニストの演奏も収録している。(Roger Thomas, Amazon.co.uk)

色彩豊かな演奏で有名な現役ヴァイオリニスト、イツァーク・パールマン他(イヴァン・ギトリス、ヒラリー・ハーン)を語り部として二十世紀に活躍したヴァイオリニストの歴史をひも解く内容です.その昔、LPレコードでしか知らなかった名演奏家の素顔が同業者であるヴァイオリニストから語られる内容は非常に興味深く、目から鱗が落ちる思いでした.今までの自分のイメージと異なる演奏家も少なからず存在しました.

■ ミッシャ・エルマン
 19世紀というか、古き良き時代の薫りがします.彼のクライスラーのCDを聴いてみたい.
■ ヤッシャ・ハイフェッツ
 その演奏技巧が全世界に衝撃をもたらし、皆が白旗を揚げた名手.彼の演奏はエネルギーの塊が疾走するようだと語られていました.
■ ヨーゼフ・シゲティ
 ヴァイオリン界の貴公子と謳われ、現在もそのモダンさが色あせない.彼の演奏は無骨で素っ気ないと評されていることが多かったのに、意外・・・.
■ ジノ・フランチェスカッティ
 地中海的陽気さを感じさせる人.ズバリ、イタリア的です.
■ ナタン・ミルシテイン
 完璧主義で練習の虫.バッハの無伴奏ヴァイオリン組曲を聴き比べた中で、私は彼の美しい音色の演奏が一番好きでした.
■ ヘンリック・シェリング
 上手だけど個性が今ひとつ.「器用貧乏」のように評されていて、これも意外でした.彼の無伴奏も私のお気に入りです.
■ ダビット・オイストラフ
 信念に基づく音をひたすら刻み込む求道者.脇目も振らずにほっぺの肉をブルンブルン揺らしながら弾く姿は厳格な教師を思わせます.

■ ユーディ・メニューイン
 主役はなんといってもこの人!

このDVDは「一つの時代が終わった」とメニューインの葬儀シーンから始まり、彼のバッハ演奏で終わります.
名実共に二十世紀ヴァイオリニストの象徴であり、演奏家達からも尊敬されていた人物.
イヴァン・ギトリスは「ハイフェッツは神の申し子だった.メニューインはもっと神に近い存在・・・舞い降りた天使だ.」とコメントしています.
何と言いますか、彼の演奏はテクニックとか音色とかを超越した天国的な世界を感じさせ、人間の奥底に潜む「美しい音への希求」という本能を目覚めさせるような気がします.

最後の演奏を聴いていると涙があふれてきて止まりませんでした.
ブラヴォー!

「アントニオ・ストラディヴァリ・ア・ガラ・セレブレイション」

2009年08月27日 | クラシック
(1989年制作)
イタリアの弦楽器製造家、アントニオ・ストラディヴァリにより生み出された名機“ストラディヴァリウス”の魅力が満載された映像作品。その“名機”の素晴らしさを、ピンカス・ズッカーマンやヨーヨー・マなどのインタビューや演奏を交えて紹介する。(Amazonの解説より)

名器の誉れ高い「ストラディヴァリウス」の名前は誰でも一度は耳にしたことはあると思いますが、どこがどう素晴らしいのか説明できる人はあまりいないでしょう.
かくいう私も、他のヴァイオリンとストラディバリウスの音色の違いを聞き分けることはできない一般人です.

でもこのDVDを通して見ると、演奏家達がどれほどこの楽器を尊敬し愛しているかがヒシヒシと伝わってきました.
案内役を務めているピンカス・ズッカーマンの言葉によると「朝日の光のように明るい音」だそうです.

ジャクリーヌ・デュ・プレが病(多発性硬化症)に倒れた後に寂しく眠っていたストラディヴァリウスのチェロを引き継いだのがヨーヨーマだったとは!

制作からすでに20年近く経過しているので、出演している演奏家達が皆若々しい.

ヴィヴァルディの「四季」は楽章ごとにソロ・ヴァイオリニストが入れ替わり、手にするヴァイオリンも異なる種類のストラディヴァリウスという演出付きです.同じストラディヴァリが造ったヴァイオリンでも製作年代により、また演奏家により異なる音色を響かせていました.
第三番「秋」を担当したナイジェル・ケネディは髪を染めた上にラメまで入れ、燕尾服の代わりにラメ入りジャケットと相変わらず出で立ち.
彼の型破りの演奏を受け入れるイギリスの聴衆は懐が深いなあ、と思いました.
以前見たDVDでカラヤンと音楽談義をしていたメニューインが指揮者として登場しています.あのDVDから20年後、メニューイン晩年の映像です.なんだか、彼の典雅なヴァイオリン演奏を聴きたくなりました.

このストラディヴァリウス、一挺(一本)数億円するそうで、ギドン・クレーメルが「高すぎて買いたくても買えない.投機目的で値段をつり上げるのは止めて欲しい.」と訴えている記事を読んだことがあります.
雲の上の世界の話ですね.

「モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第五番《トルコ風》」カラヤン指揮、メニューイン独奏

2009年08月27日 | クラシック
「モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第五番《トルコ風》」
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン、独奏ヴァイオリン:ユーディ・メニューイン、ウィーン交響楽団、1966年制作.
監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー

上記楽曲の練習風景、演奏風景、そしてカラヤンとメニューインの音楽談義がモノクロ映像で収録されています.
製作が1966年ですから1908年生まれのカラヤンは当時58歳.晩年の映像しか観たことのない私にはとても若々しく感じられました.

このDVDのポイントはなんと言っても「監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー」.
クルーゾーは有名な映画監督で、イブ・モンタン主演の「恐怖の報酬」他、名作を残しています.
クラシック音楽の映像は、えてして平坦・冗長な画面に陥りがちですが、そこはさすが映画監督.
画面の構成、ズーム、切り替えなど違和感無く行われ、飽きるどころかどんどん映像に引き込まれていきます.
素晴らしい.

このDVDの第二のポイントは、カラヤンとメニューインとの音楽談義です.
メニューインはハイフェッツ、オイストラフとともに言わずと知れたヴァイオリンの名手で「神の子」と称賛された人物です.後年、指揮も手がけるようになりましたのでカラヤンと同業者と言える面もあります.
主に話題は「指揮」について.
カラヤンが演奏者&独奏者としてのメニューインのスタンスに鋭く切り込みながら、自分の音楽理念を展開します.
カラヤンの声はどちらかと言うとダミ声.
時にメニューインの言葉をさえぎってまで熱く語ります.
遠い存在だったカラヤンが身近に感ぜられて感動モノ。
表現が抽象的なので全て理解はできませんでしたが、彼の指揮活動の根底に流れる思想の一端を垣間見たような気がします.

そして練習風景もインパクトがありました.
微に入り細に入り指示を出すカラヤン.
その度に音色が美しく変わっていくオーケストラ.
魔術のよう.
カラヤンは生前「音を造りすぎる」とか「音の美しさにこだわりすぎる」などの批判的な声もありますが、その生産工場を観ているようでした.
その美しさへのこだわりが広く現代人に受け入れられ、安らぎを与える音楽となりました.
カラヤンの演奏を再編集した「アダージョ」などのCDがヒットしたことは記憶に新しいところです。

メニューインが「演奏者はみな個性がある.あなた(=カラヤン)が指示したことをすぐその通り行うのは必ずしも簡単ではない」とフォローするくらい厳しい要求を楽団員に突きつけます.
「私(カラヤン)は私の理想とする音楽を演奏させるためにオーケストラを鍛える.完璧と思われたその後に、さらなる高レベルの演奏を聴かせてくれることがあり、至高のパフォーマンスに拍手したくなる時がある」とも言っています.
こうして普遍性のある名演奏を残していったのですね。
フルトヴェングラーの後を引き継ぎ、ベルリン・フィルのレベルを世界一に維持した底力を見た思いがしました.

実際の演奏ではカラヤンは夢見るような表情・指揮ぶりでオーケストラを操り、メニューインはヴァイオリンを美しくかき鳴らし・・・至福の時間を演出します.
ブラボー!

「フルトヴェングラーとドイツ・オーストリアのマエストロの時代」

2009年08月27日 | クラシック
原盤名は「GREAT CONDUCTORS THE GOLDEN ERA OF GERMANY AND AUSTRIA」

昔はLPレコードの音源しか縁がないと思われた一時代を築いた名指揮者達の映像集です。
出てくる指揮者は、フルトヴェングラー、フィッシャー、ワルター、R.シュトラウス(自作自演!)、レハール、ヒンデミット、チェリビダッケ、E.クライバー(カルロスのお父さん、カッコいい!)、ブレッヒ、クレンペラー、イッセルシュテット、ジョルジェスク、クナッパーツブッシュ、エルメンドルフ。
1曲の収録時間が数分間と短く、音楽を楽しむというより動くフルトヴェングラーとワルター達を観ることができて感激すべきDVDですね。
残念ながら日本語字幕がないので映し出されている指揮者が誰かわかりにくく、かといってメニューもチャプターも用意されておらず、その都度DVDの裏面の解説で確認しなくてはならないのが面倒でした。