~Amazonの解説より抜粋~
『アート・オブ・ピアノ』は、20世紀のピアノ演奏者の横顔を、爽やかにストレートに表現した。映像に収められたことのある偉大なピアニストたち(グールド、ホロウィッツ、パデレフスキ、ラフマニノフ、リヒテル、ルービンシュタインなど)を、実質上すべて短いセグメントに並べ、ときにはピアニスト自身、あるいは後年の指揮者や世界レベルの音楽家とのインタビューからの抜粋で膨らませた。インタビューは短いが洞察は鋭く、これだけの数の尊敬されるピアニストたちが一堂に会する映像は文字通り、目をみはらせる。(Gary S. Dalkin, Amazon.co.uk)
「アート・オブ・ヴァイオリン」と同じシリーズとして発売されているDVDです.内容は上記の通りとても充実しており、こらからクラシック音楽を楽しもうという人には格好の入門書(いやDVD)となる事でしょう.
私自身もLPレコート時代からクラシック音楽鑑賞を楽しんでいますが、演奏家に対する知識はレコード会社の宣伝文句(キャッチコピー)が主な情報源でしたので、この生きたピアニスト達が登場する映像集には目から鱗がポロポロ落ちました.さらに、現役ピアニスト達が解説しているの内容が興味深く、名演奏家がどのように位置づけられていたのかもわかりました.
以下に印象に残ったピアニストを挙げてみます。
■ パデレフスキ
聴衆を喜ばせるショーマンシップに富んだ伝説のピアニスト.彼の演奏会は熱気と聴衆の期待感に満ちあふれています.
■ ホフマン
ピアノという楽器を慈しむように愛し、一体化したと表されています.何でも簡単に弾けてしまう才能ゆえ、完璧過ぎて自滅せざるを得なかった不幸な天才.
■ ホロヴィッツ
いかにも神経質そうな顔立ち.彼は指を伸ばして演奏するスタイルをとり、その指さばきは美しく、スローモーションの映像はサラブレッドの柔らかい筋肉が鍵盤状を疾走しているようです.人間業には思えません.
■ ルービンシュタイン
伝統に根ざした堅実な演奏を聴かせ、安心感があります.演奏活動は80年間に及び、コンサートで聴衆と音楽の喜びを分かち合うことができた希有なエンターテイナーでした.
■ コルトー
夢見る演奏家であり詩人でもありました.生徒の指導に「ピアノを弾くのではなく歌いなさい」とアドバイスしていました.
■ シフラ
クラシックを演奏する前はハンガリーのバーでジャズを弾いていた、何でもござれの才人.
■ バックハウス
派手なパフォーマンスとは無縁で、ひたすら正確な音楽を内省的に深めていった賢人(頑固親父?).
■ フィッシャー
ベートーヴェン~リストから連なる伝統的なピアニズムの精神を録音で残そうとしました.
■ ミケランジェリ
完璧なテクニックと謎めいたエピソードを残した変人(?).録音も映像もあまり残しませんでした.
■ ギレリス
戦後登場したロシアのピアニスト.キーシンはギレリスの特徴を「黄金の音色」と評しています。
芸術と政治は無縁の方が良いのでしょうが、時代がそれを許しません.
ギレリスが戦場で慰問・士気高揚目的でグランドピアノを弾き、戦闘機上の兵士がそれを聴いている映像は異様な光景でした.
■ リヒテル
このDVDの中で一番印象に残ったのはスヴャトラフ・リヒテルです.
リヒテルのパワーは同業のピアニストをおののかせ、指揮者さえも圧倒しました.
胸のすくような快演というイメージのある指揮者ロジェストヴェンスキーでさえ彼との共演を「リヒテルのパワーに押され、あれは共演とは言えなかった」と振り返っています.確かにオーケストラという贅沢な伴奏を伴ったリヒテルの独演会に見えました.
ショパンのエチュード「革命」を演奏する姿は、人間がここまで精神集中できるものなのかと思わせるほど鬼気迫るものです.狂おしい胸の内をピアノに託して吐露しているように見え、胸の底から熱いものがこみ上げてきました.
■ グールド
現代ピアニストの異端児.
彼の演奏は、従来の「作曲家と聴衆の橋渡しをする表現者」という型からはみ出ています.
むしろ、19世紀以前の作曲家と演奏家と聴衆の垣根が低かった時代・・・作曲家=演奏家であり、聴衆も作曲をして皆音楽を楽しんだ時代のイメージですね.
彼のバッハ演奏は、「友人のバッハ君がこんな素敵な曲を作ったんだよ」と言わんばかり.バッハが乗り移ったような気さえしてきます.実際、彼の録音からはよく鼻歌が聞こえてきます(キース・ジャレットのようなうなり声ではありません)。
■ アラウ
グールドと対極に位置する存在が、クラウディオ・アラウです.彼は「作曲家と聴衆の橋渡しをする表現者」として一生を捧げた音楽への忠実な奉仕者でした.聴衆の感動するツボを押さえた演奏ですね。
このDVDを観て、聴きたくなった演奏家は・・・ずばり、リヒテルです.
彼の演奏のエネルギーの根源、バックグラウンドを知りたくなりました.
コルトーのアブノーマルな世界にも浸ってみたい.
ミケランジェリは映像が残っていたらもっと観てみたい.
安心してBGMにできるのはルービンシュタイン、バックハウス、アラウでしょうか.
演奏だけ聞いてきた私のイメージがよい意味で崩された素晴らしいDVDです。
『アート・オブ・ピアノ』は、20世紀のピアノ演奏者の横顔を、爽やかにストレートに表現した。映像に収められたことのある偉大なピアニストたち(グールド、ホロウィッツ、パデレフスキ、ラフマニノフ、リヒテル、ルービンシュタインなど)を、実質上すべて短いセグメントに並べ、ときにはピアニスト自身、あるいは後年の指揮者や世界レベルの音楽家とのインタビューからの抜粋で膨らませた。インタビューは短いが洞察は鋭く、これだけの数の尊敬されるピアニストたちが一堂に会する映像は文字通り、目をみはらせる。(Gary S. Dalkin, Amazon.co.uk)
「アート・オブ・ヴァイオリン」と同じシリーズとして発売されているDVDです.内容は上記の通りとても充実しており、こらからクラシック音楽を楽しもうという人には格好の入門書(いやDVD)となる事でしょう.
私自身もLPレコート時代からクラシック音楽鑑賞を楽しんでいますが、演奏家に対する知識はレコード会社の宣伝文句(キャッチコピー)が主な情報源でしたので、この生きたピアニスト達が登場する映像集には目から鱗がポロポロ落ちました.さらに、現役ピアニスト達が解説しているの内容が興味深く、名演奏家がどのように位置づけられていたのかもわかりました.
以下に印象に残ったピアニストを挙げてみます。
■ パデレフスキ
聴衆を喜ばせるショーマンシップに富んだ伝説のピアニスト.彼の演奏会は熱気と聴衆の期待感に満ちあふれています.
■ ホフマン
ピアノという楽器を慈しむように愛し、一体化したと表されています.何でも簡単に弾けてしまう才能ゆえ、完璧過ぎて自滅せざるを得なかった不幸な天才.
■ ホロヴィッツ
いかにも神経質そうな顔立ち.彼は指を伸ばして演奏するスタイルをとり、その指さばきは美しく、スローモーションの映像はサラブレッドの柔らかい筋肉が鍵盤状を疾走しているようです.人間業には思えません.
■ ルービンシュタイン
伝統に根ざした堅実な演奏を聴かせ、安心感があります.演奏活動は80年間に及び、コンサートで聴衆と音楽の喜びを分かち合うことができた希有なエンターテイナーでした.
■ コルトー
夢見る演奏家であり詩人でもありました.生徒の指導に「ピアノを弾くのではなく歌いなさい」とアドバイスしていました.
■ シフラ
クラシックを演奏する前はハンガリーのバーでジャズを弾いていた、何でもござれの才人.
■ バックハウス
派手なパフォーマンスとは無縁で、ひたすら正確な音楽を内省的に深めていった賢人(頑固親父?).
■ フィッシャー
ベートーヴェン~リストから連なる伝統的なピアニズムの精神を録音で残そうとしました.
■ ミケランジェリ
完璧なテクニックと謎めいたエピソードを残した変人(?).録音も映像もあまり残しませんでした.
■ ギレリス
戦後登場したロシアのピアニスト.キーシンはギレリスの特徴を「黄金の音色」と評しています。
芸術と政治は無縁の方が良いのでしょうが、時代がそれを許しません.
ギレリスが戦場で慰問・士気高揚目的でグランドピアノを弾き、戦闘機上の兵士がそれを聴いている映像は異様な光景でした.
■ リヒテル
このDVDの中で一番印象に残ったのはスヴャトラフ・リヒテルです.
リヒテルのパワーは同業のピアニストをおののかせ、指揮者さえも圧倒しました.
胸のすくような快演というイメージのある指揮者ロジェストヴェンスキーでさえ彼との共演を「リヒテルのパワーに押され、あれは共演とは言えなかった」と振り返っています.確かにオーケストラという贅沢な伴奏を伴ったリヒテルの独演会に見えました.
ショパンのエチュード「革命」を演奏する姿は、人間がここまで精神集中できるものなのかと思わせるほど鬼気迫るものです.狂おしい胸の内をピアノに託して吐露しているように見え、胸の底から熱いものがこみ上げてきました.
■ グールド
現代ピアニストの異端児.
彼の演奏は、従来の「作曲家と聴衆の橋渡しをする表現者」という型からはみ出ています.
むしろ、19世紀以前の作曲家と演奏家と聴衆の垣根が低かった時代・・・作曲家=演奏家であり、聴衆も作曲をして皆音楽を楽しんだ時代のイメージですね.
彼のバッハ演奏は、「友人のバッハ君がこんな素敵な曲を作ったんだよ」と言わんばかり.バッハが乗り移ったような気さえしてきます.実際、彼の録音からはよく鼻歌が聞こえてきます(キース・ジャレットのようなうなり声ではありません)。
■ アラウ
グールドと対極に位置する存在が、クラウディオ・アラウです.彼は「作曲家と聴衆の橋渡しをする表現者」として一生を捧げた音楽への忠実な奉仕者でした.聴衆の感動するツボを押さえた演奏ですね。
このDVDを観て、聴きたくなった演奏家は・・・ずばり、リヒテルです.
彼の演奏のエネルギーの根源、バックグラウンドを知りたくなりました.
コルトーのアブノーマルな世界にも浸ってみたい.
ミケランジェリは映像が残っていたらもっと観てみたい.
安心してBGMにできるのはルービンシュタイン、バックハウス、アラウでしょうか.
演奏だけ聞いてきた私のイメージがよい意味で崩された素晴らしいDVDです。