私の音楽 & オーディオ遍歴

お気に入りアーティストや出会った音楽、使用しているオーディオ機器を紹介します(本棚8)。

「幻想交響曲」佐渡裕、熱狂ライブ!

2009年08月27日 | クラシック
曲目:「ボレロ」「幻想交響曲」、演奏:佐渡裕指揮、兵庫芸術文化センター管弦楽団、2005年.

何かとメディア、マスコミ出演の多い佐渡さんのライブDVDです.

「熱狂ライブ!」というには盛り上がっているのは指揮台で踊っている佐渡さんだけで、楽団員・聴衆の表情が今ひとつ.
指揮者である佐渡さんの足踏みが異音として録音されており、耳障りです.
オーバーなジェスチャーは、私には歌舞伎で言う「ケレン」にしか見えない.
楽団員と一体化した炎のような演奏を期待していたが、期待し過ぎたようです.

ベルリオーズの幻想交響曲の第二楽章「舞踏会」は私の大好きな楽曲ですが、弦楽器のつややかさと広がりが感じられません.
録音の問題なのか、演奏者のテクニックなのか、素人の私には判断ができませんが.

私にとってのこの曲のベストはやはりアンドレ・クリュイタンス指揮、パリ管弦楽団の演奏です.
そこには「狂おしい美しさとエレガンス」が感じられます.

佐渡さんにはパフォーマンスで魅せる指揮で終わること無く、指揮者とオーケストラが一体化した魂を揺さぶる演奏を期待したいところです.

昔はLPレコードで実際の演奏に思いを馳せる時代でしたが、今はコンサートへ行かなくても手軽に映像が楽しめる時代になり、その点が感慨深いですね.

※このDVDを鑑賞する前にトスカニーニのDVDを観て感動したばかりなので、タイミングが悪かったかもしれません.
トスカニーニと比較するのはかわいそう.
時代を背負い、信念を貫いたトスカニーニの人生には凄みがありましたから.

「トスカニーニ~ザ・マエストロ」

2009年08月27日 | クラシック
ピーター・ローゼン制作、1988年、RCA.日本では当初LDとして発売され、このDVDは完全版として再発売されたもの.

~解説より~
 激動の89年間を世界屈指の指揮者として生き抜き、音楽界ばかりか社会的にも、また時に政治的にも影響を与えた巨匠の生涯を、豊富な映像資料と音源、さらに関係者の証言なども駆使して振り返った映像版アンソロジーと言える.
~ここまで~

 トスカニーニという名前は今から四半世紀前の高校生の頃に知りました.すでに故人となっており、カリスマ性を有する偉大な指揮者だったと本で読み、古い録音のレコードを聴くのみでした.

 そして今、まさか動くトスカニーニの姿を見ることができるとは!.
 それまで指揮者は楽曲に対する自分の解釈を楽団員に知らしめ、率いていく仕事であると考えていた私には、トスカニーニの指揮振りは衝撃的でした.
 彼の指揮とは、自分の解釈ではなく作曲家の意図した音楽を忠実に再現すること.
 それが実現できるまではオーケストラを厳しく指導し、楽団員からは恐れられていたとも伝えられています.
 解釈者より作曲家に近い存在なのです.ピアニストのグレン・グールドが思い出されます.

 あるとき、ヴェルディの某オペラの中でソプラノとテノールのパートを入れ替えるという離れ業を指示しました.
 歌手から「本当に入れ替えるのですか?」と聞かれ、「もちろん.ヴェルディが生きている時は彼自身がよくやったことだよ.」と答えたとのこと.
 彼はマーラーの7歳年下、ドビュッシーの5歳年下という時代に生まれ、ヴェルディ、プッチーニなどイタリア・オペラの神髄を作曲家直伝という形で継承してきた人物です.
 現在の指揮者達は楽譜から作曲家の意図するところを汲み取ることしかできませんが、彼は生の作曲家達と接触し薫陶を受けたのです.大きな違いです.
 
 時代に翻弄される姿も語られています.
 彼は二度の世界大戦を経験していますが、第二次世界大戦前にヒトラーやムッソリーニなどの独裁者が台頭してきた国では決して演奏はしませんでした.同じ時代を生きた喜劇王チャップリンの生涯とイメージが重なります.
 その間、自由を目指すアメリカで主に活動しました.

 このDVDの中に納められている世界各国の国家を繋げた「諸国民の賛歌」は感動的です.
 楽団員は彼の指揮棒から発せられるオーラにより催眠術にかかったよう.オーケストラは一体化し、トスカニーニの楽器として音楽を奏でていました.
 思わず目頭が熱くなりました.
 楽団員の「彼の指揮棒はただの棒じゃない.ストラディバリウスよ.」という言葉にも頷けました.

「クリフォード・ブラウン パーフェクト・コレクション・オン・エマーシー」

2009年08月27日 | ジャズ
夭折した天才ジャズ・トランぺッターのエマーシー・レーベル時代の録音集です.
たった1年半の期間ですが、10年分のエネルギーを凝縮したような濃厚なパフォーマンスの数々.

私のお気に入りのジャズ・トランぺッターはマイルス・デイビス、アート・ファーマー、そしてこのブラウニーです.
プレースタイルは三者三様で節操がないと言われそうですけど.
マイルスの闇夜を切り裂くようなミュート・プレイは精神が研ぎすまされるようで深夜のドライブにぴったり.例えば「1958マイルス」を聴いていると暗闇に吸い込まれていくような錯覚を受けます.
アートの柔らかく温かい音色は心を落ち着かせてくれます.
一方、ブラウニーの魅力は何と言うか・・・体の細胞ひとつひとつが鼓舞されて喜ぶ音.
輝く音色、あふれる歌心、ほとばしるエネルギー、Jazzyな空間・・・そのパフォーマンスはジャズの領域を越えて「命」を表現しているようです.

「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」
「ダイナ・ワシントン・ウィズ・クリフォード・ブラウン」
この2枚のLP(CDではありません!)をレンタルしてテープに録音し、繰り返し聴き入った学生時代.
歌の伴奏ですが、誰しも「このトランペットは誰だ?」と知りたくなるような見事な演奏です.
出しゃばり過ぎず絶妙なタイミングでサポートし、歌手を盛り上げて濃密なJazz空間を造り上げていきます.
特にダイナとの共演は焦げ臭い程の熱気が伝わってきます.

その後も何枚かコンボの演奏CDを入手して聴いてきましたが、いつか全部のCDを集めたいと思ってきました.
このコレクションを通して聴き、久しぶりに幸せな気分になれました.

禁煙して久しい私ですが、ブラウニーを聴くと紫煙を燻らせたくなります.
そういう気分にさせるミュージシャンは、他にはバド・パウエルくらい.
麻薬的な耽溺性があるのでしょうか.
ちなみに、ブラウニーが若くして命を落としたのは麻薬中毒ではなく自動車事故です.
彼が長生きしたら、ジャズ・トランペット界の構図が大きく変わっただろうなあ.

「Queen's Fellows-yuming 30th anniversary album」

2009年08月27日 | ヴォーカル
冬になるとユーミンとオフコースを聴きたくなります.
私は結婚前の「荒井由美」時代の曲が好きです.
そこにはちょっとへそ曲がりで、ちょっと突っ張った、でも自分をしっかり見つめる女の子がいて微笑ましい.
「松任谷由実」も悪くありませんが、売れ線狙いでポップすぎる感じ。

今回はひとひねりあるユーミンのカバーアルバムを入手しました.
鬼束ちひろ、スピッツ、井上陽水、槇原敬之、田島貴男、椎名林檎など一流のミュージシャンが参加しています.
アレンジも手がけ、見事に自分の楽曲にしているのが素晴らしい.
井上陽水の楽曲はよく耳にしますが、これがユーミン提供とは意外でした。

特に気に入ったのは小野リサ.
ボサノバ風のアレンジでやや物憂げに、でも重くならないスタンスで歌い上げていて素敵です.
ユーミンのカバーアルバムを作ったらヒットしそうですね.

槇原敬之の青空にスコーンと突き抜けた感じのボーカルもいいです.

大貫妙子も彼女独特のフランス的な音空間を造っています.
「黒のクレール」を思い出すなあ。

しばらくカーステレオのレギュラーCDとして活躍しそうです.

ステイシー・ケント「ドリームズヴィル」

2009年08月27日 | ヴォーカル
ステイシーは現在活躍中のジャズ・ヴォーカリスト。
最近のアーティストはあまり聴かないのですが、たまたまAmazonのレビューを読んで「ドリームズヴィル」という2000年発表のバラード集をついでに購入したのでした。

素晴らしい!
ややハスキーな柔らかい声が心地よく、フレーズの崩し方や間の取り方も絶妙で、ジャズ・ヴォーカルの魅力が詰まっています。

例えて言うなら、リー・ワイリーとブロッサム・ディアリーを足して2で割ったイメージ。
わかる人にはわかるでしょう?

リー・ワイリーは「ナイト・イン・マンハッタン」を代表作とする白人女性歌手。
「セクシー&エレガント」と言ってもよいし「母性的・癒し系」とも言えそう。
古き良き時代・・・男が男らしく、女が女らしいことが格好良かった時代のジャズ・ヴォーカルです。
心地良いんですよねえ。

ブロッサム・ディアリーは一言でいえば「キュート」。
舌足らずの節回しが「カマトト」と揶揄されることもありますが、私は「Ones upon a Summertime」というアルバムの中の「Tea for Two」はこの名曲のベストシングだと信じる一人です。

「セクシー&エレガント&キュート」
女性の魅力として完璧ですね。

こんなヴォーカルを聴きながらジャズ・クラブでお酒を飲めたら至福の時間を過ごせそう。

いつの間にか彼女のCDをたくさん買ってしまいました。
でも、一番の愛聴盤はコレ。まさに出会いでした。