朝日文庫、2013年発行。
「ツレうつ」関連本をもう一冊。
これはうつ病を患った「ツレ」である旦那と、その妻の漫画家細川貂々さんが、精神科医かつうつ病専門家の大野裕先生のところへ会いに行き、その問答をマンガにしたものです。
ポイントはやはり「うつ患者本人と専門医との対話」でしょう。悩み苦しんだ末の疑問を医師に直球でぶつけ、それを専門医が直球で返しているのですから。
大野先生の著作も数冊読んでいるので、どんな展開になるのか楽しみながら読みました。
なんと言ってもマンガなので読みやすい。
うつ状態の患者さんは活字を追うことさえ億劫ですから、望ましいスタンスの企画です。
全体的に「うつ病って現代医学でもよくわかってないんですよねえ」という内容にガッカリしたというかホッとしたというか・・・微妙な読後感が残りました(苦笑)。
でも、参考になるヒントがあちこちにちりばめられていたのは事実。
貂々さんの「なんでわからないのかな、って考えたらひとりひとり症状が違うことが一番の理由かな」という感想にウンウン頷いた私です。
いくつか抜粋しておきます;
■ うつ病って、結局なんなの?
・・・う~ん、実は僕にもはっきりわからないんですよ。
具体的に言うと、①病気の本体がわかっていない、②病気と健康の境目がわかっていない、③治療法がわかっていない、となります。
■ 心っていうのは脳とか心臓とか体の中にあるのではなく、人と人とが関わったときに発動するものです。
■ うつになりやすい性格ってあるの?
・・・ありません。
例えば、几帳面な人は自分に問題が起こるところまで追いつめちゃう。
例えば、不真面目で何にでも頼ってしまう人は頼りすぎて裏切られることを繰り返して疲れてしまう、等々。
うつにつながるのは「性格」より「極端な考え方のクセ」の方が大きいです。
■ うつ病の治療の内容は?
1.薬:脳のバランスを整える
2.休養:体のバランスを整える
3.認知療法:心のバランスを整える
ただ、完璧な治療法は現在存在せず、総力戦で臨むことになります。
■ 治りかけはどうすればいいの?
・・・うつ病は良くなったり悪くなったりを繰り返して回復します。その波は週単位、月単位の人もいれば年単位の人もいます。
「楽しちゃいけない」という考えを捨てて、一番楽な方向で元に戻っていくのがよいでしょう。どういう生き方をしても大切なのはその人にとって「何が一番いいか」を考えることです。
■ 再発率が高いのはどうして?
・・・再発率は5-6割、もう一回再発すると7割になり次は9割りに・・・
もともと無理をして頑張っている自分が好き、みたいな人も多いから、完全に治って楽なると頑張っちゃう人も多いです。
■ 再発予防策は?
・・・「考え方のクセ」を見直すことです。
■ (大野先生の独り言)うつは必要だと思うんです。
・・・うつは体の防御反応です。頑張りすぎている、無理をしている、そして自分が潰れそうなときうつ症状を出すことで心がブレーキをかけているのです。それを無視してさらに進むと傷はさらに深くなってしまいます。
■ 子どももうつになるの?
・・・子どものうつ病も一割程度います。
子ども社会もそれなりに人間関係の難しさや競争もあります。
不登校になり、学校に行こうとするとお腹が痛くなる、熱が出る、そういう中にうつ病の子どもがいます。
子どもの場合は身体症状(仮面うつ)がよく出ます。
頭が痛い、体がだるい・・・とにかくつらい、というタイプ。
むかつくんだよ!ふざけんな!とイライラ感情を爆発させるタイプもいます。
「仮面うつ」とは、ストレスがたまると体に不調が出ることを言いますが、体の症状に向くけど心には向きにくく、原因がわからず病院を転々としてしまう人もいます。
赤ちゃんにもうつ病があります。第二次世界大戦の時にヨーロッパで親と離ればなれになった赤ちゃんが無表情になって動かなくなったと報告されています。本当に信頼できる人がいなくなって途方に暮れると赤ちゃんでもうつ病になるのですね。
最後のマンガ「病気と私」が興味深い。
貂々さんとツレの間には常にうつ病という病気があり、それが見つめていると時には仙人になり、ときには鬼に見え・・・いったい何なの?
という内容。
わかったようなわからないような・・・でも気になります。
<追記>
最近、うつ病関係の本を何冊か読む機会がありました。
医師側が書いたものは、建前論が基本でちょっとわかりにくい傾向があると感じました。
とくに、「原因/背景にかかわらず、うつ状態が2週間続くだけでうつ病と診断可能」とするDSMの診断基準は、うつ病は特別な病気ではないと認識されるようになったメリットもありますが、安易に診断されて薬漬けにされるという弊害ももたらしました。
患者側の体験談は、真に迫ってきて本から目を背けたくある時もありました。
両方の視点からの本を読むと、バランスのよい知識が得られ、うつ病のイメージが浮かび上がってくると思われます。
お勧めコースは・・・
1,「ツレがうつになりまして」(家族の視点)を観る/読む。
2.「こんなツレでごめんなさい」(患者自身の視点)を読む。
3.「ツレと貂々、うつの先生に会いに行く」(医療者の視点)を読む。
「ツレうつ」関連本をもう一冊。
これはうつ病を患った「ツレ」である旦那と、その妻の漫画家細川貂々さんが、精神科医かつうつ病専門家の大野裕先生のところへ会いに行き、その問答をマンガにしたものです。
ポイントはやはり「うつ患者本人と専門医との対話」でしょう。悩み苦しんだ末の疑問を医師に直球でぶつけ、それを専門医が直球で返しているのですから。
大野先生の著作も数冊読んでいるので、どんな展開になるのか楽しみながら読みました。
なんと言ってもマンガなので読みやすい。
うつ状態の患者さんは活字を追うことさえ億劫ですから、望ましいスタンスの企画です。
全体的に「うつ病って現代医学でもよくわかってないんですよねえ」という内容にガッカリしたというかホッとしたというか・・・微妙な読後感が残りました(苦笑)。
でも、参考になるヒントがあちこちにちりばめられていたのは事実。
貂々さんの「なんでわからないのかな、って考えたらひとりひとり症状が違うことが一番の理由かな」という感想にウンウン頷いた私です。
いくつか抜粋しておきます;
■ うつ病って、結局なんなの?
・・・う~ん、実は僕にもはっきりわからないんですよ。
具体的に言うと、①病気の本体がわかっていない、②病気と健康の境目がわかっていない、③治療法がわかっていない、となります。
■ 心っていうのは脳とか心臓とか体の中にあるのではなく、人と人とが関わったときに発動するものです。
■ うつになりやすい性格ってあるの?
・・・ありません。
例えば、几帳面な人は自分に問題が起こるところまで追いつめちゃう。
例えば、不真面目で何にでも頼ってしまう人は頼りすぎて裏切られることを繰り返して疲れてしまう、等々。
うつにつながるのは「性格」より「極端な考え方のクセ」の方が大きいです。
■ うつ病の治療の内容は?
1.薬:脳のバランスを整える
2.休養:体のバランスを整える
3.認知療法:心のバランスを整える
ただ、完璧な治療法は現在存在せず、総力戦で臨むことになります。
■ 治りかけはどうすればいいの?
・・・うつ病は良くなったり悪くなったりを繰り返して回復します。その波は週単位、月単位の人もいれば年単位の人もいます。
「楽しちゃいけない」という考えを捨てて、一番楽な方向で元に戻っていくのがよいでしょう。どういう生き方をしても大切なのはその人にとって「何が一番いいか」を考えることです。
■ 再発率が高いのはどうして?
・・・再発率は5-6割、もう一回再発すると7割になり次は9割りに・・・
もともと無理をして頑張っている自分が好き、みたいな人も多いから、完全に治って楽なると頑張っちゃう人も多いです。
■ 再発予防策は?
・・・「考え方のクセ」を見直すことです。
■ (大野先生の独り言)うつは必要だと思うんです。
・・・うつは体の防御反応です。頑張りすぎている、無理をしている、そして自分が潰れそうなときうつ症状を出すことで心がブレーキをかけているのです。それを無視してさらに進むと傷はさらに深くなってしまいます。
■ 子どももうつになるの?
・・・子どものうつ病も一割程度います。
子ども社会もそれなりに人間関係の難しさや競争もあります。
不登校になり、学校に行こうとするとお腹が痛くなる、熱が出る、そういう中にうつ病の子どもがいます。
子どもの場合は身体症状(仮面うつ)がよく出ます。
頭が痛い、体がだるい・・・とにかくつらい、というタイプ。
むかつくんだよ!ふざけんな!とイライラ感情を爆発させるタイプもいます。
「仮面うつ」とは、ストレスがたまると体に不調が出ることを言いますが、体の症状に向くけど心には向きにくく、原因がわからず病院を転々としてしまう人もいます。
赤ちゃんにもうつ病があります。第二次世界大戦の時にヨーロッパで親と離ればなれになった赤ちゃんが無表情になって動かなくなったと報告されています。本当に信頼できる人がいなくなって途方に暮れると赤ちゃんでもうつ病になるのですね。
最後のマンガ「病気と私」が興味深い。
貂々さんとツレの間には常にうつ病という病気があり、それが見つめていると時には仙人になり、ときには鬼に見え・・・いったい何なの?
という内容。
わかったようなわからないような・・・でも気になります。
<追記>
最近、うつ病関係の本を何冊か読む機会がありました。
医師側が書いたものは、建前論が基本でちょっとわかりにくい傾向があると感じました。
とくに、「原因/背景にかかわらず、うつ状態が2週間続くだけでうつ病と診断可能」とするDSMの診断基準は、うつ病は特別な病気ではないと認識されるようになったメリットもありますが、安易に診断されて薬漬けにされるという弊害ももたらしました。
患者側の体験談は、真に迫ってきて本から目を背けたくある時もありました。
両方の視点からの本を読むと、バランスのよい知識が得られ、うつ病のイメージが浮かび上がってくると思われます。
お勧めコースは・・・
1,「ツレがうつになりまして」(家族の視点)を観る/読む。
2.「こんなツレでごめんなさい」(患者自身の視点)を読む。
3.「ツレと貂々、うつの先生に会いに行く」(医療者の視点)を読む。