運動は健康に良いということは広く知られていることですが、一般成人の健康増進には、中等度強度の有酸素運動を、1週間あたり150分以上おこなうことが各種ガイドラインで推奨されています。
近年の研究から、運動は単に体に良いというだけでなく、認知機能の向上、加齢に伴う退行性変化や神経変性疾患の抑制、神経障害からの回復など、脳・神経系へも多様な効果をもつことが明らかになってきていて、運動は脳の健康にも有益だということもわかってきているのです。
中枢神経系に広く存在している脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain-derived neurotrophic factor)は神経栄養因子の1つで、TrkB(Tropomyosin receptor kinase B)受容体と結合し細胞内シグナルを活性化することで、細胞の生存や成長、シナプスの可塑性などに有益な作用をもたらす因子なのです。
運動が脳におけるBDNF発現を増強することは、1995年にNeeperらによって最初に報告されています。その後、運動によるBDNF発現増強は様々な脳領域(大脳皮質、海馬、線条体、小脳)や脊髄で起こることが、研究結果として多数報告されています。つまり、運動は多様な領域で神経栄養因子の発現を増強し、神経新生や回路機能の強化、神経保護作用など、神経機能の維持や可塑性の誘導にはたらくと考えられるのです。動物実験は勿論、人間においても自転車エルゴメーターなどの有酸素運動をした後に、血中BDNF濃度が増加することが示されているのです。
運動は身体に良いだけではなく脳や老化抑制にも効果があることが科学的に証明されているのです。最近「健康寿命」という言葉を良く耳にします。医学が進化した現代では「平均寿命」はどんどん長くなる傾向にありますが、薬や医療機器の助けを受けて寝たきりの老後を考えてみて下さい。
日々の仕事に追われ、ストレスから暴飲暴食、退職後はこれといった趣味もなくただ家でゴロゴロ、そんな生活が長く続くと「健康寿命」は短くなってしまいます。そんな人こそ運動が必要なのです。わざわざジムなどに通わなくても自転車に乗るだけで、結構良い運動になるのです。ジョギング等と比べても脚にかかる負担も少ないので、私のような高齢者でも続けられるのですから。
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