願奉口上 第一頁、一~二行目。 たいへんご無沙汰致しました。風邪も完全に治り、少し落ち着きましたので、再開します。 この文書は、はじめの部分が欠けておりますが、全体の文意に支障は有りませんので、使用させて戴きます。串本町史(史料編)に解読は載っています。古文書としては、文字が綺麗で、虫食いは無く、理想的な教材と言えます。
解読 八月十六日始メ引申様ニ村中
相談仕引セ申候。然処ニ當立毛
読み 八月十六日始め引き申す様に、村じゅう
相談仕り、引かせ申し候。然る処に当立ち毛
解説 この古文書は、二種類の文書が残っており、不思議な事に、二種とも前の部分が欠けています。前回までは、田並と有田の争いでしたが、今回は、田並浦と田並上村の隣村同士の争いになります。
「始メ引申様ニ」・・・「引」の次の「ト」の様な字が「申」です。「始め引き申す様に」という意味がよく判りませんが、「引き始める様に」と解釈して置きます。「引く」とは「苫草」『とまくさ』を引く事。「苫草」を刈り取る事。 二行目、「相談仕」・・・相談仕り。相談をして。 「引セ」・・・引かせ。 「申候」・・・「P」様な崩し字の下部が右に跳ねている所は「候」です。 「然処ニ」・・・然る処に。ところが。 「當」・・・当年の。 「立毛」・・・「成長した稲」のこと。
「苫」・・・「苫草」・・・菅『スゲ』や薄『ススキ』や萱『カヤ』の様な植物で、鎌で刈り取って乾燥させ、屋根の材料や、俵の材料など、昔の庶民の生活には無くてはならない重要な生活資材でした。