古文書に親しむ

古文書の初歩の学習

第十七章 潮岬会合 その二十五

2013年03月31日 08時31分12秒 | 古文書の初歩

 

潮岬会合「乍恐言上 返答」第四ページ、上の画像の七~八行目

 

解読 以前より網六状分浦御奉行様御手形を取参

    猟仕候得共、此分計ニ而者不及是非御王ひ事

読み 以前より網六状分、浦御奉行様御手形を取り参り

  漁仕り候えども、此の分ばかりにては是非に及ばす御詫び事

 

解説 「網六状」・・・。 「分」・・・この崩し字も難しい。形で覚える。 「浦御奉行」・・・周参見代官所奉行、植木小右衛門の事。 「御手形」・・・証明書。保証書。 「取参」・・・取り参り。証明書を取って来て。 「猟仕候得共」・・・漁をしたが。 「此分」・・・「此」は「氏」に似ていますが、形で覚える崩し方です。 「分」は前行に出ました。 「計ニ而者」・・・「ばかりにては」。此の分だけでは。「斗」のような字は「計」の崩し字。 「不及是非」・・・下から返って「是非に及ばず」と読む。「仕方が無い」。「やむを得ない」。 「御王ひ事」・・・お詫びごと。


第十七章 潮岬会合 その二十四

2013年03月30日 05時43分34秒 | 古文書の初歩

 

潮岬会合「乍恐言上」第四ページ、上の画像の五~六行目

 

解読 ニ而ゑと取猟仕候。夫より外之網代ニ而者ゑと一

    圓為取不申候。然処江比井からこ猟舩八九年

読み にてえど捕り漁仕り候。夫れより外の網代にてはゑど一

    円取らせ申さず候。然る処へ比井からこ漁船八九年

 

解説 上浦から来た漁船はわらべが嶋網代で、餌鰯捕り漁をした。 「夫れより外の網代」・・・わらべが嶋以外の網代」。 「ニ而者」・・・にては。に於いては。 「ゑと」・・・餌所の略で、更に「餌所に集まっている鰯」のことを略して言っています。 「一圓」・・・『いちえん』。全域。「圓」の崩し方は形で覚える字。 「為取」・・・「取らせ」と読む。「為」は下から返って、「し」「させ」と読み使役の助動詞です。 「然処江」・・・然るところへ。 「比井」・・・前出。和歌山県日高町の浦名。 「こ猟舩」・・・これはよく分かりませんが、「小猟舩」、小さい漁船の事か。


第十七章 潮岬会合 その二十三

2013年03月29日 06時39分23秒 | 古文書の初歩

 

潮岬会合「乍恐言上 返答」上の画像の三~四行目

 

解読 是を遣し申御事。

    一 上浦猟舩参候時者、右之王ら遍が嶋中網代

 

読み 是を遣わし申すおん事。

   一つ 上浦漁船参り候時は、右のわらべが嶋中網代

 

解説 「是を」・・・このえど網代の嶋を。 「遣し申す」・・・利用させてあげる。 「御事」・・・『おんこと』と読みます。以上の内容のこと。返答の第二項目目になります。 次行の「一」は、返答の第三項目。 「上浦猟舩」・・・周参見以北の漁船。 「参候時者」・・・「参」は形で覚える。次の点は「候」、「時」の次は「者」・・・「は」。 「右之」・・・右記の。右に述べたところの。 「王ら遍可嶋中網代」・・・「わらべが嶋じゅう網代」・・・わらべが嶋にある網代。「王」は「わ」、「遍」は「へ」の変体仮名です。


第十七章 潮岬会合 その二十二

2013年03月28日 06時38分30秒 | 古文書の初歩

潮岬会合「乍恐言上 返答」第四ページ上の画像の一~二行目

 

解読 くれ候へ与被仰候ニ付、及是非不申田并江田之

    沖成王ら遍可石と申ゑと網代壱嶋御座候、

読み   くれ候えと仰せられ候に付き是非に及び申さず田並江田の

    沖成るわらべが石と申すゑと網代一嶋御座候、

 

解説 「くれ候へ与」・・・簡単な文字ですが、読み方としては最難関なところです。「くれ」の次の小さい「し」の様な字は「候」で、「へ」の次は変体仮名「与」で「と」と読みます。 「被仰候ニ付」・・・「被」は受け身や尊敬を意味する助動詞で、「○○られ」、「○○され」等と読みます。ここは「仰せられ」。 「候」・・・は形で覚える。「候」の崩し方は数限りなくあります。「ニ付」・・・「月」に見える字は「付き」。 「及是非」・・・下から返って「是非に及び」。 「不申」・・・申さず。「不及是非」・・・「是非に及ばす」と書くよりも「及び申さず」の方が丁寧な言い方になります。 「田并」・・・「并」は「並」の旧字体で、現在の「田並」のこと。「串本町大字田並」。 「江田」・・・串本町大字江田。「江田」と「田並」は隣合った集落です。最後は「之」、本行五文字目の「与」とよく似た紛らわしい書き方です。 「沖成」・・・沖成る。沖に有る。 「王」、「遍」、「可」はいずれも変体仮名で、「わ」、「へ」、「か」。「わらべが石」と言う嶋「暗礁?」の名称。 「ゑと網代」・・・餌所の網代。 「壱嶋」・・・「一嶋」


第十七章 潮岬会合 その二十一

2013年03月27日 07時49分01秒 | 古文書の初歩

潮岬会合「乍恐言上 返答」その三、原文無しは今日まで。原文の解読文は「串本町史史料編」及び「串本のあゆみ」から借用しました。

一つ書きの第二項目の続き

解読文 其時植木小右衛門殿御決被為成、先規之ごとく見老津より

     下田原迄之例網代ニ相済申事、其隠無御座候。然処其後

     小右衛門殿被仰候ハ、浅野左右衛門殿被仰候由ニ而、藤田

     下右衛門殿被申候間、何れ之所ニ而もゑと網代壱嶋やり候て

読み  其の時、植木小右衛門殿お決め成させられ、先規の如く見老津より

     下田原迄の例網代に相済し『相なし』申す事、其の隠れ御座無く候。

     然る処其の後小右衛門殿仰せられ候は、浅野左え門殿仰せられ

     候由にて、藤田下え門殿申され候間、何れの所にてもえど網代

     ひと嶋やり候て(くれ候へと・・・と続く)

解説  「其の時」・・・上・下両者有田浦で対決の際。 「植木小右衛門」・・・周参見駐在奉行。 「御決被為成」・・・お決め成させられ。「為」は使役の助動詞、「せ」・「させ」。 「先規之ごとく」・・・以前からの規則の通り。 「例網代」・・・例の網代。 「相済申事」・・・「済」は「なす」と読む。決めた事をやり遂げる事。 「其隠れ御座無く候」・・・其れが無くなる心配は無い。 「然る処」・・・そうでは有るが、然しながら。 「浅野左え門」・・・田辺藩主。 田辺藩主浅野殿が仰せられたとの事で。 「藤田しもえ門殿」・・・不明。 「何れの所にても」・・・どこでも良いから。 「えど網代壱嶋」・・・餌の鰯を捕る網代を一嶋(一箇所)だけでも。 「やり候て」・・・与えて。やって。 

「文意」・・・奉行の植木殿が現地へ出張して、両者の言い分を聞き、今まで通りに見老津~下田原の網代である事を確認したが、その後田辺藩主の要望で、一つの嶋だけでよいから、餌所をやって欲しいと言うので。 明日から古文書学習に戻ります。