21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

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「交付金」など様々な手段で地方に原発施設を押しつける国の原発推進政策: 交付金漬けになる地方の中小自治体 山口県上関の使用済み燃料中間貯蔵施設、青森県六ケ所村の再処理工場・むつ市の中間貯蔵施設

2023-10-03 20:27:11 | 記事
《 2023年10月:第117回・脱原発市民ウォーク in 滋賀のご案内 》

これまでにない猛暑の夏が過ぎ、ようやく過ごしやすい季節になりました。
次回の脱原発市民ウォークを10月7日(土)におこないます
(JR膳所駅前広場:午後1時半)。

どなたでも自由に自分のスタイルで参加できます。
都合のつく方はぜひ足をお運びください。


「交付金」など様々な手段で地方に原発施設を押しつける国の原発推進政策:
交付金漬けになる地方の中小自治体
山口県上関の使用済み燃料中間貯蔵施設、青森県六ケ所村の再処理工場・むつ市の中間貯蔵施設



去る8月18日に、山口県上関(かみのせき)町で、町長が中国電力・関西電力の使用済み燃料の中間貯蔵施設建設に関する調査の受け入れを表明しており、また、9月12日には長崎県対馬市の議会が、高レベル放射性廃棄物の最終処分場を選定するための第一段階である「文献調査」の受け入れの促進を求める請願が賛成多数で採択するなど(注参照)、今年になって地方での原発施設の受け入れに関する動きが活発になっています。(注:しかし、比田勝尚・対馬市長は文献調査に応募しない方針を9月27日に市議会本会議で表明しました)

上関町や対馬市に限った話ではありませんが、原発施設の誘致を考えるのは、ほとんどの場合、過疎化による人口減少や高齢化、地場産業の衰退などにより財政状態が厳しい小さな地方自治体(市町村)です。これらの自治体は財政状態の悪化をくいとめ改善するための手段として、様々な形で国が用意している原発関連の交付金に頼ることを考えます。このため、国は原発政策を推進するために、すなわち原発関連施設を地方に受け入れさせるために、原発そのものだけではなく関連施設も対象にして、様々な交付金制度を設けています。特に、岸田政権が脱炭素実現のためと称して原発を最大限に活用する方針を掲げてからは、原発の再稼働の促進、原発の新設などを視野にいれた新たな交付金制度が考えられ、実行に移されつつあります。

国の原発に関連した交付金の制度は複雑でわかりにくいのですが、私たちが思っている以上に交付金の対象は多方面に広がっており、その金額も膨大なものとなっています。このため交付金の影響力も極めて大きなものになりつつあります。このため私たち市民は国による原発関連の交付金の動きに無関心でいるわけにはいきません。以上の意味から、原発関連の交付金など、いわゆる「原子力マネー」の実情・実体を理解していただくために、まず初めに、原発施設を誘致した場合に関連した国の交付金の類がどのように支払われることになるのか、最近注目されている山口県上関町の使用済み燃料の中間貯蔵施設の建設を実例として、具体的に説明します。次いで、「電源三法交付金」と称されている原発施設の建設に関する国の交付金制度の全体像について、その概要を示すとともに、原発推進のための最近新たに設けられている交付金制度などについて説明します。

Ⅰ:山口県上関町が燃料中間貯蔵施設の調査を受け入れた背景と建設に関連した各種交付金について

上記のように去る8月18日、山口県上関町の西哲夫町長が、中間貯蔵施設(注参照)の建設に向けた中国電力と関電による調査を受け入れることを表明しました。あくまでもまだ調査受け入れの段階ですが建設が実現されれば、完成すれば、青森県むつ市に次いで国内で二カ所目の中間貯蔵施設になります。

(注)「中間貯蔵施設」:本来であれば各原発の使用済みの核燃料は原発内のプールで保管された後、青森県六ケ所村の使用済み燃料の再処理工場に搬入されるはずなのですが、再処理工場の完成が大幅に遅れているため現在のところ搬入できません。このため使用済み燃料は原発敷地内のプールに保管されていますが、プールの保管容量に余裕が少なくなりつつあり、原発によっては、このまま放置するとプールは満杯になり使用済み燃料の保管場所がなくなり、その結果、原発による発電を続けることができなくなりかねません。電事連の調査では、今年3月末の時点で、国内にある原発内の貯蔵容量2万Ⅰ350トンのうち7割以上が埋まっています。関電高浜原発では、あと4年で発電敷地内の貯蔵施設が満杯になります。このような事態を避けるために窮余の策として計画されたのが中国電力と関西電力の共用による中間貯蔵施設です。再処理工場への搬入が可能になるまで、一時的に使用済み燃料を原発の敷地外に保管するための施設です。いつ再処理工場に搬入され実際に再処理が実施されるようになるかは現時点ではまったく不明です。このため、中間貯蔵施設が最終処分場と化してしまうのではないと懸念する声もあります。

中間貯蔵施設に関しては、調査受け入れだけでも、知事が同意するまでに、最大1.4億円が国から交付され、次いで知事同意後の2年間に最大9憶8000万円が交付されます。さらに、建設や運転段階では貯蔵容量に応じて(保管料を意味していると考えられる)交付金が出されます。また、実際に建設されれば固定資産税が入ります。このため、上関町の町長は「交付金や固定資産税が入れば、町の財政が安定するのは間違いない」としています。また、西日本新聞(2023年9月8日デジタル版)の社説によれば「立地調査から50年間の操業期間が終えるまでに、約350憶円の交付金が支給されることになる。これが受け入れの決め手になった」とされています。

上関町の場合、同町内に原発を建設する中国電力の計画が以前からあるため、関連の交付金がすでに支払われてきました(注1参照)。原発建設計画は福島原発事故後に中断されていますが、再開されれば、上記の中間貯蔵施設に関連した交付金以外に、原発建設に関連した交付金の収入が今後期待できるとされています。また一方において、上記のように原発関連の交付金が中断されているため、その後、高齢化・過疎化などにより財政が窮迫しているとして(注2)中国電力から何度も多額の寄付を受けています(注3参照)
(注1)発建設計画に関して国からすてに多額の交付金が出ています(金額:1984~2010に総額45憶円:原子力発電施設等立地地域特別交付金、当時の人口3500人)。以上は〈「原発のコスト」:大島堅一、岩波新書,2011年12月刊〉より。しかし2009年4月から敷地造成などの準備工事に着手していたものの、福島原発事故後に工事が中断され、交付金の支給も止まっています)

(注2)この40年で人口は3分の1の2310人に。高齢化率6割近い。町税収入は2億円に満たない。

(注3)中国電力は07~100年に24億円、震災後の18年に8億円、19年に4億円を上関町へ寄付しています。


Ⅱ:原発施設に関する国の交付金制度:電源三法交付金の概要について

次に、原発・原発関連施設を対象とした国の交付金制度について、その概要を示します。原発に関する地方自治体への交付金は「電源三法」と称される法律に基づいた「電源三法交付金」の制度に基づいています。この交付金は基本的には原発の立地に関するコストを対象としたものです。しかし、実際には交付金の対象は原発だけでなく原発関連施設(使用済み燃料再処理工場や使用済み燃料の中間貯蔵施設、高レベル放射性廃棄物最終処分場など)をも含めた多様なものとなっています。特に岸田内閣が脱炭素の手段として原発を推進することを、原子力基本法などの関連法規を改正することにより、政策として正式に決定しており、このため、最近は原発の再稼働や新増設、プルサーマル発電などを推進するための交付金などが設けられるようになっています。

電源三法とは、具体的には「電源開発促進税法」、「特別会計に関する法律(旧 電源開発促進対策特別会計法)」、「発電用施設周辺地域整備法」と称される法律を意味しています。これらの法律の主な目的は、電源開発が行われる地域に対して補助金を交付し、これによって電源の開発(発電所建設など)の建設を促進し、運転を円滑にすることであるとされています。

1960年代以降、日本の電力は、火力発電所に比重を強めていましたが、1973年に起きた第1次石油危機のために、火力発電所に依存する日本経済は大きく混乱しました。この経験を受けて、1974年に火力発電以外の電源を開発することによって電力に関するリスクを分散し、火力発電への過度の依存を脱却することを目的として、電源三法が制定されたとされています。電源三法による地方自治体への交付金は「電源三法交付金」と称されています。このような電源三法の体系は1974年に作られました(以上の電源三法に関する説明は主に「ウィキペディア」などによる)。

原発の新設が決まると、環境への影響に関する評価の開始時点から交付金の支払いが開始され、その後は、運転開始、稼働期間を通じて支払われることになります。支払われる交付金は、大きくは5種類の交付金から成る「電源立地地域対策交付金」と「原子力発電施設立地地域共生交付金」です。

・原発1基あたり45年間に1240憶円の電源三法交付金(2010年当時)
資源エネルギー庁による2010年3月の資料(「電源立地制度の概要」)に基づけば、135万キロワットの原発の場合、建設期間を10年とした場合、運転開始までに449憶円が自治体(立地市町村に支給される場合もあれば立地道県に支払われる場合もあります)に支払われ、さらに運転開始後も年間20億円程度の交付金が出され、運転開始後30年を超え原発が老朽化すると「原子力発電施設立地地域共生交付金」が追加され、30~34年目には30億円程度が自治体に入ります。これらをすべて合計すると、原発1基当たり1240憶円が45年間の間に支給されることになります。(以上、資源エネルギー庁の資料に関しては前掲書「原発のコスト」による)。福島原発事故後から現在までに、とくに岸田政権により脱炭素を理由に原発推進の政策が決定されてからは、後に述べるように新たな内容の交付金制度なども設けられているために、また関連法の改正により運転期間が60年超になる場合も考えられるため、上記の1基あたり1240億円という電源三法に基づく交付金の総額は、今後さらに大きなものになるものと考えられます。

・交付金の財源
電源交付金の財源は「電源開発促進税」と称される税金です。この税は消費者が支払う電気料金に含めて徴収されるため、税制に基づく需要がなくても、すなわち交付金支払いの必要性がなくても、資金的には毎年確保されます。このように税収に余裕があるため、使途が次第に拡大され、2003年度からは地場産業振興、コミュニティバス事業、外国人講師の採用による外国語授業などにまで支援の対象になっている事例も存在しています。もともと交付金の使途は、公民館や体育館、温水プールなどの公共施設に限定されていましたが、現在も公共施設が主な使途となっています。以下に交付金の使途の例として、山口県上関町、再処理工場が建設中の青森県六ケ所村、中間貯蔵施設を誘致した青森県むつ市の場合を示します。


Ⅲ:交付金使途の実態:原発施設を立地している自治体の財政に大きな影響を及ぼしている交付金

《山口県上関町の例(町予算歳入の大きな部分を占める原発と中間貯蔵施設の交付金)》

先に述べたように、山口県の上関町(人口約3500人)は上関原発の建設を対象に1984~2020の間に約45億円の交付金が支払われており、その結果、2011年度一般会計当初予算歳入(44億円)のうち、税収部分は歳入部分の5%にあたる約2億千万であったのに対して、原発がらみの歳入はおよそ3分の1に当たる約14億円に達していました。このため、交付金は中国電力からの多額の寄付(2007年以降24億円)とともに、原発受け入れの原動力になっています。このように、交付金は地元自治体を原発がらみの資金漬けとも言うべき状態にしてしまいます。その後、福島第一原発の大事故のため原発の建設が中断されたために原発建設に関係した交付金は中断されていますが、中間貯施設の建設が決まれば前述のように中間貯蔵施設の建設に伴う交付金が長期〈50年間〉にわたり支給されることになるため、町の予算において交付金が占める割合が高い状態が今後も長期にわたり続くものと考えられます。

《青森県六ケ所村の例(使用済み核燃料の再処理工場):「再処理の事業がなくなれば、貧しい過去に逆戻りだ」の声も》

青森県六ケ所村((人口2021年3月31日現在:約1万100人)に建設中の核燃料サイクルの中核施設である再処理工場は、1993年に着工されたのですが、未だに完成しておらず今後の見通しは不透明です。しかし、これまでに極めて膨大な費用が投入されており、2021年6月28日の 日経(デジタル版)によれば、「経済産業省の認可法人である〈使用済燃料再処理機構〉(青森市)が、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場の総事業費が14兆4400億円になったと発表した」とされています。

核燃料サイクルの中核施設である再処理工場の計画は、上記のように、通常の原発新設とは比較にならない、これまでに例がない極めて大規模の事業です(通常の原発の建設費は、以前は5000億円~6000憶円程度、最近は安全対策費などにより大幅に増えており、場合によっては1兆円超になるとされています)。このため、建設工事開始から今年で30年が経ちますが、この間、通常の原発建設に伴う交付金をはるかに上回る膨大な額の交付金や関連費用が国から支出されているものと考えられます。しかし、交付金など関連費用の総額がどの程度のものであるか、その全体像は定かではありません。このため、交付金などに関して、最近明らかにっている事柄だけを以下に記すものとします。

六ケ所村は春から夏にかけて吹く「やませ」のために農業は振るわず、不漁も続き、農家は出稼ぎをせざるを得ませんでした。高度成長期に石油コンビナート建設計画が国策として浮上したものの、賛否で村を二分されましたが計画はとん挫、そのあと1980年代に再処理工場建設が計画され、1993年から建設工事が開始されました。

六ケ所村では、再処理工場に関して、かつて賛否で村が二分されることもありましたたが、高齢化や転出などにより、今では反対派はわずかであるとされています。工事着工の1993年以降、様々な交付金が入り続けるため、再処理工場はいまだに未完成なのですが、「再処理の事業がなくなれば、貧しい過去に逆戻りだ」、「ずっと未操業が一番」との声さえあるとされています。村内には再処理事業を担う日本原子力燃料㈱や関連会社の関係者も多数いるため、今では表立って反対する声はわずかであるとされています。再処理施設に関する1985~2021年の工事発注額は約5兆円ですが、そのうち9000億円超を県内の企業が受注しています。そのうえ、多額の固定資産税が地元自治体に入るなど、稼働せずとも村や県は経済的に潤うことになります。さらには、再処理工場が稼働すれば税収が増えることが期待できます。

・六ケ所村、交付金漬けの構図:
六ケ所村の2022年度の一般会計の歳入は約150億円ですが、このうち日本原燃にかかわる電源立地地域対策交付金が約15%を占めており、約22億円に達しています(朝日デジタル版2022年9月8日による)。再処理工場は建設から操業段階に変わると交付単価が上がり、固定資産税も入るため、村の財政にとって再処理工場が操業するに至るかどうかは大きい問題です。村の幹部は「稼働すれば税収が30億円増える」と期待しています。

 使用済み燃料が搬入されなくても、再処理工場が稼働しなくても、誘致に手を上げた六ケ所村には国から交付金が入ることになります。肝心の使用済み燃料が搬入されない以上、核のリスクにさらされることもありません。このため、上記のように「ずっと未操業が一番だ」という地元の本音も聞かれるという有様です。原子力施設の是非を巡って住民が分裂し、施設受け入れに賛成した住民だけ残った結果、このような、まさに「交付金漬け」という状況が生じていると言えます。

(以上、六ケ所村の状況に関する説明は、主に2023年9月10日付け「47News」デジタル版の「核のまちを受け入れたら、今後どうなる」と題された共同通信の記事によるものです)

・青森県むつ市の例(中間貯蔵施設):財政悪化の打開策は50年間で1000億円の「核燃料税」
青森県むつ市(人口約5万4000人)は2003年に東電と日本原電との合弁会社による中間貯蔵施設の誘致を表明しましたが、一方において、交付金獲得の手段として、貯蔵される使用済み核燃料の量に合わせて課税する独自の「核燃料税」を導入することに関して、国の同意を得ました。このため貯蔵開始か50年間で1000億円以上の税収が独自財源として見込まれています。最終的に5千トンを最長50年間保管とされています。むつ市の今年度(2023年度)の一般会計当初予算総額は405億とされていますから、今後予算総額が大きく変動しないとすると、「核燃料税」により2年半分の予算が賄われることになります。むつ市の場合、税金として事業者から徴収する形をとっていますが、この独自の税制は国の許しを得たものであるため、実質的には、国による交付金に代わるものであると言えます。
むつ市は赤字団体へ転落するかもしれないとい危機感から中間貯蔵施設を誘致したという経緯があります。当時、宮下宗一市長(現青森県知事)は「国策に依存していると皆さんは見ると思う。だが自主財源として確保できれば、未来をつくる資金になる」としていました。


Ⅳ:電源三法交付金に代わる原発施設立地自治体への対策、原発の強力な推進を意図した様々な名目による新たな制度や交付金の出現

電源三法交付金の制度による様々の内容の交付金は福島原発事故よりも以前から支給されていますが、交付金という形式以外にも、上記の青森県むつ市の例にみられるように、「核燃料税」と称される地方税を電力会社から徴収することを原発施設が立地されている道県や市町村に特別に許可することにより、国が自治体へ財政支援を行うとなどの方法も採られています。

一方、福島原発事故後における国のエネルギー基本計画では、事故を反省して「原発への依存度をできる限り減らす」ことが原則とされてきましたが、岸田政権になってからは脱炭素社会実現のためという名目で原子力政策を大きく転換しています。すなわち、原発の運転期間を60年以上にするための法改正に伴い、原子力基本法までをも改正して基本法に原発推進を明記するなど、原発推進に大きく舵を切っており、今年の2月には、原発を「最大限活用」する方針を閣議決定するに至っています。このような背景の下に、最近、強力な原発推進を可能とする新たな交付金が次々に設けられようとしています。以下に、電源三法による交付金制度と並ぶ立地自治体支援策である「核燃料税」と福島原発事故後の新たな交付金制度などについて具体的な内容を記します。

・核燃料への課税
《核燃料税》:これは各原発が使用することを計画している核燃料に対して課せられる、法定外普通税(地方税法に定めのある以外の税目の地方税で、普通税であるものを指します)の一つであり、電源三法交付金と並ぶ「原子力マネー」の一つです。都道府県が条例で定めることができる税金であり、原子力発電所の原子炉に挿入する核燃料の価格を基準にして、原子炉の設置者である電力会社に課せられます。原子力発電所だけでなく再処理施設での取扱いなどにも課税されており、青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場に関しても、「核燃料物質等取扱税」として徴収されています。

直接的には電力会社がこの税を負担することになるのですが、課税された分は必要経費に算入することにより、最終的に総括原価方式(必要経費よりなる供給原価に一定の利潤を上乗せして料金を決定する、電気・ガス・水道に適用される方式)により消費者の電気料金に転嫁されることになります。つまり核燃料税は、最終的には消費者が負担することになります。

核燃料税は、福島原発事故後、稼働している原発の数が減っているにもかかわらず、大幅に増えています。たとえば、福島原発の事故直後の2011年の税収総額は201億円でしたが、2020年度には467億円に達する見込みであり、10年間で2倍に達しており、事故前の水準を上回っています。福島原発事故以前、各地の原発が動いていた2020年度の総額403億と比べても大きくなっており、電気料金に影響を及ぼす可能性も考えられます。

核燃料税は原発を動かす際に使用する核燃料の価格に応じて課税するという方式で始まったのですが、福島原発事故の影響で各地の原発が止まり、2011年度には立地6県で税収がゼロになりました。このような状況の中で、福井県が2011年秋、原子炉の出力に応じて課税する「出力割」という課税制度を始めました。これは原発が止まっていても一定の税収が得られる仕組みであり、他の道県も続いて導入しています。愛媛県は2014年に廃炉になった原発にも「出力割」の制度を導入、佐賀県なども同様の措置を講じています。

《使用済み核燃料税》:使用済み核燃料に対する課税に関しては、福井県が2016年に、使用済み燃料の県外への持ち出しを促すとする「搬出促進割」と称される制度を導入しています。次いで、2019年に、愛媛県と佐賀県が、四国電力伊方原発と九電玄海原発に保管されている使用済み燃料に関して課税を開始しています。また県だけはなく、立地されている伊方町と玄海町も課税を初めており、同一の原発に二重に課税するという状況になっています。また、前述のように、青森県むつ市は中間貯蔵施設に保管される使用済み燃料に関して課税を行うとしており、5年間で93億円の税収を見込んでいるとされています。
 使用済み核燃料税を全国で最初に福井県が開始した1976年からの全立地自治体による税収は、2020年度までに計1兆円を超えており、今後さらに増える見込みです。

このように課税が強化されていることの背景には、原発が止まって廃炉が進む一方で、立地自治体の収入となる固定資産税や電源三法交付金が減っているという事情があるものと考えられます。立地自治体の多くは「原発が動いていなくても、避難道路の整備など、財政需要がある」などとしていますが、税収の使途には、実際には温泉施設の維持管理など直接関係のない支出も目立っています。

 2016年の電力自由化までは、核燃料税と使用済み核燃料税の電力会社に対する課税分は利用者の電気料金に上乗せされていましたが、自由化後もこれらの課税分は電気料金に含めて回収されるため、消費者が負担する電気料金に影響を及ぼす可能性が存在しています。(以上、核燃料税、使用済み核燃料税などの税収額に関しては主に2021年1月11日付け朝日新聞デジタル版による)

・プルサーマル発電を推進拡大するための交付金
エネルギー資源の乏しい日本は、使用済み燃料を再処理して得られるプルトニウムを高速増殖炉「もんじゅ」の燃料として再利用すること、ならびにプルトニウムをMOX燃料(ウランとプルトニウムの混合燃料)の形で核燃料として再び利用することを意図して核燃料サイクル計画を進めてきましたが、高速増殖炉の開発計画は完成の見込みがなく事実上放棄されているため、プルトニウムの使い道は通常のウラン燃料とMOX燃料を併用する、いわゆる「プルサーマル発電」しか存在していません。一方、プルトニウムは核兵器にも転用できるため、保有量を減らすよう米国など国際社会から強く求められていることから、国内でプルサーマル発電を通じてプルトニウムの保有量が減らすことが必要とされています。

この二つの理由から、国はプルサーマル発電を推進するよう電力会社に求めています。政府は当面、2030年度までに12基以上の原発でプルサーマル発電の実現を目指していますが、現時点ではわずか4基の原発に留まっています。このため経済産業省は2022年度に、再処理により得られたプルトニウムをプルサーマル発電に用いることに新たに同意した原発立地自治体に交付金を出す方針を決定しています。
電気事業連合会によると、原子力規制員会による安全審査に合格し、再稼働を準備中の中国電力島根原発2号機や日本原子力発電の東海第二原発などでのプルサーマル発電が想定されているとのことです。

1993年に着工した青森県六ケ所村の再処理工場はトラブル続きで完成時期が何度も延長されており、現時点では2024年度中に完成とされています。再処理工場が実際に本格稼働すればプルトニウムの保有量がさらに増える可能性も考えられます。一方、プルサーマル発電には、運転中の原子炉の安定性がウラン燃料のみによる通常の発電よる場合よりも劣るこという欠点や、MOX燃料の価格がウラン燃料よりも格段に高いため、プルサーマル発電を行うことはエネルギー資源の有効利用という意味は有していても経済的メリットは存在していないという欠点が存在しています。このため、国がプルサーマル発電を推進拡大することを意図しても、実際にどこまで拡大することができるかは、大いに疑問です。
また、プルサーマル発電に関しては、2009年までに同意した自治体へ向けての別の交付金制度が存在していましたが、現在は打ち切られています。(上記の電気事業連合会による情報は2022年1月3日の日経デジタル版による)

・原発の再稼働を促進するための交付金

岸田政権は原子力政策を大きく変更し、脱炭素社会実現のためとして原発を積極的に推進することを掲げていますが、当面は福島原発事故後運転を停止している原発を1基でも多く稼働させることに注力することを方針としています。

現在、国内には33基の発電用原子炉が存在しています。このうち、福島原発事故のあと新しい規制基準の審査に合格して再稼働しているのは、去る9月15日に再稼働した高浜原発2号機を加えて、全国で12基となりました。すなわり、これまでに九州電力が川内原発1号機と2号機、玄海原発3号機と4号機を、四国電力が、伊方原発3号機を、関西電力が高浜原発1号機から4号機、大飯原発3号機と4号機、美浜原発3号機を再稼働させています。
原発が再稼働された際、立地道県は、地域振興計画を策定して国に申請すれば、最大5億円を受け取ることができます。ところが、2022年11月に経産省は、原発が再稼働された場合に立地自治体が受け取ることができる交付金について、原発が立地されている市町村に隣接する県にもこの交付金の対象を広げており、隣接県には最大2.5憶円を支給するとしています。

この改正は島根原発がある松江市に隣接する鳥取県が、原子力防災に等に要する費用について、国に財政支援を求めていたことを受けて拡充したものであり、特例として2023年3月までに再稼働に同意するなどの条件を満たした場合は、立地する県には最大10億円、隣接県は最大5億円とする規定も盛り込まれています。このような特例を設けるという措置を講じていることからも、国が再稼働に至る原発を1基でも増やすことに非常に注力していることが分かります。

原発が立地されている市町村に隣接している県は、この他に、敦賀原発2号機がある福井県敦賀市に隣接する滋賀県があります(以上、島根原発に関する説明は2022年11月10日のNHKデジタル版)。
     
また、2021年に福井県が老朽化原発の再稼働を受け入れた際には、国は1発電所当たり最大25億円の交付金を出すという支援策を提示していたとされています(2023年9月18日付け朝日新聞)。

・原発の安全対策を公的に支援することを意図した新たな制度の導入
 経産省は去る7月26日、脱炭素に関する審議会を開催しました。この審議会は、再生可能エネルギーの発電所を新設したり、火力発電所などで二酸化炭素の排出を減らす改修を行ったりした際、電気の小売り事業者の負担で原則20年間は発電容量に応じた固定収入が保証されるようにすることにより、投資の回収を支援する仕組み内容とする「長期脱炭素電源オークション」と称される新たな制度を今年度中に導入することを目指して行われたものです。ところが、経産省はこの会議において、既存の原発の再稼働を促すため、原発の安全対策にかかる費用は脱炭素の実現に貢献する投資であると位置づけることにより、上記の新たな支援制度の対象に加える検討を始めることを明らかにしました。

 全国の原発では、新たな規制基準に合格するために追加の安全対策が講じられており、電力各社によると、その額は再稼働した原発1基当たり2000億円前後と巨額の負担になっているとされています。昨年8月の時点で、大手電力11社における負担は少なくとも計5兆4千億円に達するものと見積もられていますが、総額は今後さらに膨らむ見込みとされています。

原発の安全対策に要する費用が脱炭素促進のための上記の新制度に対象とされることになった場合、安全対策のための費用は電気の小売り会社(大手電力会社、新電力)を介して、家庭などの消費者が負担する仕組みになっています。このため、再生可能エネルギーによる電気を売る新電力の利用者も原発推進を下支えすることになります。当初の条件は原発の新設や建て替えなど「運転開始前」の原発に対象が限定されていたのですが、この条件に既存の原発も含められることになると、この新制度自体は原発支援の色彩を強めることになります。審議会では「原発の安全対策で二酸化炭素が減るわけではないため、脱炭素促進を意図した新制度の趣旨に沿わない」などとする反対意見も出されましたが、原発の安全対策費がこの新制度の対象とされる可能性は大きいものと考えられます。(以上は2023年7月26日のNHKデジタル版、同日の朝日新聞デジタル版などによる)

・電力会社から原発立地自治体への多額の寄付
以上は国による原発立地自治体あるいは原発を保有する大手電力会社への支援策ですが、立地自治体への支援策の一つとして、これらの支援策に加えて、電力会社から立地自治体への寄付という手段が存在しています。電力会社により巨額の寄付が行われていることは、各地の原発が立地されている自治体で確認されています。電力会社による寄付は電源三法に基づく交付金とは異なり、法律に基づくものでありません。しかし、またその財源は元を正せば消費者が支払う電気料金です。

 たとえば、前述のように中間貯蔵施設の建設を受け入れようとしている山口県上関町は、これまでに中国電力による多額の寄付を受けています。以前から中国電力による原発建設計画がありました。福島原発事故後に計画は中断されているため原発建設に関連した交付金は途絶えましたが、計画中断後、上関町はこれまでに何度も町の財政難を理由に中国電力に寄付を要請しており、このため前述のように中国電力は2007~2010年に24億円、震災後の18年に8億円、19年に4億円を寄付しています。

また、関西電力は1970~2009年度に17回にわたり少なくとも44億円を原発が立地されている福井県高浜町に寄付してことが知られています。このうち6回は関電による寄付であることが明記されていますが、3回は匿名にされていました(以上は2019年10月20日付け朝日新聞デジタル版による)。

一方、原発の運転が停止されている、福井県敦賀市に立地されている日本原電(日本原子力発電㈱)の敦賀原発(3基,内1基は廃炉が決定)に関して、関電と日本原電が市道整備費として2018~2021年に15億円を提供することが明らかになったとされています(これは実質的に寄付ですが、両社は道路法に基づく負担金としています)。また、これとは別に、日本原電は2009~2013年に計19憶8千万円をこの市道建設のために寄付しており、原発災害発生時のアクセス道路として費用を負担したとしています。 

(おわりに)
以上、国の電源三法に基づく交付金を中心に、原発推進ために「原発マネー」がどのように投入されているのか、実例を交えて、ごく大雑把な説明を記しました。電源三法に基づく交付金の財源は電源開発促進税であり、この税は電気料金に含められる形で消費者が負担しています。また、大手電力会社による立地自治体への寄付など地元対策のための費用も、結局は消費者が負担することになります。大手電力の電気の消費者だけではなく、再生可能エネルギーによる「新電力」の消費者も同様に負担することになります。すなわち、原発は不要と考える市民も知らぬ間に原発推進に協力することになるというのが原発マネーの巧妙な仕組みなのです。原発施設の立地自治体を様々な形で「原発マネー漬け」にすることにより原発を推進しようとする国の姿勢は、今後強まる一方であろうと考えられます。この意味から、私たち電気の消費者である市民は常に「原発マネー」の動きに目を向けていかなければなりません。 

2023年10月1日

《 脱原発市民ウォーク in 滋賀 》呼びかけ人の一人:池田 進

〒520-0812
大津市木下町17-41
電話:077-522-5415
メールアドレス:ssmcatch@nifty.ne.jp

福島第一原発のトリチウム汚染水の海洋放出問題 福島の漁民のみなさんによる漁業再開に向けての努力を台無しにする海洋への放出は中止すべきです

2023-09-03 22:36:03 | 記事
《 2023年9月:第116回・脱原発市民ウォーク in 滋賀のご案内 》

まだ残暑が厳しい日々ですが、次回の脱原発市民ウォークを9月9日(土)に
おこないます(午後1時半、JR膳所駅前広場に集合)。

どなたでも自由にご自分のスタイルで参加できます。
都合のつく方はぜひ足をお運びください。

■■ 福島第一原発のトリチウム汚染水の海洋放出問題 ■■
■福島の漁民のみなさんによる漁業再開に向けての努力を台無しにする
                   海洋への放出は中止すべきです■


皆さんもご存知のように、去る8月24日、国と東電は福島第一原発の事故により生じたトリチウム汚染水(注参照)の海洋への放出を開始しました。2011年に起きた大事故の後2~3年の間は、事故により原子炉などの原発施設内に拡散乱した各種の放射性物質を含んでいる原子炉の冷却水や原発敷地内に流れ込んだ雨水・地下水などは、何の処理も施されずそのまま海へ垂れ流されていました。その後、ALPS(Advanced Liquid Processing System:多核種除去設備、様々な核物質を除去する装置)が導入・設置され、そのため様々な核物質を基準値以下にまで除去してから原発敷地内に設置された多数のタンクに保管されるようになりました。一方、国と東電はタンクに保管されているいわゆる「処理水」(正確には「ALPS処理水」)の処分方法に関して検討を開始し、ALPSでは除去することができない放射性物質トリチウム(水素の放射性同位体)よりなるトリチウム水(水の分子を構成する2個の水素のうち1個がトリチウムに置き換わったもの)を海水で薄めてWHOが定めた基準値以下にした後に海へ放出するという方針を決定するに至りました。その後、国際機関である国際原子力機関(IAEA)が海洋への放出という処分方法は科学的観点から問題がないと評価したことを受けて、国と東電は海洋放出を実行することを最終的に決定し、2023年8月24日に放出が開始され、今日に至っています。

 放射性物質であるトリチウムが明らかに含まれている水を海へ放出することの是非という問題は、科学技術的問題と社会的な問題が入り組んだ複雑な問題であり、科学的に未解明・未確定な要因も少なからず存在しているため、簡単に結論的なことを述べることは容易ではありません。したがって、以下に記す内容は、あくまでも様々な資料や報道内容などに基づく私の個人的な見解に過ぎません。このため何らかの点において考えを異にする方もおられるかと思いますが、この問題を考えるに際して参考にしていただければ幸いです。
(注:トリチウムが含まれている廃水についてはメディアではほとんどの場合「処理水」という用語が使われていますが、「汚染水」と称するべきだという声もあります。ウィキペディアではALPSで処理された水という意味で「ALPS処理水」と称するのが適切としています。単に「処理水」や「汚染水」としたのでは意味するところが曖昧です。しかし問題の中心はトリチウムです。このため、後に記すIAEAの文書では「ALPS処理水(ALPS treated water)」という用語が使われていますが、この私の一文では「トリチウムで汚染されている水」という意味で、以下「トリチウム汚染水」という言葉を用いることにします)

私はこのたびの国・東電による「トリチウム汚染水」の海への放出に強く反対します。その主な理由は以下のとおりです。

・政府は「関係者の理解を得ずにはいかなる処分も行わない」とした漁業関係者との事前の明確な約束を意図的に反故にしました。しかし、重要な公的約束を一方的に破棄し反故にすることは、権力の濫用とも言うべき行為に他なりません。民主的な社会においては、とりわけ多くの人々が関係する事柄に関しては、権力の濫用が許されないことは言うまでもありません。したがって、たとえ海洋への放出に何ら科学的な問題がないとしても、このような国の行為を市民として看過するわけにはいきません。

・このたび海洋への放出の可否に関して評価を行った国際機関IAEA(注1参照)はその報告書で、人体への影響は無視できる程度であると結論付けてはいますが、一方において、国・東電による放出計画に関して「これは日本政府による国家の決定であり、報告書は推奨するものでも、支持するものでもない」と一定の距離を置いていることを明記しています(注2)。すなわちIAEAは海洋への放出が唯一かつ最適の方法であるとしているわけではありません。したがって、環境中に有害物を放出するという処分方法ではなく、より適切な別の方策を検討し、講じるべきです。

・間違いなく風評被害が起きます。風評による被害に最もさらされるのは福島を中心とした漁業関係者たちです。たとえ金銭的補償や賠償などの措置が講じられようとも、十年に及び本格的な漁業再開を目指してきた福島の漁民の方々の努力は台無しになります。
(注1:国際原子力機関:国連の保護下にある自治機関。目的は原子力と放射線医学を含む核技術の平和的利用の促進ならびに原子力の軍事利用すなわち核兵器開発の防止)。
(注2:また、2023年9月1日付けのプレジデント・オンラインは「IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシ事務局長は、ロイターのインタビューで、『IAEAは(処理水放出の)計画の支持も推奨もおこなっていない。計画が基準に合致していると判断した』と述べ、処理水放出の最終決定は日本政府が行うものだとゲタを預ける形になった」と報じています)

上記の反対理由が根拠を有するものであることを裏付けるために、以下に「トリチウム汚染水」問題を取り巻く最近の状況と問題点などを記すことにします。

【海への放出に至るまでの、国による処分方法の検討経過などの概要】

2015年:政府と東電が、処理水の処分を巡り、福島県漁連に「関係者へ丁寧に説明し、理解なしにはいかなる処分もしない」と文書で伝える
2018年8月:政府は、福島で2箇所、東京で1箇所、「説明・公聴会」を開催。意見を述べた44人のうち42人が明確に海洋放出に反対しました(その後、公聴会は開催されていません)
2018年11月11日:経産省の「多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会」の第1回会合が開催される。以後十数回開かれ、トリチウム汚染水の処分方法が検討される。
2021年4月13日:政府がトリチウム汚染水を海洋へ放出する方針を決定
2021年7月3日:政府がトリチウム汚染水の放出計画の検証について国際原子力機関(IAEA)と合意
(IAEAの検証作業は海洋放出に反対する中国、韓国の他、米国など11カ国の専門家が関わり、現地調査も実施し、2年間で今回を含め計7本の報告書をまとめました。放出開始後も評価やモニタリングを行うとされています)
2022年8月4日:東電が海洋放出に関連した設備の工事を開始
2023年1月23日:政府が放出開始時期を「今年春から夏ごろ」とする方針を決定
2023年6月26日:設備工事完了
2023年6月28日:松野博一官房長官が、2025年に政府と東電が福島県漁連に伝えた「理解なしにいかなる処分も行わない」とする方針を「遵守する」と明言
2023年7月4日:IAEAが包括報告書を公表。「計画は国際的安全基準に合致」と結論
2023年7月:原子力規制委員会が東電に設備の検査適合の修了書を交付
2023年8月22日:国(岸田首相)が24日に放出を開始することを決定。今年度の放出計画を発表(貯蔵タンク30基分に相当する計約3万1000トンを4回に分けて放流)。西村康稔経産相が福島県漁連の理事会に出席、県漁連会長の野崎哲会長は「これからも放出反対の立場だ」と改めて強調
2023年8月24日:放流開始。中国政府が日本産水産物の輸入を24日から全面的に停止すると発表

【政府・東電によるトリチウム汚染水の海洋放出計画の概要】

現時点で、トリチウム汚染水の総量は約130万トンであり、1000個余りのタンクに保管されています。トリチウムの総量は約780兆ベクレル(注1参照)とされています。計画によれば、一年間に22兆ベクレル未満の量を放出するとされています(注2参照)。この前提に立つと、現存するトリチウム汚染水が完全に放出されるまでには約35年を要することになります。またタンク内に現在保管されているトリチウム汚染水には1リットルあたり6万ベクレルのトリチウムが含まれているため、WHO(世界保健機構)の飲料水に含まれるトリチウムの基準値である1万ベクレルを下回るようにするために(注3参照)、40倍に海水で薄めて放出するとされています(このため放出される海水には計算上は6万÷40=1500ベクレル/リットルのトリチウムが含まれていることになります)。つまり国・東電は、WHOの基準を大幅に下回る放出が行われることになるとしています。なお、環境省の専門家会議は7月14日に、放出開始後から当面は週1回採水し、1週間程度で結果を公表することを決めています。

(注1:ベクレル(Bq)は壊変率という、放射能(放射性物質)の量を表す単位です。「壊変率」とは放射性同位体が単位時間あたりに「壊れて変わってしまう」数 のことであり、半減期の計算とも大きく関係する概念です。壊変率が高いほど、すなわちベクレルの数値が高いほど、放たれる放射線の数は大きくなることを意味します。いわば放射性物質の量を表示するための単位です)

(注2:年間に22兆ベクレルを超えない範囲で放出することにしているのは、事故以前に福島第一原発において設定していた年間のトリチウム放出量の管理基準を念頭に置いていることによるものであると推測されます)

(注3:水1リットルを飲んだ場合の被ばく線量は、計算上は約0.00019ミリシーベルトとなります)。

(参考:飲料水に関する各国の規制基準は,1リットルあたり、WHOが10000ベクレル、カナダが7000ベクレル、米国が740ベクレル、EUが100ベクレルであり、日本は基準を決めていません(トリチウムを含む水の規制値は? - SYNODOSによる)

放出計画における疑問点:ALPSによる処理は果たして完全に行わるのか?
上記の説明はALPS処理が完全に行われることを前提にしたものです。ALPSは科学的・物理的性質を利用した処理方法で、トリチウム以外の62種類の放射性物質を国の安全基準を満たすまで取り除くことができるように設計された設備であるとされているのですが、IAEAの報告書には「ALPS処理工程はですべての放射性物質が除去されるわけではないことに注意する必要がある、少量の異なる放射性核種は処理後も水中に残っており(ただし規制値をはるかに下回っている)、トリチウムは全く除去されない」と記されています。ところが、現在約1000基のタンクに保管にされている(注参照)トリチウム汚染水はすでに一度ALPSによる処理を施さてはいるものの、その7割近くはトリチウム以外の様々な放射性物質の量が基準値以下にまで達していません。東電は、放出が行われるまでにALPSによる再処理を行い基準値以下にするとしていますが、再処理が確実に行われ、ほんとうに基準値以下に収まるかは定かではありません。ALPSによる再処理の成否は放出の可否を判断するための欠かすことができない重要な要因であるため、IAEAや原子力規制委員会などの関係機関はALPSによる再処理について、その結果の関して厳重な監視を行う必要があるものと考えられます。

(注:東電は2024年の前半には既存のタンクは満杯に近づくとしており、また、今後の廃炉作業に必要なスペースを確保するためにタンクの一部を撤去する必要があるとしています)

【IAEAによる評価の内容、その科学的根拠、反論などについて】

1 IAEA(国際原子力機関)によるトリチウム汚染水の海洋放出に関する評価の内容
前述のように、国・東電によるトリチウム汚染水の海洋放出に関する評価に携わったIAEAは、去る7月4日に包括報告書を公表しました。この包括報告書は約二年間におよぶIAEAのタスクフォース(特別作業チーム)の活動に基づき、放出開始前の評価として、海洋放出が国際安全基準に合致しているかという点に関して評価を行った技術的レビューの最終的結論を示すものであるとされています(全文はIAEAのホームページに掲載されています)
Executive Summaryと題された 包括報告書の要旨が示されている文書によれば主な内容は以下のとおりです(訳文は原子力規制庁による仮訳です。出典は「ALPS処理水海洋放出の安全性に関するIAEA包括報告書の概要」2,023年7月5日:原子力規制庁)

・IAEAは、国際安全基準を構成する基本安全原則、関連する安全要件及び安全指針を用いて、包括的評価を行った。その結果、ALPS処理水の海洋放出に関する取組、及び東京電力、原子力規制委員会、そして日本政府による関連する活動は、関連する国際基準に合致していると結論づけた(下線部の原文はare consistent with relevant international standards)

・IAEAは、ALPS処理水の海洋放出が、放射線に関連する側面との関連で、社会的、政治的及び環境面での懸念を起こしていることを認識する一方、現在東京電力により計画されている放出は、人と環境に対し無視できるほどの放射線影響となると結論づけた(下線部の原文はwill have a negligible radiological impact on people and the environment)

・放出開始前の段階でレビュてーおよび評価した多くの技術的事項については、放出開始後も関連する国際安全基準への適合性を評価する必要性があり、IAEAは、今後も活動を継続する。

以上の内容からIAEAがトリチウムの海洋への放出を可としていることは明らかです。ただし、IAEAの報告書は、放出に伴い生じると予想されるいわゆる風評被害の問題には具体的には何ら触れていません。

(なお、東電が運営する包括的海域モニタリング閲覧システム(ORBS)で、福島県、環境省、東電などの各機関が福島県沿岸で採取した海中の放射性物質のデータを確認することができるとされています)

2 IAEAが海洋への放流を可としており妥当としていることの科学的根拠・背景
東京電力は、トリチウムはベータ線という弱い放射線を出すものの、そのエネルギーは小さいため紙一枚で遮ることができ、日常生活でも飲料水を通じて体内に入るが、新陳代謝などにより蓄積・濃縮されることなく体外に排出されるとしています。また、カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、ネット上に、トリチウムの健康への影響について「比較的弱いβ線源で、皮膚を投下するには弱すぎる。しかし、極端に大量摂取すると、がんリスクを高める可能性がある」と書いています。

またIAEAの報告書は、トリチウム汚染水の放流によって毎年放出されるトリチウムなどの放射性物質の総量について「宇宙線と大気上層部のガスとの相互作用など、自然のプロセスにより毎年生成されるこれらの放射性物質の量をはるかに下回ることに留意すべきである」としています。この点に関して、岸田一隆・青山学院大教授は「トリチウムは、宇宙から降り注ぐ放射線などで地球上に年間約7京ベクレル(京=兆の1万倍)生じており、自然界には100京~130京ベクレル存在するとされている。海水や雨水、水道水にも含まれており、私たちは日常的に体内に取り入れている。福島第一原発事故により飛散したセシウムなどと比べて放射のエネルギーが弱く、水と一緒に排出されるため、蓄積しにくい。WHO(世界保健機構)が定める飲料水に含まれるトリチウムの基準値は1リットルあたり1万ベクレルであり、基準値の水1リットルを飲んでも被ばく量は約0.00019ミリシーベルトに留まる。国内で生活すると、食品や宇宙、大地などの自然環境から年間約2.1ミリシーベルトの被ばくを受けるが、この1万分の1未満の量で、人体への影響は非常に小さいと考えられる(注:復興庁は、1年間放出した場合の放射線の影響は自然界からの放射線の影響の10万分の1としています)。東電は1リットル当たり6万ベクレルのトリチウム汚染水を1リットル当たり1500ベクレル未満になるよう海水で薄め、年間22兆ベクレルを限度に放出するとしている。22兆ベクレルというと大変な量のように感じられるかもしれないが、純度100%のトリチウム水(水の分子を構成する2個の水素の一つが水素の放射性同位元素であるトリチウムと入れ替わった水のこと)に換算すると、たった0.4グラムであり、これを1年間かけて薄めて放出するので、環境に対する影響はほぼないと考えられる。原子力規制員会やIAEAも同様の評価をしている・・・物事のリスクを科学的に評価することは重要だ。社会的決定が非科学的になされると、結果的に社会的不利益が大きくなってしまう」としており、科学と社会をつなぐ「科学コミュニケーション」の問題を指摘しています(以上、岸田教授の発言は2023年8月23日付け毎日新聞による)。

(以上の内容は上記の岸田教授の発言以外は「日本ファクトチェックセンター・JFC」による「福島第一原発の処理水を巡るファクトチェックまとめ」などの内容も参考にしたものです)

3 IAEAによる評価に対する反論などについて
2023年8月27日付け(デジタル版)のBBCニュースは「トリチウム汚染水に関してIAEAは、環境に与える影響は無視できる程度としており、圧倒的に大多数の専門家は安全だと説明しているが、果たして安全なのだろうか、海底や海洋生物、人間に与える影響に関する研究がもっと必要であると多くの科学者が言っている」として、IAEAの評価を疑問視する声を下記のように紹介しています。

・米ジョージ・ワシントン大学の環境関連法の専門家、エミリー・ハモンド教授は「放射性核種(トリチウムなど)が難しいのは、科学が完全に答えることができない問題を提示するからだ。つまり、非常に低いレベルでの被曝において、何が『安全』と言えるかという問題だ」「たとえ基準が守られたと言って、その決定に起因する環境や人体への影響が『ゼロ』になるわけではないと、それを認めつつも、IAEAの活動を大いに信頼することができる」などとしています。

・全米海洋研究所協会は2022年12月に、日本のデータは信用できないとの声明を出しました。米ハワイ大学の海洋学者ロバート・リッチモンド氏は「放射性物質や生態系に関する影響評価が不十分で、日本は水や堆積物、生物に入り込むものを検出できていないのではないかと、とても懸念している。もし検出しても、それを除去することはできない」としています。

・環境保護団体「グリーンピース」の原子力専門家ショーン・バーニー氏は、米サウスカロライナ大学の科学者が2023年4月に発表した論文に言及して、植物や動物がトリチウムを摂取すると「生殖能力の低下」や「DNAを含む細胞構造の損傷」など「直接的な悪影響」を及ぼす可能性があるとしています。

4 トリチウム汚染水の放出が開始されたことに関する世論調査の結果

様々な報道機関が調査を行っていますが毎日新聞による調査(2023年8月28日:26日と27日に調査を実施)では、海洋放出開始を「評価する」とした人が49%であり、「評価しない」(29%)を上回っていたとされています(「わからない」は22%)。海洋放出に関する国・東電の説明に関しては、説明が「不十分」とした人が60%であり、「十分だ」との答え(26%)を大きく上回ったとされています。

5 トリチウムの人体への毒性・悪影響の有無などに関する緒論について
市民団体「原子力市民委員会」は「トリチウム汚染水海洋放出問題資料集」(トリチウム汚染水海洋放出問題資料集 (ccnejapan.com))において、「疫学調査により放射性物質の影響を調べようとしても、対象者が調査対象の物質以外の放射性物質を同時に摂取していることが多いため、調査対象の放射性物質単独の影響を調べるのは困難です。また、疫学調査の代替手段としてマウスなどの動物を用いた実験が行われていますが、ほとんどの場合、高線量を被曝させるという条件での実験であり、低線量被曝に関する研究は数少ないというのが現状です。このためどのような放射性物質であっても、その健康被害を立証することは困難です」としています。

しかし、このたびのIAEAによる評価の内容を直接念頭に置いたものではありませんが、トリチウムが環境や人体に対して有害である、あるいは有害である可能性が考えられるとする指摘あるいは主張を内容とする報文は少なからず存在しています。たとえば、上記の「トリチウム汚染水海洋放出問題資料集」」と題された文書にはその例がいくつも紹介されています。この資料集で紹介されている緒論は、実際の実験などにより裏付けされた内容のものであるのか、科学的・論理的に考えた推論に基づき有害と考えられると主張・指摘したものであるのかは文面からは不明であるため、また紹介内容が簡単なものであるため、、その評価は差し控えることにします。このため上記の資料集に掲載されているいくつかの報文について、その内容をごく簡単に以下に紹介するにとどめることにします。

・河田昌東(かわだまさはる)(生物学・環境科学の専門家)
トリチウムは普通の水と同様、口や呼吸、皮膚を通して体内に入り、水素と同様に蛋白質や遺伝子DNAの構成成分になる。体内の有機物に取り込まれたトリチウムは「有機結合性トリチウム」と呼ばれ、その分子が分解されるまで細胞内に長期間とどまり、ベータ線を出して内部被ばくをもたらす。放射線生物学者ロザリー・バーテルによれば、この「有機結合性トリチウム」の体内残留期間は少なくとも15年以上とされており、体内に入っても短期間に排出されるというのは間違いである。トリチウムの生物への影響に関しては、実験に基づいた研究が行われており、たとえば人間のリンパ球を用いた実験や雌のサルを用いた米国ローレンス・リバモア国立研究による長期間の投与実験では、染色体の破壊などの有害な作用が認められている。

・馬田敏幸(産業医科大学アイソトープ研究センター)
トリチウムの被爆の形態は低線量の内部被ばくが想定されるが、経口・吸入・皮膚吸収により体内に取り込まれたリチウム水は、全身均一に分布することから、その影響は小さくないと考えられる。低レベルのトリチウム曝露によって、事実、人体に影響が出るか否かの議論には、客観的な生物影響データの蓄積が必要であり、低線量・低線量率放射線影響解明のために、トランスジェニック(遺伝子導入が施された)
マウスを用いた、突然変異や発がんなど、放射線の確率的影響に関する研究の推進が望まれる。

・伴秀幸(原子力資料情報室)
トリチウムの生態濃縮が指摘されているレポートがある。英国政府のRIFEレポート(2002)では、トリチウムの濃度は環境中よりも生物中の方が高いとする測定結果が示されている(ただし程度は低い)。ドイツ政府によるKiKK報告書では、原子力施設周辺の子どもたちの白血病が有意に増加していることが疫学的に示されていた。その原因は特定されなかったが、Ian Fairlieは、仮説ながら、原因がトリチウム放出に在ることを問題提起している(定期検査中にトリチウムが放出されることに原因を求めた)。

・国連科学委員会(UNSC)報告書(UNSCEAR 2016 Report Annex C)
職業人と公衆へのトリチウムの放射線毒性について2006年~2010年の間に関心が高まり、カナダ、フランス、イギリスを含む多くの国々で広範な再調査とデータ分析が行われた。トリチウムの人体への影響については、1950~1960年代における米ソ英仏などの核兵器実験で大量のトリチウムが環境中に放出されたため、これがノイズになり、特定の事故などによるトリチウム放出がどれだけ寄与しているのかの判別は難しい。

【トリチウム汚染水の放出に起因する風評被害問題について】

このたびに放出に際して、水産物中に有意な量のトリチウムが検出されるなど、いわば実害が生じて大きな問題となる可能性は極めて小さいものと推測されますが、放出に伴う現実的な最大の問題は風評被害の問題です。風評被害は根拠のない懸念であるとする言説がありますが、有害物を故意に環境中に放出する限りは、放出による被害を定量的に示すことができなくても、そのことが直ちに被害そのものが存在しないこと意味するわけではありません。このため、放出することに伴う風評被害の問題には正面から取り組む必要があります。

 福島県の漁業関係者や漁協の全国組織が、政府の説明を一定程度理解するとしながらも最後の瞬間まで放出に反対であるという姿勢を明確に貫いていたことの最大の理由は風評被害の問題です。福島原発事故後、過去十年にわたり漁業の再開を目指して努力を積みかねてきて、ようやく本格的な再開の時期が近付きつつあるという状況の中での風評被害を招きかねないトリチウム汚染水の放出は、漁民のみなさんにとって最悪の状況です。このままでは後継者が育たないと憂慮する関係者もいるなど、風評被害の最大の被害者は漁業関係者であることは明らかです。

 福島第一原発の大事故の後、かなり長期にわたり国内で福島県産の農水産物の買い控えが生じていました。たとえば福島県産の米に関しては、全量検査が行われ、そのほとんどの放射能レベルは基準値以下であり、検査に合格したものだけが出荷されていたにもかかわらず、売れ行きは芳しくありませんでした。これは風評被害の典型です。このたびの放出では、このような農水産物中の放射能のレベルを問題視することによる風評被害が生じる可能性は福島原発事故後の時期よりも小さいのではないかとも思われますが、「福島民報」の世論調査(2023年6月19日:福島県民テレビとの共同調査)によれば、「大きな風評被害が起きる」とした人が32.1%、「ある程度風評被害が起きるとした人」が55.7%とされており、福島では大半の人々が風評被害をかなり懸念しています。

 一方、7月には欧州連合(EU)が福島産の水産物などに課していた輸入規制を完全に撤廃していましたが、当初から日本によるトリチウム汚染水の放出に強く反対していた中国は、放出開始当日の8月24日に、日本産水産物を全面的に禁輸とする措置を発表しています。放流開始以前から、中国は「日本は太平洋を自分の下水路にしている」などとして強く反対していました。しかしながら、反対するに際して、その具体的な科学的根拠にはほとんど言及していません。このことは中国による反対は、日本から実際に放射能レベルが高い危険な農産物が入ってくることを懸念していることによるものではないことを意味しているのではないかと考えられます。すなわち、中国による反対は、日本側が事前に十分な科学的説明を行っていたとは言えないことも反対の原因の一つであるとは考えられるものの、科学的根拠に立脚したものというよりも、最近の日中の外交関係が急激に悪化していることに起因したものではないかと考えられます。特に、昨今、台湾問題などを中心に日中の安全保障環境が急激に悪化しており、日中関係が緊張の度を増しているという状況がこのたびの禁輸措置の根底にあるのではいでしょうか。このような状況を考えるならば、このたびの中国による禁輸措置はいわば「政治的風評被害」というべきものであり、このような事態が引き起こされてしまったことの責任は政府にあると言わざるを得ません。中国がいつまで本気で全面禁輸という極端とも言うべき方針を続けるか定かではないものの、中国は日本の農水産物の最大の輸出先であるため、日本側の経済的損失は膨大なものになることは間違いありません。

 政府はトリチウム汚染水の放出が終わるまで、30年以上にわたり、風評被害に起因した損害に関して、補償金や賠償金などを用意するなど、十分な風評被害対策を講じるとしていますが、30年以上もの長きにわたり風評被害が続くようならば、福島の漁業は壊滅しかねません。このような事態を避けるためにも、海洋への放出というトリチウム汚染水処分の方法を断念し、陸上でも保管の継続や陸上での封じ込め、トリチウム除去技術の開発など、他の処分方法へ転換を図るべきです。

【トリチウム汚染水に関する海洋放出以外の解決策について】

IAEAの報告書は、「海洋への放出は、人とか環境に対して無視できる程度の放射線影響になる」と結論付けていますが、一方において「海洋放出を推奨するものでも支持するものでもない」としています。このことは、海洋放出は必ずしも最適・最善の処分方法とは言えないことを意味している、すなわち、環境中に有害物を放出するという処分方法は基本的に最適な方法とは言えないことを意味しているものと考えられます。また、IAEAは原子力利用の科学的技術側面に携わる機関であるためやむを得ないのですが、海洋放出に伴う、避けて通ることができない風評被害という問題に関しては何も具体的に触れていません。これらのことを考えるならば、トリチウム汚染水の処分にあたっては、海洋放出以外の、風評被害を招くことがない、より安全な処分方法を考え、実行に移すべきです。海洋放出以外の処分方法の関しては様々な方法が考えられますが、紙面が尽きましたので、以下のその内容を簡単に記すことにします。

一般的に環境中に存在する有害物への対処の仕方のなかで最も優れていると考えられる方法は有害物を無毒化することです。しかし、ある種の化学物質は加熱したり他の物質と反応させることなどにより有害物を分解して無毒化することが可能ですが、トリチウム水の場合、無毒化はおそらく可能ではないであろうと考えられます。
無毒化が不可能な場合の次善の方法は、何らかの技術的手段により、有害物を環境中から分離して、何らの手段で封じ込め環境から十分に遮断することです(たとえば使用済み燃料の再処理により生じた高レベル放射性廃棄物を地下深くに処分する、いわゆる「地層処分」はこの方法に該当します)。トリチウム汚染水の場合は具体的に以下のような方法が考えとられます。

・まず、海洋放出を中止し、当面、陸上での保管を続ける。保管用のタンクが足りないのであれば、隣接地などにタンク設置用の土地を確保し、現存する保管用タンクより容積がずっと大きい(たとえば10万?)、石油備蓄用のような大型のタンクを設置するという方法や数十万?の石油を輸送できる大型の石油輸送用のタンカーを活用するという方法も考えられます。

・次の段階では様々な方法が考えらえます。たとえばトリチウム汚染水をモルタルと混ぜて固めて、汚染水が周囲に拡散しないようにするという方法があります(米国の原子力関連施設で実施された例があります)。また、トリチウム水だけを分離する様々な方法(通常の水との物性の差異、すなわち、沸点や融点の違い、質量の違いなどを利用した分離技術)が研究されつつあります。国はこれらの新技術の開発を積極的に促進するべきです。たとえば、以前にも紹介したことがありますが、5年ほど前に、近畿大学と日本アルミ㈱のチームがアルミニウム製の多孔質のフィルターで吸着・濾過することにより、普通の水とトリチウム水を分離することに成功しています。

【トリチウム汚染水の海洋放出に関連したその他の問題点】

 以上に記した様々な問題点以外にも、下記のような問題点が存在しています。
・世界中のすべての原発・再処理工場から年間を通じて常時トリチウムが大気や海洋に放出されているのが現実です。このため、トリチウムの環境中への放出に関して、何らかの国際的な規制体制が必要ではないかと考えあられます。たとえば、六ケ所村の再処理工場からも、試験運転の期間中(2006から3年間ほど)に、このたびの福島原発からの放出量(約30年間に総量約860兆ベクレル)を大きく上回る大量のトリチウム、すなわち約2200兆ベクレルが3年足らずのあいだに放出されていました。このようなトリチウムが各原発や関連施設などから事実上自由に垂れ流されているという現状に対して、世界的にトリチウムの放出に関する具体的な規制措置を講じる必要があることは明らかです。
・また、各種放射性物質の環境中への排出基準が国ごとに設けられていますが、その科学根拠は何なのか、排出基準は科学的妥当性を有しているのかという点は改めて検討されるべきではないでしょうか。

・一方、このたびの海洋放出という処分方法の決定に関して、市民が決定過程に関与していないことは問題であると、国連の人権問題の専門家が勧告しています(公聴会は1回開かれただけです)。このたびの放出問題に限らず、原発に関連した問題に関する政府による意思決定の方法・過程をもっと市民に開かれたものに改革する必要があることは明らかです。

2023年9月3日 

《 脱原発市民ウォーク in 滋賀 》呼びかけ人の一人:池田 進

〒520-0812
大津市木下町17-41
電話:077-522-5415
メールアドレス:ssmcatch@nifty.ne.jp

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脱原発 市民ウォーク in 滋賀 9月の予定

2023-08-21 20:02:19 | 記事
■老朽原発 高浜1・2号機うごかすな! 
■美浜3号機停止!
■岸田政権の原発暴走反対! 
■原発汚染水流すな!
■上関の自然を守れ! 
■核ゴミをフランスや太平洋に捨てるな!
 
◆ 第116回 脱原発 市民ウォーク in 滋賀 ◆

「なぜ無理やり海に捨てるのか分かりません。いくら希釈しても
 放射能の絶対量はそのままです。」
「人類自滅のテロは中止しなければなりません。
 今こそ地球村主人が立ち上がらなければなりません。」(韓日徒歩行進) 

1450万人の近畿の水源=びわ湖と私たちの未来=子どもたち孫たちを守りましょう!
ご一緒に歩きましょう! 参加無料! 予約不要! 

<とき・ところ>
2023年 9月9日(土)13:30  JR・京阪膳所駅前集合  

★コース = ときめき坂 ~ 元西武大津ショッピングセンター前 ~ 関電滋賀支社前~
       ~ びわ湖畔

☆主 催=21世紀 脱原発市民ウォーク in 滋賀 実行委員会
☆呼びかけ人・・・池田進(原発を知る滋賀連絡会 電話077-522-5415)
         岡田 啓子(ふぇみん@滋賀 電話077-524-5743)
         稲村 守(9条ネット・滋賀 電話080-5713-8629)


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<トピックス> 


原発汚染水放流中止日韓徒歩行進、近江富士を望みながら江州平野を行く(8.16)



草津駅前(8.16)



9.11東京国会到着めざし、6月にソウルを出発。
1600キロを歩く行進隊長のイ・ウォニョンさん(8.16)



徒歩行進宣言朗読の岡田啓子さん(8.16)



7.23老朽高浜原発1号機うごかすな!関電本店前集会後のデモ。



7.28高浜1号機再稼動抗議、北ゲート前。
写真中央は、抗議する編み笠の中嶌哲演さん。



福島県相馬市から滋賀県湖西地域に避難の青田恵子さん(7.28)

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「脱原発 市民ウォーク in 滋賀」 チラシのダウンロードは ⇒ コチラ

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先行きがまったく不透明な高レベル放射性廃棄物最終処分場の建設問題(その2) 破綻を来している核燃用サイクル計画・使用済み燃料再処理による核廃棄物の最終処分計画

2023-08-14 21:12:47 | 記事
《 2023年8月:第115回脱原発市民ウォーク in 滋賀のご案内 》

あいかわらず暑い日が続いていますが、次回の脱原発市民ウォークを
8月19日(土)におこないます(午後1時半JR膳所駅前広場に集合)。
どなたでも自分のスタイルで自由に参加できます。
都合のつく方はぜひ足をお運びください。


■■先行きがまったく不透明な高レベル放射性廃棄物最終処分場の建設問題(その2)■■
■破綻を来している核燃用サイクル計画・使用済み燃料再処理による核廃棄物の最終処分計画■





前回2023年7月の脱原発市民ウォークの案内では、国が国内の原発から生じた使用済み燃料(注1参照)をそのまま最終処分に供するという方法(「直接処分」あるいは「ワンスルー方式」と称される処分方式=海外の多くの国で採用されている方法)ではなく、核燃料サイクル(上記の図を参照)を用いて使用済み燃料を「再処理」(注2参照)することによりウランとプルトニウムを回収し、再処理後に残された廃液を「高レベル放射性廃棄物」として最終処分に供するという方式を採っていること、この方式を採用していることの主な理由(注3)を説明しました。また、この方式に基づき生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分場を建設する任を負っている「原子力発電環境整備機構』(英語の略称:NUMO)により現在行われている最終処分地の候補地募集・選定の作業とその問題点などについて記しました。

(注1:正確には「使用済みウラン燃料」。使用済み燃料の中には、未反応のために残存しているウランと発電中に非核分裂性のウラン238から生じた核分裂性のプルトニウムが含まれているため、これらを回収すれば原発の燃料として活用することができます)

(注2:使用済燃料を長さ約3?4cmの小片に切断した後、溶解槽で硝酸により溶解し、ウランとプルトニウムを分離して回収します)

(注3:国が放射性廃棄物処分のために使用済み燃料を再処理する方法を採用していることの意図は二つあります。ひとつは最終処分場で保管する高レベル核廃棄物を調製し用意すること、もう一つは再処理により得られるプルトニウムを発電用の燃料として用いることです。すなわち、日本はエネルギー資源が乏しいため、国は当初から使用済み燃料からプルトニウムを回収して有効に再利用することの実現を目標にしています。このために1988年の日米原子力協定改定に際して使用済み燃料の再処理を行うことを米国から許されたのを機会に、「発電のために使用したプルトニウムよりも多い量のプルトニウムを得ることができる」とされる高速増殖炉を建設し実用に供すること(「もんじゅ」の開発計画)を最も重要な目標として、高速増殖炉の燃料に用いるためのプルトニウムを得ることを目的に、使用済み燃料の再処理を行うことができる核燃料サイクルの実現に着手しました。しかし中心的な目的である高速増殖炉「もんじゅ」の開発計画は難航を来し、その後実現の可能性がないものとして、原子力規制委員会の勧告に従い2026年に放棄されています(注3-1参照)。しかしながら、この中心的目標が失われた後も、国は通常の原子炉によるプルサーマル発電(注3-2参照)に用いられるMOX燃料(ウランとプルトニウムの混合燃料)の原料であるプルトニウムを得るためとして、核燃料サイクル計画を存続させています。核燃料サイクルにおいては使用済み燃料の再処理は欠かすことができない過程であるため、核燃料サイクルを採用している限りは、使用済み燃料をそのまま直接地下深くに処分するという単純な最終処分の方法(「直接処分」あるいは「ワンスルー方式」と称される処分方法)を採用することは不可能です。すなわち、核燃料サイクルにより使用済み燃料の再処理を行い、処理後に廃液の形で生じる高レベル廃棄物を最終処分に供するという方法を採らざるを得ません)

(注3-1:しかし「もんじゅ」開発計画は放棄されたものの、国は引き続きプルトニウムを利用できる原子炉を含む新型炉などの研究開発に取り組む方針を示しています。そのため、例えば政府は、次世代型の原子炉の一つ「高速炉」の開発に向けて、実証炉の設計や建設を担う中核企業に、高速増殖炉「もんじゅ」などの開発に携わってきた三菱重工業を選定したことを7月12日に公表しています。)

(注3-2:発電に用いられている通常の原子炉=ウランを燃料とする「軽水炉」=でウラン燃料とMOX燃料を併用することによる発電方式)


【使用済み燃料の再処理・核燃料サイクルに関連した様々な不確定要因】

放射性廃棄物を「直接処分」の方式により最終処分する場合、使用済み燃料は、適切な温度に下がるまで空気あるいは水により冷却した後、そのまま放射線を遮蔽する能力を有する適切な材質の容器に収容して地下の最終処分場へ運びこめば最終処分は完了します。しかし、上述のように、国は、このような単純な方法ではなく、核燃料サイクルを利用して使用済み燃料を再処理に供し、再処理後に生じる廃液を高レベル放射性廃棄物として最終処分に供するという技術的に高度で複雑な方法を採っています。このため、これまでに経験したことのない未知の問題が山積しています。

再処理に欠かすことができない核燃用サイクルの中核施設である再処理工場は1993年に着工されたものの未だに完成していません。また、回収したプルトニウムを原料としたいわゆる「プルサーマル発電」に用いるMOX燃料を加工するための工場も2010年に着工されているものの未完成です。一方、プルサーマル発電に供された後に生じる「使用済みMOX燃料」の扱いに関する問題はまったく未検討に等しいというのが現状です。現時点では、国による放射性廃棄物計画はこのように主要施設が未完成で完成時期が確定していないという中途半端な状態に置かれているため、国の計画には以下に示すような様々な不確定要因が多々存在しています。このため、国の核燃料サイクル計画とこの計画を前提とした核廃棄物の処分計画は、果たして実現可能なのか、計画の将来が危ぶまれます。

以下に様々な不確定要因について具体的な説明を記すことにしますが、その前に、核燃料サイクルを中心とした国の計画を理解していただくために、使用済みウラン燃料の再処理を前提とした一連の関連技術の過程について簡単な説明を記します。

1 発電後に生じた使用済みウラン燃料→再処理工場で再処理に供し、核燃料として有用なウランとプルトニウムを分離回収する→再処理後に生じた高レベル放射性廃棄物を「ガラス固化体」にする→約50年間地上で保管する→その後に地下の最終処分場に保管する(注参照)

2 ウラン(新たなウランあるいは分離回収したウラン)と回収したプルトニウムからMOX燃料(ウランの酸化物とプルトニウムの酸化物の混合物)を加工する。

3 このMOX燃料を通常のウラン燃料といっしょに通常の原発(軽水炉)で用いることにより、いわゆる「プルサーマル発電」をおこなう

4 上記3の段階で生じる「使用済みMOX燃料」の再処理を行うことにより、プルトニウムを回収し(この段階で生じる放射性廃棄物は上記の方法により最終処分に供する)、回収されたプルトニウムを原料にして再びMOX燃料を製造する(ただし、冒頭に示した核燃料サイクルの説明図では、何回でも使用済みのMOX燃料を再処理して再利用に供することがあたかも可能であるかのように描かれていますが、使用済みMOX燃料の再処理技術は確立されておらず、現時点では不明な点が多いため、国は使用済みMOX燃料の再処理に関してはきわめて漠然とした計画しか考えていません)

5 上記の工程を繰り返すことにより原発による発電を継続的におこなう

(注)現時点では、日本の原発から生じた使用済み燃料の一部はフランスや英国の施設で再処理に供されており、海外での再処理により生じた高レベル放射性廃棄物は「ガラス固化体」の形ですでに日本へ送り返されており、現在、六ケ所村の再処理工場内の施設で保管されています。

以上が国が構想している核廃棄物の最終処分計画に関連した一連の技術ですが、これらの技術はいずれも日本では未だ十分には確立されておらず、そのため以下に示すように、いずれの段階の技術に関しても、無視することができない重大な問題点すなわち不確定な要因が多々存在しています。


不確定要因その1:異例の巨費を投じながら未だに完成の見込みが不透明な再処理工場

いつから使用済み燃料の再処理が可能になるのかは不明

前述のように、国の構想に基づいて原発から生じる核廃棄物を最終処分に供するためには、使用済み燃料の再処理施設(=核燃料サイクルの主要施設)を欠かすことができません。ところが現時点では再処理工場は完成していません。日本原子力燃料㈱が青森県六ケ所村において再処理工場の建設を開始したのは1993年(完工予定1997年)のことですが、これまでに14兆4400憶円もの巨費が投じられているにもかかわらず(使用済燃料再処理機構:2021年6月の公表資料)未だに完成していません。これまで完工時期は26回も延期されており、事業者の日本原燃㈱は、2022年末に、「今年度上期」としていた完成時期の目標を2年ほど遅らせ、「2024年度上期のできるだけ早期」としています(NHKデジタル版2022年12月26日)。このため、すでに全国の原発からから六ケ所村に送り込まれている国内で生じた使用済み燃料の再処理がいつ本格化するのか、その時期は依然として定かではりません。また、試運転段階で大きなトラブルに見舞われるようなことがあれば、本格稼働の時期がさらに遠のくことも考えられます。

再処理工場が実際に十分な処理能力を備えているかは不明:原発敷地内で溜る一方の使用済み燃料

計画では使用済み燃料の年間の処理能力は800トンを予定しているとされていますが、工場が未完成である現状では実際の処理能力は不明であり、実際に稼働させてみないと確かなことは言えません。実際に稼働させても、予定した処理能力を大幅に下回る事態が生じることも考えられます。そのような事態が生じれば、放射性廃棄物の処分計画は大きく狂ってしまうことになります。

再処理工場の完成・稼働が計画よりも大幅に遅れているため、使用済み燃料の再処理は現時点では全く進んでいません。このため全国の原発において使用済み燃料が溜まり続けています。2023年3月末の時点では、合計1万5610トンの使用済み燃料が各原発の使用済み燃料用のプールに保管されていますが、すでにプールの容積の7割~8割を占めているとされており、発電所内での使用済み燃料の保管は限界に近づいています(2023年8月1日付け毎日新聞デジタル版)。再処理工場が近々完成し、予定された能力で使用済み燃料の再処理がスムーズに進行するならば、原発内で保管されている使用済み燃料が増え続ける事態は将来的には解消されるはずです。しかし、再処理工場が実際にいつごろから再処理を実際に開始できるのかは現時点では不明であり、このため電力各社は使用済み燃料の中間貯蔵施設の建設を考えざるを得なくなっています。すなわち、核燃料サイクルによる再処理を前提とした放射性廃棄物の最終処分という問題は、すでに最初の段階で行き詰っていると言わざるを得ません。このような状態が長期かするならば、核燃料サイクルを前提とした放射性廃棄物の処分計画は破綻を来すことになるでしょう。

完成されていない再処理技術:トラブル続きの「ガラス固化体」の製造

また、再処理の工程では、溶融させ液状にしたガラスと再処理後に生じた高レベル放射性廃棄物を混ぜ合わせてガラス内に封じ込め、「ガラス固化体」とするための技術が必要とされますが、この技術が未だ完成されていないという問題も存在しています。ガラス固化体の技術は最終処分に欠かすことができない技術です。しかし、2008年にはガラス固化体の製造に失敗しており(原子力資料情報室2008年2月12日)、2016年~2021年の間に4回もガラス固化体製造の過程でトラブルに見舞われ作業を長期にわたり中断しており、原子力規制委員会もこの問題を重要視しています(東京新聞デジタル版2022年2月11日)。ガラス固化体の製造を安定して円滑に行うことができなければ、最終処分場で保管するための放射廃棄物を用意することができないことなり、最終処分計画そのものが無意味と化してしまいます。上述のようにガラス固化体製造の技術は欠かすことができない技術であるため、再処理技術と同時に確立されていなければならないのですが、現状での先行きはきわめて不透明です。

不確定要因その2 未だに完成されていないMOX燃料加工工場

核燃料サイクルを利用して使用済み燃料の再処理することにより高レベル放射性廃棄物を最終処分に供するという処分方式を採用していることが意図しているのは、前述のように単に最終処分場に供する核廃棄物を用意することではなく、エネルギー資源の有効利用を図ることです。すなわち、使用済み燃料に含まれているプルトニウムを回収して原発の燃料として利用することが再処理を行うに際しての欠かすことができない目的なのです。より具体的には、再処理により回収されたられたプルトニウムを用いてMOX燃料を製造し、通常の原発(軽水炉)による「プルサーマル発電」の燃料として用いることが再処理をおこなうことのもう一つの目的です。この目的のためにはMOX燃料の加工施設が必要であり、このため六ケ所村の再処理工場の隣接地にこの施設が建設されつつあります(着工2010年)。しかし、これまでに2兆4300億円が投じられているものの(使用済み燃料処理機構の公表資料2021年6月)未だに完成していません。完成時期は2024年上半期とされていますが、再処理工場の場合と同様に定かではありません。MOX燃料を加工することができなければプルサーマル発電を行うことは将来的に不可能となります(注参照)。日本では東海村の日本原子力開発機構の施設「プルトニウム技術開発センター」によりMOX燃料の加工技術が確立されているとされていますが、使用済み燃料の再処理により得られたプルトニウムを用いてMOX燃料を大規模に加工するという経験は有していません。このため加工工場が完成しても、予定通りの能力で大規模に安定してMOX燃料を加工することができるとは限りません。MOX燃料の加工に困難をきたしたならば、たとえ再処理技術を経ての高レベル核廃棄物の最終処分という目標は実現できても、プルサーマル発電を通じてのエネルギー源の有効利用という核燃料サイクルのもう一つの重要な目標は実現できないことになります。

(注:現在、日本の少数の原発でプルサーマル発電が行われていますが、使用されているMOX燃料は日本の使用済み燃料に由来するプルトニウムを原料としてフランス・英国で加工されたものです)


不確定要因その3:「使用済みMOX燃料」を再処理して、再びプルトニウムを回収することは果たして可能なのか?

冒頭に示した核燃料サイクルの説明図では、使用済みMOX燃料は何度も再処理してプルトニウムを回収することができるかのように描かれています。ほんとうに何度も再処理することができるのであれば、資源の有効活用という観点からは非常に意義のあることですが、果たしてほんとうでしょうか。

国や電力会社が使用済みMOX燃料の扱いをどのように考えているのか、不明な点が多いのですが、関電が発電所内に溜まっている使用済み燃料の一部をフランスに移送すること意図していることを福井県に伝えた際に、使用済みMOX燃料も同時に移送しフランスでの再処理を試みてもらうことも意図していると伝えていたことが去る6月12日に明らかになりました。同日の日経新聞(デジタル版)によれば「日仏両政府の合意を踏まえ、大手電力など11社が進める再処理の実証研究の一環として、関電が高浜原発の使用済み燃料を20年代後半にフランスに搬出する。国内で使用したMOX燃料が再処理できるかを検証する」とされています。また、2021年9月27日のNHKの報道によれば(デジタル版:特集「行き詰る使用済燃料最終処分問題」)「『再処理』という言葉は同じだが、六ケ所村の再処理工場では2回目以降の再処理ができないため、別の施設を建設しなければ、このサイクルは回らない。回そうとすると、さらに膨大なコストが必要になる」と報じています。「使用済みMOX燃料の再処理の可能性をこれからフランスで検証してもらう」「MOX燃料の再処理には新たな再処理施設が必要、さらに膨大なコストが必要になる」などとするこれらの報道内容が事実であれば、使用済みMOX燃料を再処理できる可能性は現実には非常に小さいのではないか、少なくともその可能性は不明であると言わざるをえません。

使用済みMOX燃料の再処理が不可能であれば、プルトニウムを再び回収することも不可能になるだけではなく、MOX燃料と通常のウラン燃料を併用したプルサーマル発電がおこなわれた後の使用済み燃料は、全量をそのまま放射性廃棄物として処分しなければならない、すなわち直接処分しなければならないことなります。これでは再処理を前提とした最終処分と資源の有効活用を意図した核燃料サイクルの意義は大幅に減じられることになります。


不確定要因その4:MOX燃料を用いたプルサーマル発電は本当に必要とされているのか?

国は使用済み燃料の再処理により得られるプルトニウムの有力な用途である高速増殖炉「もんじゅ」の開発は断念しましたが、再処理により得られるプルトニウムを用いるプルサーマル発電の推進・拡大を意図しており、これまで計画通りに進んでいないものの、現時点でもこの方針を貫こうとしており、大手電力会社による業界団体である電気事業連合会も国の方針に従うとしています。このため、同連合会は2020年12月に新たな目標を掲げ「2030年までに少なくとも12基でプルサーマル発電を行う」としています。しかし、福島第一原発事故以降に再稼働されている原発は10基ですが(2022年8月時点)、このうちプルサーマル発電を実際に行っているのは現時点では4基に過ぎません。

国は原発の使用済み燃料(正確には使用済みウラン燃料)を再処理して発電中に生成したプルトニウムを用いて作られたMOXをプルサーマル発電に使用することは(注:プルサーマル発電では通常のウラン燃料の一部をMOX燃料に置き換えて発電が行われます)、資源の有効利用という観点からは一定の意義を有していると言えます。ところが、プルサーマル発電には以下に示すような無視できない重要な問題点が存在しているため、果たしてMOX燃料を用いたプルサーマル発電が実際に必要とされているのかはかなり疑問です。

プルサーマル発電の問題点:プルサーマル発電には以下のような欠点が存在しています。
・プルサーマル発電は運転中の原子炉の安定性に悪影響を及ぼします。すなわち制御棒の効果が低減する、ウラン燃料とMOX燃料という二種類の核燃料を用いているため燃料の燃え方にムラが生じて燃料棒が破損しやすくなる、出力の変化の仕方がより急激になる、などの現象が起きるとされています。これらの現象は場合によっては事故につながりかねません。すなわち、プルサーマル発電はウラン燃料のみによる通常の発電方式よりも安定性に欠ける危険な発電方式であると考えられます。

・使用済みMOX燃料の発熱量は通常の使用済みウラン燃料の発熱量の4~5倍にもなるため、原発施設の外への持ち出し先がありません。

・MOX燃料はウラン燃料よりも格段に高価であるため、プルサーマル発電を行うことの経済的メリットは存在していません。すこし以前の数字ですが、貿易統計から割り出された燃料費は、ウラン燃料の場合1トン当たり1.8~1.9憶円(1998~1999年:関電大飯1号機、高浜3号機)、MOX燃料の場合は1トン当たり8億円(1999年関電高浜4号機)とされています。また電気事業連合会のコスト検討小委員会によれば、国内でMOX燃料を製造した場合は、使用済みウラン燃料の再処理費用を含めると1トン当たり約25億円とされています。すなわち、使用済み燃料の再処理に由来したMOX燃料を用いてプルサーマル発電を行うことは、わざわざウラン燃料よりも格段に高価な燃料を用いて、通常のウラン燃料による発電よりも不安定な状態で発電を行うことを意味しています。

たとえ、プルサーマル発電がエネルギー資源の有効活用を意味しているとしてもプルサーマルという発電方式が内包している上記のようなマイナス面を考えるならば、プルサーマル発電が必要とされているとは到底考えられません。

プルサーマル発電を積極的に推進しようとしているのは日本だけ:プルサーマル発電の活用は原発を保有している国では早くから検討されており、日本でも1980年代からプルサーマル発電導入の検討が開始されていましたが、現状では海外でプルサーマル発電を積極的に推進している国は存在していません。フランスでは現存しているラアーグの再処理工場(創業1976年)が稼働している間だけに限ってプルサーマル発電を行うとされています。ドイツとスイスは、すでに回収されているプルトニウムを使い切るまでしかプルサーマル発電を行わないとしています。英国はプルサーマル発電を行わないとしています。このように各国がプルサーマル発電に積極的でないのは、その理由は様々であっても、結局はプルサーマル発電を行うことに大きな利点は存在していないことがその主な理由であろうと推測されます。

プルサーマル発電推進の構造:プルサーマル発電の実施を電力業者へ押し付け、費用は消費者が負担

日本でプルサーマル発電が推進されようとしているのは、元を正せば、高速増殖炉「もんじゅ」用のプルトニウムを得るために核燃料サイクル施設の建設が行われたものの肝心の「もんじゅ計画」が難航し実現の見込み見いだせなかったことに由来しています。主目的の実現が無理になった時点で核燃料サイクルを中止すべきだったのですが、国は核燃料サイクルを利用した使用済み燃料の再処理という方針に固執しています。そのため、国はプルトニウムを消費することを目的にプルサーマル発電を電力業界に押し付けているのです。本来であれば、ウラン燃料による通常の発電よりも費用が格段に高くつき、安全性に劣るプルサーマル発電は電力会社にとっては何のメリットも存在していないはずです。しかし、プルサーマル発電に要する費用は最終的に電気料金に反映させることが可能であるため、電力業界は国の方針に従っているに過ぎません。このため電気事業連合会は国の方針に従いプルサーマルを推進するとしていうものの、国の思惑通りにプルサーマル発電が拡大するかは多分に疑問です。プルサーマル発電が拡大しないならば、MOX燃料の大半は使い道を失います。そうなれば使用済み燃料の再処理することの意味も失われます。つまり核燃料サイクル計画は意味を失います。このようなプルサーマル発電推進の構造を考えるならば、回収されたプルトニウムによりプルサーマル発電を行うことの必要性が存在していないことは明らかです。国はプルサーマル発電推進という無意味な方針を撤回すべきです。
(上記のプルサーマル発電、MOX燃料の問題点に関する説明の多くは、原子力資料情報室の資料「プルサーマル発電計画の現状と問題点/2008.5.29」からの引用によるものです)


不確定要因その5 使用済みウラン燃料を核燃料サイクルを利用して再処理することに、果たして核廃棄物の最終処分に関連した利点は存在しているのか?

資源エネルギー庁は「使用済み燃料は、再処理により、重量にして約95%が再利用可能ですが、残りの5%は再利用できない廃液(=高レベル放射性廃棄物)になります」としており(「放射性廃棄物の適切な処分に実現に向けて」:資源エネルギー庁2017-06-16)、あたかも「再処理」により放射性廃棄物の量を大幅に減らすこと可能であり、このことが最終処分の方法として使用済み燃料の再処理いう方法を用いることの利点であると思わせるような説明しています。しかし、再処理という過程を経て最終処分に供する放射性廃棄物を大幅に削減できるとしても、次の段階においては、すなわち最終処理により得たプルトニウムから製造されたMOX燃料を用いたプルサーマル発電の段階においては、発電後に生じる放射性廃棄物の量を大幅に削減できるとは限りません。というのは、プルサーマル発電後に生じる使用済みMOX燃料をもう一度再処理に供することができなければ、使用済みMOX燃料は全量をそのまま最終処分すなわち「直接処分」に供しなければならないことになるからです。前述のように使用済みMOX燃料をもう一度再処理する技術は未だ確立されていません。このため、使用済みMOX燃料の全量を核廃棄物として直接処分しなければならない可能性は大であると言えます。

また、原子力資料情報室によれば(2008-5-29 「プルサーマル発電の現状と問題点」)使用済み燃料の再処理による廃棄物とプルサーマル発電により生じる廃棄物とを合わせた廃棄物の量は、高レベル廃棄物以外の各種の核廃棄物も含めて計算すると、大幅に増えるとされています。この観点に基づくならば、使用済み燃料を再処理しても核廃棄物の量が大幅に減る見込みはなく、このため使用済み燃料の再処理という手段には何ら利点は存在していないことになります。

結局のところ、国が使用済み燃料の再処理を経て核廃棄物を最終処分に供するという処分方式を採用しているのは、元を正せば、この処分方法が有益な利点を備えた最適の方法であるという理由によるものではないと言わざるを得ません。エネルギー資源に乏しい日本が資源の有効利用を図るためには、すなわち高速増殖炉による発電あるいはプルサーマル発電の燃料であるプルトニウムを得るためには、核燃料サイクルにおける使用済み燃料の「再処理」という工程を欠かすことができないために、使用済み燃料を最終処分に供する方法として、「直接処分」(ワンスルー方式による処分)という単純な方法ではなく、核燃料サイクルという複雑な技術による「再処理」を経て処分するという方法を採らざるを得なかったというのが、最終処分の方法として「再処理」という方法が採用されたことの本当の理由であると考えられます。しかし、上述のように、「使用済み燃料の再処理」という放射性廃棄物の処分方法には廃棄物の量が大幅に減るという利点はほとんど認められません。このため、使用済み燃料の再処理による放射性廃棄物の処分を行う計画は放棄し、「直接処分」の方式に計画を変更すべきであると言わざるを得ません。


【結論】
エネルギー資源の有効利用(再処理により回収したプルトニウムの再利用)を主目的とした核燃料サイクル計画は、極めて長期にわたり異例とも言うべき巨費が投じられてきたものの、上述のように様々な不確定要因が存在しており、先行きが極めて不透明であるため、破綻を来しつつあると言わざるを得ません。一方、プルニウムを用いる高速増殖炉「もんじゅ」の開発が失敗に終わっただけではなく、プルトニウムを用いたMOX燃料によるプルサーマル発電は通常の発電よりもかなり多額の費用を要するものの発電中の原子炉の安全性が通常の発電の場合よりも劣っているという欠点が存在しているために、プルトニウムの有効な用途とは考えらません。これらの結果、結局は再処理により回収するプルトニウムの用途は実質的に存在していないに等しいという状況にあることになります。このような状況を考えるならば、エネルギー資源の有効利用を主目的に位置付けていた核燃料サイクル計画は完全に破綻していると言わざるを得ません。また、このように核燃料サイクル計画が破綻しているため、核燃料サイクルにおける再処理を活用して核廃棄物を最終処分に供するとする計画も事実上破綻を来していることになります。

また、核燃料サイクルの中核施設である再処理工場に関しては、これまでに指摘した問題点以外に、大事故の危険性、テロ対策、大量のトリチウムの環境中への大量放出といった、極めて対処が困難な無視することができない深刻な問題が存在しています。たとえば、フランスのラアーグ再処理工場は、1980年4月に、操業中に通常の電源が喪失し非常用電源も機能しなかったために危機的状態に陥りましたが、フランス軍の大型電源車を急遽出動させることができたため危うく危機を免れたという事故を起こしています。再処理工場には各原発から送り込まれた使用済燃料をはじめとして様々な核物質が極めて大量に集積されているため、いったん事故が起きて連鎖的に核爆発を起こすに至ったならば、チェルノブイリ原発事故や福島第一原発の事故をはるかに上回る世界規模の破局的な大惨事になりかねません。また、この他にも、トリチウム放出という問題が存在しています。昨今、東電によるトリチウムを含んでいる処理水の海洋への放出が問題になっていますが、ラアーグや英国セラフィールドなどの再処理工場からは、操業中は通常の原発から放出される量とは比べ物ならない格段に多量のトリチウムが放出されていることが知られています。六ケ所村の再処理工場でも、試験運転中に大量のトリチウムが放出されたことがあり、本格的に稼働した場合は、海外の再処理工場の場合と同様に大量のトリチウムが、東電福島原発の「処理水」からの放出量をはるかに上回る量のトリチウムが、放出されることになるものと予想されます(注参照)。これらの深刻な問題が生じるのを回避するためにも、核燃料サイクル計画を放棄する以外に方法はありません(注:環境省の2022年3月31日付けの資料によれば、福島原発から放流が予定されている処理水におけるトリチウムの年間処理量=放出量は22兆ベクレル以下にすることが目標とされていますが、一般の原発におけるトリチウムの年間放出量は数十兆~数百兆ベクレル、フランスのラアーグ再処理工場からの2018年度におけるトリチウム放出量は11,4600兆ベクレルとされています)

核燃料サイクル計画が実質的に破綻を来していることが明らかであるだけなく、上記のように再処理工場の事故や大量のトリチウム放出などの深刻な問題点が存在していることを考えるならば、政府は政策を変更し、核燃料サイクル計画・再処理工場に関する計画を断念し放棄すべきです。また核燃料サイクルが破綻を来しているため、再処理を利用して核廃棄物を最終処分に供するという方法も放棄すべきです。すなわち、現在採用されている再処理により生じる高レベル廃棄物を最終処分に供するという方も断念し、使用済み燃料をそのまま処分に供する「直接処分」による処分方法に変更すべきです。

民主党政権時代に、核廃棄物を「直接処分」することに関する検討がおこなわれ、処分に要する費用などを考えた場合は直接処分による方法の方が適切とされたものの、政策の変更に関連して膨大な手数と費用を要するという理由で、処分方法の変更を断念しています。しかし、このまま何の見通しもたたないまま、既定の方針であるという理由で、ただただ時間と費用の浪費を続け、核燃料サイクル計画を強行することは許されません。また、核兵器に用いるプルトニウムを手に入れることができる核燃料サイクルという技術は、核兵器の製造・保有に直結した技術、すなわち核疑惑を招き「非核三原則」を侵しかねない技術です。この意味からも、核燃料サイクル計画を速やかに断念すべきです。

2023年8月13日 

《 脱原発市民ウォーク in 滋賀 》呼びかけ人の一人:池田 進

〒520-0812
大津市木下町17-41
電話:077-522-5415
メールアドレス:ssmcatch@nifty.ne.jp

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脱原発 市民ウォーク in 滋賀 8月の予定

2023-07-16 22:55:40 | 記事
老朽原発 高浜1・2号機うごかすな!美浜3号機停止!
岸田政権の原発暴走反対!
 
◆ 第115回 脱原発 市民ウォーク in 滋賀 ◆

「太平洋への核のゴミ捨てに反対するテニアン島(マリアナ諸島の中の一つで
サイパン島のとなり)の市長さんが若狭へ交流に来られたとき、氏は
島民の気持ちを切々と語られました。かつて日本の植民地下にあった
太平洋(旧「南洋」)の島民の過去の歴史と現在、心の奥底から出てくる
叫びと訴えに、どうしても私たち若狭の住民の立場を重ねて聞かざるを得ませんでした。」
(中島哲演著『原発銀座・若狭から』KK光雲社刊、1988年)

「このように、核燃料サイクルの出発点から終着点まで、
私が一言で申し上げた『差別と犠牲の構造』が幾重にも
積み重ねられているのです。」(同前)

このほかにも、「敦賀原発に黒人労働者・・延べ2百人前後も、
危険作業に従事、福井新聞78.2.16」とか、「若狭は日本のインディアン居留地」、
「美浜原発職員が白血病死・・被ばくとの関連調査、冷却水分析に従事、
福井新聞79.11.13」、

「エリート青年が自殺」、「バクチ・花札・サラ金・覚せい剤」、
「原爆被爆者と全く同じ症状」、「ジャパユキさん」、
「ムラサキツユクサの斑点」、「年寄と借金だけが残る」、
「恐るべき第二の”水俣”?」など、35年前のこの中嶌さんの
(この本では「中島」さん標記)著書は、3老朽原発再稼働強行真近と
なった現在、ますますその告発の眼光の鋭さは増し、警鐘はさらに大きく!
と叫ばざるを得ません。

1450万人の近畿の水源=びわ湖と私たちの未来=子どもたち孫たちを守りましょう!
<とき・ところ> ご一緒に歩きましょう! 参加無料! 予約不要! 


<とき・ところ> 
2023年 8月19日(土)13:30  JR・京阪膳所駅前集合  

★コース = ときめき坂 ~ 元西武大津ショッピングセンター前 ~ 関電滋賀支社前~
       ~ びわ湖畔

☆主 催=21世紀 脱原発市民ウォーク in 滋賀 実行委員会
☆呼びかけ人・・・池田進(原発を知る滋賀連絡会 電話077-522-5415)
         岡田 啓子(ふぇみん@滋賀 電話077-524-5743)
         稲村 守(9条ネット・滋賀 電話080-5713-8629)


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<トピックス> 


2023.6.7老朽原発・高浜1号機うごかすな!高浜現地抗議行動での中嶌哲演さん
(デモ写真、中央)

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「脱原発 市民ウォーク in 滋賀」 チラシのダウンロードは ⇒ コチラ

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