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* 第65回・脱原発市民ウォークin滋賀のごあんない *
* 2018年1月13日(土)午後1時半:JR膳所駅前広場 集合 *
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■ 原子力規制委員会の中立性・独立性という問題 ■
福島第一原発事故のために停止されている原子炉の再稼働の可否について、
いま一番大きな行政上の直接的な影響力と権限を持っているのは
原子力規制員会に他なりません。
原子力規制委員会は再稼働の申請が行われている原子炉に関して、
新規制基準への適合性について審理を行ってきましたが、
これまでのところ審理を終えた原子炉については、すべて
適合性を有しているとの判断を下し、実質的にそれらの原子炉の
再稼動を認めています。
審理の結果不合格とされた原子炉はこれまでに1基も存在していません。
このため、市民の多くは、とりわけ原発に強く反対する市民からは、
果たし原子力規制委員会は公正な判断を下しているのか、
政府や財界などのプレッシャーを前にして、その独立性と中立性は
維持されているのか、疑問が投げかけられています。
一方、政府は高速増殖炉「もんじゅ」に関して、
原子力規制員会による一昨年の勧告に従い2016年12月に廃炉にすることを
正式に決定しました。
また、昨年12月22日には関西電力が大飯1・2号機に関して
再稼動させるための安全対策に要する費用を負担することができないとして
廃炉を決定しています。この関電自らによる廃炉の決定は、
40年を超えて運転延長する場合の安全対策について規制員会が
厳しい条件を求めていたことの結果であると考えられます。
この「もんじゅ」の廃炉決定と関電による大飯原発1・2号機の廃炉決定は、
議論の余地はあるかもしれませんが、原子力規制委員会が
十分ではないにしても一定の役割を果たしていることの証左であり、
評価に値すると言えるのではないでしょうか。
このような状況のなかで、私は「原子力規制委員会」という組織の
存在をどのように位置づけ評価したらよいのか、その公正性や中立性は
保障されるのかといったことなど規制委員会の存在意義について考えて
いましたところ、昨年末に岩波書店より
「原子力規制委員会 ~独立・中立という幻想」と題された本が
出版されました(岩波新書)。
著者は新藤宗幸氏(千葉大名誉教授)。行政学を専門とする人物であり、
市民主体の行政の在りかたなどを論じている、市民オンブズマンの活動にも
理解のある人物です。新藤氏はおもに行政学的な見地から
原子力規制委員会のあり方・問題点など論じ、その結論部分において、
原子力規制委員会の中立性と独立性を保障するためには、
現在、政府の「行政委員会」の一つとして位置づけられている規制員会を、
もっと政府、内閣あるいは内閣府からの独立性が強い、「会計検査委院」や
「人事院」のような組織にすべきだと提言しています。
以下に新藤氏の提言の概要を紹介いたします。
《原子力規制員会が国家行政組織法第3条に基づく行政委員会であることをもって、その独立性を高く評価する言説はかなり一般化している。だが省の外局である行政委員会も(注:原子力規制委員会は環境省の外局です)、いまや多数にのぼる合議機関の一部であり、逆に三条機関と類似の合議機関も存在しているため、原子力規制員会が国家行政組織第三条にいう委員会として設置されたからといって、原子力規制機関として相応しい独立性・中立性を備えているとは言えない。また、委員の任期切れを名分に政権が人事に干渉できること、委員会の事務局である原子力規制庁の職員にはかつて原発を推進してきた原子力安全委員会、原子力保安院、文科省などから移動してきた職員が多く、これらの職員に「ノーリタンルール」(注:かつて属していた省庁などによる干渉や影響を断つために、元の省庁へ戻ることは許さないとするルール)が幹部人事に関しては有名無実化していること、原子力規制庁の幹部に警備(公安)警察官僚が就任していることなどの要因を加えて考えると、規制委員会の独立性・中立性はあきらかに「幻想」であると言える。このため新たな原子力規制機関の基本は政治的・経済的な圧力に左右されない組織構造を備えることが必要であり。そのためには、原子力規制機関を内閣の統轄から外さなければならない》
《環境省の外局とされている現行の原子力規制員会も含めて、日本の行政機関のほぼすべては内閣府の統括下にある。内閣府はもちろんのことだが、他の内閣府統括下の省・委員会・庁は執政部である内閣の意を踏まえて政策の立案・実施を担っていかなければならない。こうしたなかで内閣の統轄下にない中央政府機関は、会計検査委院と人事院である。会計検査院は憲法第90条を基本的根拠として会計検査院法に基づいて設置されており「内閣に対し独立の地位を有する」(会計検査院法第1条)合議制の行政機関である。人事院は三名の参事官からなる合議制機関であり、国家公務員法に設置の根拠を持つものであり、同法の第3条には「内閣の所轄の下に人事院を置く」と規定されている。「所轄」という言葉は、行政上はかな多様な使われ方をしているが、ここで言う「内閣の管轄の下に」は、その字面から受ける印象とは逆に、内閣からの独立性を示している。つまり人事院は業務の実施について内閣の指揮、命令、監督を受けることなく完全に独立して業務を行うことが認められており、事務総局は国家行政組織法の対象ではなく、組織の編成管理権は人事院に全面的に委ねられている。また人事院は、内閣に対する勧告権を持っているだけではなく、不利益処分の申し立てについての準司法的権限も有している・・・》
《環境省の外局である原子力規制委員会は国家行政組織法にいう三条機関に基づく行政院会であるが、新たな原子力規制機関を、人事院と同様に、内閣の統轄から外し、「内閣の管轄の下」に置くことによって、その独立性は格段に高まる。・・・脱原発社会に至るためには日本の政治・経済・社会の全般にわたる見直しが問われる。そのためにも、原子力規制の「中核」とされる機関の改革を必要としよう。以上に述べた新たな原子力規制システムは、あくまで現行法体系のなかで実現可能であり、たんなる机上の空論ではない》
私も滋賀県や大津市などの行政委員会である監査委員や教育委員会などに
接した経験があり、行政委員会の独立性(地方自治体の場合は知事部局・市長部局
からの独立性)はきわめて脆弱であることを実感していますので、
新藤氏の主張は十分に納得できるものでした。
2018年1月6日
脱原発市民ウォークin滋賀・呼びかけ人のひとり:池田 進
連絡先:電話:077-522-5415
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<脱原発 市民ウォーク in 滋賀> 1月の予定 → コチラ
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