波がしらの風貌「琵琶湖」
遠い戀
距離のない戀はない
密着した時
戀は戀でなくなる
解剖図をみるように
なにもかもが
確定されて
公文書をみせられるように
戀と交換される
そして
薄い紙のように
どこかえ
飛んで行ってしまう
戀は遠い程いい
世界
目の前で
物質が
かたまったり
とけたり
おいそがしい事実という
やっかいなものができて
それも美しい絵とか
優しい食べ物とか
きぶんが晴れる高層気流とか
そういうものなら
ヒマラヤのように
ユングフラウのように
うずたかく積もるほどあってもいいが
動乱 無視 破壊
秘密 薄情 陰謀
みんな裾野をひろげてはびこるものは
なんとかしてなくなれ
なんとかしてちぎれとべ
きれいなオフィスの深々とした
羊の皮の椅子にすわって
窓越しにちいさくみえる路上の困っている人々を
だれからの贈り物かもわからない豪華な花とまぜあわせて
視線をあそばせている
燈ともし前にはいなくなる人類は
余所の世界でやってくれ