新羅の森
おまえあそこえいったか
亡霊が住んでいる森へ
アソボ-くんがそういった
アソボ-くんはしっている
いつも下草のなかを
ひょいひょいとバッタの様に
あるきまわる
その朝はやく
アソボ-くんがやってきた
きょうのアソボ-くんは
小脇にノートブックを一冊抱え
さあ 出発!と小声で言った
出発ってどこえ?
アソボ-くんは言った
点検にいくんだよ
あの森を
少し低音でそう言った
大勢の昔の人々が
何かを語り合い論じ合っていた
ノドが乾くと下草の上の
すき通った玉露をのみながら
その議論はたちまち高熱をはっして
森の大樹がごーっとうなった
アソボ-くんはその記録を
手にしたノートブックに書き留めた
次の日アソボ-くんが
行方不明になった
僕の机のうえにいつの間にか
アソボ-くんのノートブックがおいてあった
*新羅の森・・・新羅三郎の塚のある円城寺の山麓の森