ヨ-コ
ヨ-コは
深い溝を
とびこえて
ふりむいて
大口あけて笑った
さながら笑う般若だ
ヨ-コは
そのまま荒野の方向に走った
向かい風のなかに
草いきれと
蒲公英の種が翻る
生温い日差しをこえて
ヨ-コは
画きかけのデッサンのはいった
バッグをふりまわしながら
ドシラ ドシラ とうたいながら
これからみる夢の本がまちどうしくて
夜明けの鳥のような足踏みをした
ヨ-コは
白い額縁のなかの
最前列のシートにすわって
こちらをみはじめた
額縁のそとの風景は
現実の物事であふれていた
ヨ-コは
ステージのほうへ向きなおり
開かれて行くページを
何一つみおとすまいと
夢の本を写し取った
カイトにして飛ばすために
ヨ-コは
こちら向きになって
額縁からはいだした
シュールなデザインのカイトが
荒廃した黒い空を水平線までおしやって
金襴緞子の布にした
ヨ-コは
花嫁になったのだろうか
風の便りがくるのを待とう