Gainsbourg La javanaise
Holiday
林檎の實をもった男の子
蛇を手首にまきつけた女の子
男の子は熟れきった真っ赤な林檎の實を
女の子の美しい蛇ととりかえっこしようと
女の子のあとを追っているのだ
女の子はながい間飼育した
レオナという名の南国の
瑠璃色の肌をしたその蛇は
だれにも渡したりすることはできない宝物なのだ
男の子の手にした林檎の實は
これも玲瓏とした美しい球体なのだ
爛熟した林檎の實にふさわしい
深く沈んだ、それでいて透きとおるような赤色だ
そのうち女の子の瑠璃色の蛇は
するすると女の子の胸の中へ
眠るためにかくれ
女の子は胸を両腕で抱えながら走った
男の子は手にした林檎の實を
思いあまって女の子に投げつけた
そんなことはわかっていた
林檎の實は走る女の子のずっと手前の石にあたって
ぽっかりわれた
芳しい薫がその場のヒロインになった
女の子は瑠璃色の体積を林檎の破片の上に
そっとのせた
艶やかなフィーリングと
密やかなワイルドが
男の子と女の子の間を
しばらく行き来した
それから
風景はフェニックスのように
濃い夕闇のなかへとびさった
キラッともえながら