居間塵(imagine)

居間塵、と書いて、イマジン。その日その時、流れゆく時の川から、思いつくままに掬いあげる。絵図とポエムの棚

Holiday

2012-10-17 18:07:30 | ポエム

Holiday

 

林檎の實をもった男の子

蛇を手首にまきつけた女の子

 

男の子は熟れきった真っ赤な林檎の實を

女の子の美しい蛇ととりかえっこしようと

女の子のあとを追っているのだ

 

女の子はながい間飼育した

レオナという名の南国の

瑠璃色の肌をしたその蛇は

だれにも渡したりすることはできない宝物なのだ

 

男の子の手にした林檎の實は

これも玲瓏とした美しい球体なのだ

爛熟した林檎の實にふさわしい

深く沈んだ、それでいて透きとおるような赤色だ

 

そのうち女の子の瑠璃色の蛇は

するすると女の子の胸の中へ

眠るためにかくれ

女の子は胸を両腕で抱えながら走った

 

男の子は手にした林檎の實を

思いあまって女の子に投げつけた

 

そんなことはわかっていた

林檎の實は走る女の子のずっと手前の石にあたって

ぽっかりわれた

 

芳しい薫がその場のヒロインになった

女の子は瑠璃色の体積を林檎の破片の上に

そっとのせた

 

艶やかなフィーリングと

密やかなワイルドが

男の子と女の子の間を

しばらく行き来した

 

それから

風景はフェニックスのように

濃い夕闇のなかへとびさった

キラッともえながら