世界遺産・国史跡・小牧野遺跡。青森市大字野沢字小牧野。
2022年9月29日(木)。
青森県立美術館の見学を終え、南へ15分ほど進むと、旧青森市立野沢小学校を改修した小牧野遺跡のガイダンス施設である青森市小牧野遺跡保護センター(縄文の学び舎・小牧野館、青森市野沢字沢部)に着く。ここで見学ののち、南約1.5㎞にある青森市小牧野遺跡観察施設(小牧野の森・どんぐりの家)の駐車場へ向かい、駐車場から200mほど歩くと世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一つである小牧野遺跡の環状列石に出会うことができる。
小牧野遺跡全景(南から北方向)。青森市街地・陸奥湾を望む。遺跡は標高80~160mの舌状台地上に立地している。
小牧野遺跡全景(北から南方向)。晴れた日には八甲田山を望むことができる。
小牧野遺跡は、縄文時代後期前半の環状列石(ストーン・サークル)を中心とする遺跡で、八甲田山西麓に広がる荒川と入内川に挟まれた、青森平野を一望できる標高80〜160メートルの舌状台地上に立地する。後背地には落葉広葉樹の森が広がっていた。
小牧野遺跡は、定住成熟期前半の環状列石を主体とする祭祀遺跡であり、丘陵地域における生業と祭祀・儀礼の在り方を示す重要な遺跡である。
中央帯。
環状列石の中央に立ってみると列石の内側に広い空間がある。この広場は、多くの人々が集うことのできる面積(約500㎡)が確保されており、彼らの精神文化と関わる「祭祀場」としての性格が考えられる。
また、広場の周縁が石垣状の列石に囲まれているため、さながら円形劇場のような空間効果を演出している。
環状列石は、遺構の中で最も高いところに斜面を平らに造成して作られた。中央帯が直径2.5m、内帯が直径29m、外帯が直径35mの三重の環を描くように配置され、その周りを囲むように直径約4mの環状配石や一部四重となる列石などが配置されており、全体では直径55mになる。配石の中には大型壺形土器(甕棺;かめかん)もみられる。
荒川から運んだと推測される石を、縦に置き、さらにその両脇に平らな石を横に数段積み重ね、さらにその脇に縦に石を置いて環状に並べて、そうして出来た環をさらに三重(一部四重)にしている。この並べ方は石垣の積み方に類似する煩雑な並べ方からも全国的にも非常に珍しく、「小牧野式」と呼ばれている。
見晴台から北方向に青森市街地・陸奥湾。
環状列石のほか、捨て場や湧水遺構、土坑墓群や土器棺墓なども発見されている。
環状列石に隣接する墓域や捨て場を中心に、土器や石器のほか、土偶やミニチュア土器、動物形土製品、鐸形土製品、三角形岩版、円形岩版など、祭祀的要素の強い遺物が出土している。特に三角形岩版は400点以上も出土しており、環状列石を中心に祭祀・儀礼が行われたものと考えられている。
縄文時代後期の大型壷形土器(土器棺)・赤色切断壷形土器をはじめとする十腰内1式土器・石器・石製品(三角形岩版等)・土製品(土偶・鐸形土製品等)のほか、列石内の覆土から続縄文時代の土器が出土している。
展望所から北に陸奥湾・浅虫温泉方面。