西院の裏路地 三
金澤ひろあき
少し面影の残る路地を歩いていると、三十年前のことがよみがえってくるのですから不思議です。
この路地で、こんなことがありました。冬のさなか、ショートパンツで素足の女の子が、思い詰めた顔で立っていました。一番寒い時に素足で、しかもかなり思い詰めた表情だったのです。しばらくすると、路地のさらに奥に行ってしまいました。
その後また戻ってきた時、男の子と連れ立っていました。幸せそうな表情でした。寒いけれど、彼のためのコーディネートだったようです。あの二人、結ばれたのかな、などと思います。
また、こんなことも。狭い路地から、男の子が自転車で突っ込んで来たのです。その頃、私は健康のために太極拳を習っていました。自転車が突っ込んで来た時、自然と体が太極拳の型のような動きをしたのです。どう考えても不思議なのですが、私は飛ばされず、突っ込んで来た自転車が止まり、乗っていた男の子が痛がっているのです。今も何が起こったのか、分かりません。
あの頃出会った人達、元気にされているのかな。
つぎはぎの記憶の地図を呼び覚ます ひろあき
金澤ひろあき
少し面影の残る路地を歩いていると、三十年前のことがよみがえってくるのですから不思議です。
この路地で、こんなことがありました。冬のさなか、ショートパンツで素足の女の子が、思い詰めた顔で立っていました。一番寒い時に素足で、しかもかなり思い詰めた表情だったのです。しばらくすると、路地のさらに奥に行ってしまいました。
その後また戻ってきた時、男の子と連れ立っていました。幸せそうな表情でした。寒いけれど、彼のためのコーディネートだったようです。あの二人、結ばれたのかな、などと思います。
また、こんなことも。狭い路地から、男の子が自転車で突っ込んで来たのです。その頃、私は健康のために太極拳を習っていました。自転車が突っ込んで来た時、自然と体が太極拳の型のような動きをしたのです。どう考えても不思議なのですが、私は飛ばされず、突っ込んで来た自転車が止まり、乗っていた男の子が痛がっているのです。今も何が起こったのか、分かりません。
あの頃出会った人達、元気にされているのかな。
つぎはぎの記憶の地図を呼び覚ます ひろあき