冬樹の喪が明けても修の様子は相変わらずだった。会社でも家でも、ごく普通に振舞ってはいるが、その健気さがかえって周りの者からは痛々しく感じられた。
透も父親が違うとはいえ実の弟を失ったわけだから、悲しく無念な思いは修以上のはずなのに、修を見ていると何故だか自分の方が楽なように思えるほどだった。
それ故、少し前に修が一人でこの夜更けに家を出て林の方へ向かっていくのを見たとき、透は言いようのない不安に襲われて思わず後を追ったのだった。
あの祠の所に修はいた。大きな石に腰を下ろしてソラと話をしているようだった。
「気に病むことはないぜ。あんたのせいじゃない。あんたが思ってたよりあの男が馬鹿な奴だったってことさ。」
ソラは修を慰めているようだった。
「僕の考えが甘かったのさ。まさか冬樹を標的にするなど…的は僕か透だとばかり思っていた。おまえと話す力を持った冬樹を、奴は樹だと思ってしまったのかもしれない。」
「そう深刻になるな。今でなくても、奴は何れ必ずあんたたちを消そうとしたに違いない。俺には奴の闇がはっきりと見える。樹よ…。今は嘆いているときではない。俺が蘇ったように、あんたも再びその姿を現せ。もはや、その能力を封じておくことに意味はない。」
ソラは修を樹と呼んだ。透には確かにそう聞こえた。
「聞こえたか?透!」
ソラは隠れている透に向かって言った。透はばつが悪そうに二人の前へ姿を現した。修は軽く微笑んだ。
「すべては近いうちに明らかになる。それまで内緒だぞ。」
でかい雲のような獣はニタニタと歯を見せながら言った。
長年一緒に暮らしていながら、修には透の知らない顔があるようで、透の不安はますます募るばかりだった。
次回へ
透も父親が違うとはいえ実の弟を失ったわけだから、悲しく無念な思いは修以上のはずなのに、修を見ていると何故だか自分の方が楽なように思えるほどだった。
それ故、少し前に修が一人でこの夜更けに家を出て林の方へ向かっていくのを見たとき、透は言いようのない不安に襲われて思わず後を追ったのだった。
あの祠の所に修はいた。大きな石に腰を下ろしてソラと話をしているようだった。
「気に病むことはないぜ。あんたのせいじゃない。あんたが思ってたよりあの男が馬鹿な奴だったってことさ。」
ソラは修を慰めているようだった。
「僕の考えが甘かったのさ。まさか冬樹を標的にするなど…的は僕か透だとばかり思っていた。おまえと話す力を持った冬樹を、奴は樹だと思ってしまったのかもしれない。」
「そう深刻になるな。今でなくても、奴は何れ必ずあんたたちを消そうとしたに違いない。俺には奴の闇がはっきりと見える。樹よ…。今は嘆いているときではない。俺が蘇ったように、あんたも再びその姿を現せ。もはや、その能力を封じておくことに意味はない。」
ソラは修を樹と呼んだ。透には確かにそう聞こえた。
「聞こえたか?透!」
ソラは隠れている透に向かって言った。透はばつが悪そうに二人の前へ姿を現した。修は軽く微笑んだ。
「すべては近いうちに明らかになる。それまで内緒だぞ。」
でかい雲のような獣はニタニタと歯を見せながら言った。
長年一緒に暮らしていながら、修には透の知らない顔があるようで、透の不安はますます募るばかりだった。
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