群れを為す野犬を見たことがあるだろうか…。
単独でウロウロしている捨て犬とは違って…人を見ても怯えもせずに集団で大道を闊歩する野犬の群れ…。
昭和40年代の中頃までは…自分の住んでいた町の商店街などでよく見かけた…。
当然…何事かあれば集団で襲い掛かってくるわけだから…人間の方も警戒してひとりでは手を出さない…。
商品を盗るなどの悪さをすれば…人間も追い立てるが…ゴミを荒らされたくらいじゃ知らん顔をしている…。
彼等は非常に頭が良く…人を怖れないというよりは人に追われないように餌を得るにはどうしたらいいかをちゃんと心得ている…。
彼等の餌場は…商店街の精肉店のゴミ置き場…。
解体した豚や牛・鶏など…栄養たっぷりの骨が山と置いてある…。
環境美化などあまり考えられていない時代のこと…肉屋さんの廃棄物など誰も問題にしないから…処理をするまでの間…まるのまま見えるところに出してあっても文句は出ない。
犬たちにとっては恰好の餌場…。 よく骨に集っている姿を見かけた…。
日本犬ではなさそうな大きなボスを筆頭に…同じような種類でその細君らしい雌と何匹かの仲間が居る…。
何れも身体の大きい犬ばかりだ…。
鶏の雛を飼い始めたのはそんな時代のことだった。
自分たち兄弟はそれぞれ自分のヒヨコを持っていた。
黄色い頭にそれぞれ赤・青・緑の印を付けて…どれが自分のヒヨコか分かるようにしていた。
ヒヨコにも学習能力はあるらしく…可愛がってくれる人には懐くが…苛める人には近付かない…。
上の弟はヒヨコを洗濯機に浮かべて泳がせる実験をしたり…何某か悪戯をしたので3羽全部に警戒されていた。
相手が誰かを見分ける…或いは何らかの手段によって判別する能力もあるようだ。
部屋の中で3羽を放すと…家族の膝に乗ったり降りたりして楽しげに遊ぶのに…近付いて相手が上の弟と分かった途端…慌ててUターンするが常だった…。
何度やっても同じで…相当…嫌われていたように思われる…。
自分はこの時期…15羽ほど鶏を育てた…が…成鳥になったのはたった4羽だった。
しかも…最後に生き残った2羽と死因の分かっている5羽を除いては…その死因は不明のままだ…。
最初の3羽は…自分が学校へ行っている間に遊びに来た幼い従妹が圧死させてしまった。
従妹はまだ赤ちゃんだったから…ヒヨコを可愛がっているつもりだったんだろう…。
原因が分からないのはその後の8羽…。
毎回…ヒヨコは雛のうちには家の中で飼育し…羽毛が白くなると…親父の作ってくれた鳥小屋に移していた…。
木製の丈夫な小屋で金網を張ってあった…。
普通に飼育を続け…前の晩までは元気なのに…或る朝…突然…死んでいる…。
自分は小学生の低学年だったから細かいところまでは覚えていないが…母親に聞いた話では…金網を何かが弄ったような後があった…ということだった。
だいたい毎回3羽ずつくらい育てていたから…その後も2度ほど同じような死に方をしたことになる…。
最後に飼った4羽は友だちの斡旋で貰った外国産の大きな鶏だった。
今度は…少し大きめになってから小屋に移した…。
この鶏は…それまでとは異なって気性が激しく…気をつけないと世話をしている飼い主が突かれるほど…。
ことに雄の鶏は大きくて獰猛だ…。
これまでのことがあるから育つかどうか心配していたが…立派な鶏冠を誇る成鳥に育ってくれた…。
やれやれ…やっと育ったと安心していたら…この凶暴な雄との別れはすぐにやってきた…。
夜のうちに野犬に襲われたのである…。
今度は金網を引っぺがし…雄と雌を一羽ずつさらって行った…。
そのあたりを探してみたところ…片方の足だけが残されてあった…。
あの雄のものか…ひとまわり小さい雌のものかは分からなかったけれど…。
不思議と…怒りも悲しみも湧いてこなかった…。
殺されて食われた鶏を思えば可哀想だとは思うが…それよりも…丈夫な金網を破り…小屋を破壊して餌を手に入れた野犬のことを考えた…。
彼等は生きなければならなかった…。
だから…獲物を捕らえて食っただけのことだ…。
金網を破るために…彼等も何処かしら痛い目には遭っているはずだし…民家に隣接した小屋を襲うのは彼らにとっては危険な行為でさえある…。
それでも獲物を襲い…貪欲に生き延びる…。
おそらく彼等はこれまでにも何度か小屋を狙ったに違いない…。
しかし…丈夫な小屋は簡単には壊れず…金網を変形したに過ぎなかった。
彼等は何度目かの挑戦でやっと目的を達成したと言うわけだ…。
ひょっとしたら死んだ鶏たちは…その時の恐怖がもとでショック死したのかもしれない…。
何としても生き延びる…。
まだ…小学生だった自分に彼等が伝えてくれた大事なメッセージだった…。
生き残った2羽は…安全のために近所の鶏をたくさん飼っているおばさんに引き取って貰った…。
其処では番犬も何匹か居て野犬に襲われるようなことはない…。
後々聞いたところでは…お蔭さまで無事に卵も産むようになったということである…。
単独でウロウロしている捨て犬とは違って…人を見ても怯えもせずに集団で大道を闊歩する野犬の群れ…。
昭和40年代の中頃までは…自分の住んでいた町の商店街などでよく見かけた…。
当然…何事かあれば集団で襲い掛かってくるわけだから…人間の方も警戒してひとりでは手を出さない…。
商品を盗るなどの悪さをすれば…人間も追い立てるが…ゴミを荒らされたくらいじゃ知らん顔をしている…。
彼等は非常に頭が良く…人を怖れないというよりは人に追われないように餌を得るにはどうしたらいいかをちゃんと心得ている…。
彼等の餌場は…商店街の精肉店のゴミ置き場…。
解体した豚や牛・鶏など…栄養たっぷりの骨が山と置いてある…。
環境美化などあまり考えられていない時代のこと…肉屋さんの廃棄物など誰も問題にしないから…処理をするまでの間…まるのまま見えるところに出してあっても文句は出ない。
犬たちにとっては恰好の餌場…。 よく骨に集っている姿を見かけた…。
日本犬ではなさそうな大きなボスを筆頭に…同じような種類でその細君らしい雌と何匹かの仲間が居る…。
何れも身体の大きい犬ばかりだ…。
鶏の雛を飼い始めたのはそんな時代のことだった。
自分たち兄弟はそれぞれ自分のヒヨコを持っていた。
黄色い頭にそれぞれ赤・青・緑の印を付けて…どれが自分のヒヨコか分かるようにしていた。
ヒヨコにも学習能力はあるらしく…可愛がってくれる人には懐くが…苛める人には近付かない…。
上の弟はヒヨコを洗濯機に浮かべて泳がせる実験をしたり…何某か悪戯をしたので3羽全部に警戒されていた。
相手が誰かを見分ける…或いは何らかの手段によって判別する能力もあるようだ。
部屋の中で3羽を放すと…家族の膝に乗ったり降りたりして楽しげに遊ぶのに…近付いて相手が上の弟と分かった途端…慌ててUターンするが常だった…。
何度やっても同じで…相当…嫌われていたように思われる…。
自分はこの時期…15羽ほど鶏を育てた…が…成鳥になったのはたった4羽だった。
しかも…最後に生き残った2羽と死因の分かっている5羽を除いては…その死因は不明のままだ…。
最初の3羽は…自分が学校へ行っている間に遊びに来た幼い従妹が圧死させてしまった。
従妹はまだ赤ちゃんだったから…ヒヨコを可愛がっているつもりだったんだろう…。
原因が分からないのはその後の8羽…。
毎回…ヒヨコは雛のうちには家の中で飼育し…羽毛が白くなると…親父の作ってくれた鳥小屋に移していた…。
木製の丈夫な小屋で金網を張ってあった…。
普通に飼育を続け…前の晩までは元気なのに…或る朝…突然…死んでいる…。
自分は小学生の低学年だったから細かいところまでは覚えていないが…母親に聞いた話では…金網を何かが弄ったような後があった…ということだった。
だいたい毎回3羽ずつくらい育てていたから…その後も2度ほど同じような死に方をしたことになる…。
最後に飼った4羽は友だちの斡旋で貰った外国産の大きな鶏だった。
今度は…少し大きめになってから小屋に移した…。
この鶏は…それまでとは異なって気性が激しく…気をつけないと世話をしている飼い主が突かれるほど…。
ことに雄の鶏は大きくて獰猛だ…。
これまでのことがあるから育つかどうか心配していたが…立派な鶏冠を誇る成鳥に育ってくれた…。
やれやれ…やっと育ったと安心していたら…この凶暴な雄との別れはすぐにやってきた…。
夜のうちに野犬に襲われたのである…。
今度は金網を引っぺがし…雄と雌を一羽ずつさらって行った…。
そのあたりを探してみたところ…片方の足だけが残されてあった…。
あの雄のものか…ひとまわり小さい雌のものかは分からなかったけれど…。
不思議と…怒りも悲しみも湧いてこなかった…。
殺されて食われた鶏を思えば可哀想だとは思うが…それよりも…丈夫な金網を破り…小屋を破壊して餌を手に入れた野犬のことを考えた…。
彼等は生きなければならなかった…。
だから…獲物を捕らえて食っただけのことだ…。
金網を破るために…彼等も何処かしら痛い目には遭っているはずだし…民家に隣接した小屋を襲うのは彼らにとっては危険な行為でさえある…。
それでも獲物を襲い…貪欲に生き延びる…。
おそらく彼等はこれまでにも何度か小屋を狙ったに違いない…。
しかし…丈夫な小屋は簡単には壊れず…金網を変形したに過ぎなかった。
彼等は何度目かの挑戦でやっと目的を達成したと言うわけだ…。
ひょっとしたら死んだ鶏たちは…その時の恐怖がもとでショック死したのかもしれない…。
何としても生き延びる…。
まだ…小学生だった自分に彼等が伝えてくれた大事なメッセージだった…。
生き残った2羽は…安全のために近所の鶏をたくさん飼っているおばさんに引き取って貰った…。
其処では番犬も何匹か居て野犬に襲われるようなことはない…。
後々聞いたところでは…お蔭さまで無事に卵も産むようになったということである…。